「寝るのが億劫だった殿部痛が、大殿筋のケアで変わった話【CASE29】」

学生・若手
タケシさん
タケシさん

いたっ!

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

どうしました?大丈夫ですか?

タケシさん
タケシさん

膝を伸ばそうとするとお尻が痛くて、、

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

お尻の筋肉がこわばっているんでかね?

ストレッチやマッサージがいいのでしょうか?

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

ストレッチやマッサージをしても、根本が解決してないとまた痛むよ

一緒に確認してみよう

「仰向けに寝た後、膝を伸ばすとお尻が痛い…」


そんな悩みを抱える方に出会ったことはありませんか?


一時的に治まるからと放置してしまうと、股関節まわりの過緊張が続き、やがて腰痛や肩の不調へつながることもあります


本記事では、臨床でよく見られるこの訴えの背景と、理学療法士としての対応ポイントを解説します。
本記事の症例は、個人が特定されないよう一部を改変しています。

タケシさんの既往歴と主訴

・左視床出血
・Brs上肢Ⅴ 下肢Ⅳ 手指Ⅴ
・仰向けで右膝を伸ばそうとすると、右のお尻が痛い。
・座ったり、立ったり、歩いたりする時は痛みがない。

🔍理学療法評価

疼痛を確認する

坐骨結節周辺に疼痛があり、Palma signで表現。
疼痛はNumerical Rating Scale(以下NRS)5

疼痛が出現するタイミングは
👉️
・端座位から仰臥位となり、右膝を伸展していく時
・右膝関節-15°付近でNRS5で疼痛がピーク
・ピークの疼痛に耐えて伸展し、最終可動域まで可動させると疼痛が治まる。NRS5→0
・他動運動で膝を伸展しても疼痛が生じない

姿勢を確認する

座位姿勢
👉
・頭部前方偏位、上位頚椎伸展・下位頚椎屈曲
・胸椎、腰椎後弯
・骨盤後傾位

触診

ハムストリングス(半腱様筋、半膜様筋)、大殿筋下部線維に圧痛があり。

可動域を確認する Range of motion test

運動方向
股関節屈曲90100
伸展-5-5
外転1525
内転1515
外旋3040
内旋50
膝関節屈曲135140
伸展-100
足関節背屈510

筋緊張を確認する Modified Ashworth Scale

方向
股関節屈伸21
膝関節屈伸20
足関節底背屈10

筋力を確認する Manual Muscle Testing

運動方向
股関節屈曲34
伸展34
外転34
膝関節屈曲3※¹3※¹
伸展3※²4
足関節背屈24
底屈34

※¹腹臥位が困難であるため歩行器を用いて立位で実施。
※²座位の検査で膝を伸ばしても疼痛の訴えなし。

筋力検査時の膝関節伸展時の特徴

・座位で膝関節伸展を検査した際に、疼痛が生じない。
・膝関節が-35°までしか伸展できず、大腿裏に伸張感あり。
・膝を伸展した際に胸腰椎の後弯、骨盤後傾が強まる。

外旋筋の機能を確認する

・股関節を90度とし踵同士を接地した状態で、開排動作実施。

股関節屈曲位では外旋筋力寄与できる筋が大殿筋下部線維,内閉鎖筋,外閉鎖筋,大腿方形筋に限られてしまう。

建内宏重.股関節〜協調と分散から捉える.ヒューマン・プレス.2020,55.

上記の知見から、股関節外旋筋を選択的に評価する。
👉️
・数センチしか開排する事ができない。

🧩考察

今回は仰臥位で右膝を伸展していく際に、右坐骨結節部に疼痛が生じている。
評価から以下に問題点を挙げる。

中殿筋・大殿筋の機能低下

👉
・股関節伸展筋、外転筋筋力低下
・大臀筋下部線維に圧痛
・右股関節90°屈曲位での開排動作困難
・日常的に座位姿勢をとることが多く、猫背
上記の評価から中殿筋・大殿筋の機能を発揮しにくい状況であると推察。

殿筋群(大殿筋,中殿筋,小殿筋)の出力を50%に低下させたモデル(殿筋低下モデル)では,〜中略〜,殿筋低下モデルでは大殿筋の出力低下に代わってハムストリングス(特に半膜様筋)の出力が増大する。

建内宏重.股関節〜協調と分散から捉える.ヒューマン・プレス.2020,68.

