食事中にむせるのはなぜ?理学療法士が原因と改善ポイントを解説【CASE22】

医療者向け
タケシさん
タケシさん

ご飯を食べる時に、むせてしまうんだよね

なんでかな?

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

嚥下を行う筋肉が、弱ってしまったんですかね?

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

それもあるかもしれないね

でも本当にそれだけか、確認してみよう!

「食事中にむせてしまい、思うように食べられない…」

そんな状況が続くと、食事の楽しみが失われ、生活の満足度にも大きく影響します

特に車椅子で生活されている方では、姿勢や呼吸、飲み込みの機能にさまざまな要因が絡んでいることがあります

本記事では、食事中にむせが出るケースに対して、理学療法士としてどのように評価・対応するかを解説します。

タケシさんの既往歴と主訴

・左脳出血 右麻痺(Brunnstrome stage上肢Ⅴ 手指Ⅵ 下肢Ⅴ)
・車椅子で食事中に水、食べ物どちらもむせることがある

🔍理学療法評価

座位姿勢を確認する

👉
・頭部前方偏位、上位頚椎伸展・下位頚椎屈曲
・胸椎、腰椎後弯
・骨盤後傾
このような特徴が見られた。

嚥下を確認する

タケシさんはHDSR(改訂長谷川式簡易知能評価スケール26/30)認知機能の問題は低いと推察した。
減点項目 野菜が6つしかでないため。減点-4

嚥下は先行期・準備期・口腔期・咽頭期・食道期とあるが、咀嚼、咽頭への食塊の送り込みも実施できている。
咽頭期の嚥下反射に問題がないか評価していく。

🧠テストでむせの原因を仮説立てする

端座位で顎を引く動作、反復唾液飲みテスト(repetitive saliva swallowing test:RSST)を実施。


👉
・顎を引くことができるか
・頭部を屈曲できるか
上記のポイントを確認する
タケシさんは問題なく頭部を屈曲することができている。

反復唾液飲みテスト(repetitive saliva swallowing test:RSST)

まず,口腔内を水または氷水で少し湿らした後,空嚥下を指示して嚥下運動が可能かどうかを観察する。次に空嚥下を反復するように指示し,30秒間に何回の嚥下運動ができるかを数える。30秒間に2回以下を異常と判定する。
日本耳鼻咽頭科学会編.嚥下障害ガイドライン.金原出版株式会社,2018,p16.

タケシさんは反復唾液飲みテストは30秒間に4回実施可能。


しかし実際の車椅子座位になると、猫背が強まり、更に胸腰椎後弯、骨盤後傾、頭部前方偏位し顎が突き出るような姿勢となる。

車椅子座位で同様にテストを行っていく。
👉
・顎を引いてもらおうとすると、顎を引きづらくなったとのこと。
・唾も飲み込みにくくなったとのこと。
上記の変化があり誤嚥の危険性があるため、反復唾液飲みテストは1回で終了とした。

🧩車椅子座位を確認し、姿勢からむせを考える

車椅子に座ると姿勢が悪化し、頭部の屈曲が困難となり顎を引きづらくなっている。
その為嚥下が困難になっていると考えられた。

頚部が伸展していると咽頭腔が広くなり,嚥下圧が低下するため誤嚥しやすくなります.
野原幹司.認知症患者さんの病態別食支援-安全に最期まで食べるための道標-.株式会社メディカ出版,2018,93

加齢や運動障害に伴い,骨盤が後傾し,それが脊柱後弯に繋がり,座位バランスをとるため頭頚部が後屈位や突き出し位となっているクライアントをよく見かける.このアライメントでは前頚部が引き伸ばされるため舌骨上下筋群の運動性が阻害され嚥下時の舌骨・喉頭挙上は妨げられる.
真鍋清則.姿勢・運動制御と運動学習理論に基づく機能的活動.有限会社市村出版,2022,224

上記の知見から頭部が伸展・前方偏位方向に誘導され、嚥下が困難になっていると考えられる。
頭部が伸展・前方偏位する理由として、胸腰椎後弯、骨盤後傾が理由として挙げられる。

タケシさんの場合、車椅子のフットレストの位置が高く、股関節よりも膝の位置が高くなっている。

結果、骨盤後傾、胸腰椎後弯が生じ、頭部が伸展・前方偏位したと考えられる。

更にその姿勢で食事をしようとすると、姿勢をより前方に偏位させることになるため、
問題となっている肢位が強まると考えられる。

そのためフットレストの位置を下げることで、姿勢の修正を図ろうと試みることとする。
しかしタケシさんの車椅子はフットレストの位置が変更出来ないタイプであった。

そのためフットレストを折りたたみ、床面に足底を接地して姿勢を確認していく。
結果膝関節の位置が下がったことにより、骨盤後傾、胸腰椎後弯が緩和した。

修正した姿勢で再度、
👉
・顎を引く動作
・反復唾液飲みテスト
を実施。

その結果頭部屈曲を行いやすくなり、唾を飲みやすくなったとのこと。
そこで提案した姿勢で食事をとってもらうこととする。

タケシさんは足が床に届いたが、届かない場合は台などを使うのも選択肢になると考えられる。

1週間後に訪問し、食事の際のむせが減少したと報告を受けることができる。

まとめ

車椅子で食事中にむせが生じるケースへの評価と対応を解説しました。
タケシさんは、フットレストの位置が高く膝が股関節より上になることで、骨盤後傾・胸腰椎後弯が強まっていました。
その結果、頭部が前方偏位して顎が突き出た姿勢となり、嚥下圧の低下と舌骨・喉頭挙上の制限が生じていました。
端座位でのテストでは嚥下機能に大きな問題はなく、姿勢が嚥下を妨げていたことが明らかになりました。
フットレストを折りたたみ床面に足底を接地させることで姿勢が改善し、むせの減少が確認されました。
「むせ=嚥下機能の問題」と決めつけず、座位姿勢・骨盤・頭頸部のアライメントを丁寧に評価することが重要です。

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最後に(免責)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。

目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。

患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。

本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。

あらかじめご了承ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上、理学療法士 ユウセイでした。

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