上記の知見から
👉
✔️右殿筋群の機能が低下した状態ではハムストリングスの緊張、負担が増加すると考えられる。

ハムストリングスの緊張亢進

👉️
・右膝関節の伸展制限
・MMTの際の姿勢の崩れ、大腿裏の伸張感
・MASでの右下肢の筋緊張亢進
・日常的に猫背姿勢
・ハムストリングス(半腱様筋、半膜様筋)に圧痛
上記の評価から右ハムストリングスの柔軟性が低下していると推察する。
加えて仰臥位で右膝を伸展する際にはハムストリングスの遠心性収縮が必要であり、負荷量の高い収縮形態である。

考察まとめ

✔️中殿筋、大殿筋の機能が低下している
→ハムストリングスの負担が増加する
✔️すでにハムストリングスの柔軟性低下、筋緊張亢進している
→そこに遠心性収縮が重なり負担が増加し、起始の坐骨結節に疼痛が生じたと推察する。また膝関節最終可動域である-10°に至ると運動が完了し、ハムストリングスに要求される遠心性収縮が不要となるため、疼痛が緩和すると考えられる。なお他動運動では疼痛が生じないことからも、疼痛の主因は組織の受動的な伸張そのものではなく、能動的な収縮活動にあると考えられる。

💡ケアアプローチ

ハムストリングスの筋緊張を緩和する

ケアとして右ハムストリングスの筋緊張を緩和していく。

ハムストリングスが緊張していると
👉️
・股関節周囲の緊張に偏りが生じる
・大殿筋が適切に働かなくなる可能性がある

ケアの手順
①左側臥位で膝を最終域まで伸展し、エンドフィールを感じたところで止める。

②その位置から右踵をセラピスト側に軽く引っ張る。

③この引く動作に対して引っ張られないように止まってもらう。
✔この時にハムストリングスの等尺性収縮を促す。

④その後軽く深呼吸をしてもらい、少し伸展方向に伸張し右膝屈曲位に戻す。

⑤2、3度繰り返しハムストリングス(半腱様筋・半膜様筋)の圧痛・緊張が緩和しているか確認する。

殿筋を鍛える

圧痛が無くなったら、先ほど評価で行った開排動作を実施していく。

①セラピストが下肢を他動で開排させる。

②開排させた肢位で手を離し、下肢が落ちないように肢位を維持してもらう。

③抵抗はかけず、重力に抗するように実施。
※タケシさんは重力に抗するだけでも精一杯であったためこの方法を採用。

股関節屈曲角度を高めた状態で開排し、大殿筋下部に収縮が入っているかを確認。
※状況に応じて屈曲角度を伸展方向に誘導することで働きかける殿筋の部位を変える。

④タケシさんの場合は3秒✖️3回実施(無理のない範囲で実施)

その後仰臥位で膝を伸ばす際に疼痛が緩和。(NRS5→1)

自主訓練

タケシさんは車椅子で日中過ごす事が多い為、ハムストリングスのストレッチを提案。


また就寝中に大腿部にクッションを挟み、ハムストリングスの緊張を緩和できるように配慮。

まとめ

仰臥位で膝を伸展すると坐骨結節周辺に殿部痛が生じるケースへの評価とアプローチを解説しました。

  1. 中殿筋・大殿筋の機能低下により、代償としてハムストリングス(特に半膜様筋)への負担が増大していると考えられました。
  2. すでに柔軟性低下・筋緊張亢進していたハムストリングスに膝伸展時の遠心性収縮が加わり、起始部の坐骨結節に疼痛が生じていました。
  3. アプローチとして側臥位でハムストリングスの等尺性収縮とリラクゼーションを繰り返し、筋緊張の緩和を図りました。
  4. その後、股関節開排位での保持運動により大殿筋下部の収縮を促し、疼痛はNRS5から1まで軽減しました。
  5. 殿部痛の背景には殿筋機能低下によるハムストリングスへの代償負担が潜んでいることがあり、自主訓練としてストレッチやクッションでの就寝時配慮も有効です。

最後に(免責)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。

目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。

患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。

本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。

あらかじめご了承ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上、理学療法士 ユウセイでした。

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