
いたっ!

どうしました?大丈夫ですか?

膝を伸ばそうとするとお尻が痛くて、、

お尻の筋肉がこわばっているんでかね?
ストレッチやマッサージがいいのでしょうか?

ストレッチやマッサージをしても、根本が解決してないとまた痛むよ
一緒に確認してみよう
「仰向けに寝た後、膝を伸ばすとお尻が痛い…」
そんな悩みを抱える方に出会ったことはありませんか?
一時的に治まるからと放置してしまうと、股関節まわりの過緊張が続き、やがて腰痛や肩の不調へつながることもあります。
本記事では、臨床でよく見られるこの訴えの背景と、理学療法士としての対応ポイントを解説します。
お尻のどこに痛みが出ているかをチェックする
足を伸ばしたときに痛みが出る原因を探る
股関節の動きと筋肉の状態を評価する
痛みの改善を目指したリハビリアプローチを行う
お尻のどこに痛みが出ているかをチェックする
タケシさんの既往歴
脳梗塞の既往あり右麻痺
ブルンストロームステージ 上肢Ⅴ 下肢Ⅳ 手指V
坐骨結節周辺に疼痛があり、Palma signで表現をされます。

疼痛が出現するタイミングは端座位から仰臥位となり、右膝を伸展しようとした瞬間なります。
疼痛に耐えて伸展し続けると、疼痛が治まります。

ハムストリングスと、大殿筋下部線維に圧痛があります。
坐骨結節周辺に疼痛あり
ハムストリングスと大殿筋下部線維に圧痛あり
仰臥位になり、膝を伸展した際に疼痛が生じる
足を伸ばしたときに痛みが出る原因を探る
疼痛部位が坐骨結節で圧痛がある事から、ハムストリングスの評価を行いました。
仰臥位となり膝伸展を試みた直後は、-15度の伸展制限が生じていました。

その後疼痛が落ち着くと、-10度まで可動域が改善します。

また圧痛のある大殿筋下部線維の働きを確認する事としました。
股関節を90度とし踵同士を接地した状態で、開排するように提案しました。
建内らは股関節屈曲位では外旋筋力寄与できる筋が大殿筋下部線維,内閉鎖筋,外閉鎖筋,大腿方形筋に限られてしまう。と述べています。
建内宏重.股関節〜強調と分散から捉える.ヒューマン・プレス.2020,55.
上記の知見から、圧痛のあった大殿筋下部線維の機能を、深掘りして評価できると判断しました。
結果数センチしか開排する事ができませんでした。

大殿筋下部線維の筋力が低下
仰臥位直後、膝を伸展すると-15°制限
股関節の動きと筋肉の状態を評価する
ハムストリングスの柔軟性が低下しており、緊張が亢進しています。
更に大殿筋下部線維の活動が低下しています。
建内らは殿筋群(大殿筋,中殿筋,小殿筋)の出力を50%に低下させたモデル(殿筋低下モデル)では,〜中略〜,殿筋低下モデルでは大殿筋の出力低下に代わってハムストリングス(特に半膜様筋)の出力が増大する。と述べています。
建内宏重.股関節〜強調と分散から捉える.ヒューマン・プレス.2020,68.
上記の知見から大殿筋下部線維の筋力が低下した事で、ハムストリングスの緊張・負担が増加します。
更に膝を伸展する際に、ハムストリングスは遠心性収縮を求められます。

以上の要素からハムストリングスの負担が増強し、起始の坐骨結節に疼痛が生じたと考えます。
大殿筋の筋力低下により、ハムストリングスの負担が増加している
痛みの改善を目指したリハビリアプローチを行う
まずハムストリングスの筋緊張を緩和します。
ハムストリングスが緊張していると股関節周囲の緊張に偏りが生じ、大殿筋が適切に働かなくなる可能性があります。
左側臥位で膝を伸展し、エンドフィールを感じた所から右踵をセラピスト側に軽く引っ張ります。


これに対し止まってもらうようにお願いします。
この際にハムストリングスの等尺性収縮が生じます。

その後軽く深呼吸をしてもらい、ほんの少しだけ伸展方向に伸ばし右膝屈曲位に戻します。
2、3度繰り返しハムストリングスの圧痛が無くなったかを確認します。
圧痛が無くなったら、先ほど評価で行った開排動作を実施します。
この時にセラピストが下肢開排し、その状態で落ちないように止まってもらいます。

抵抗は最初はかけません。
タケシさんは重力に抗するだけでも精一杯でしたので、抵抗をかけずに行います。
大殿筋下部に収縮が入っているかを確認し、3秒✖️3回行います。
回数は無理しない程度で行ってください。
その後端座位になり再度仰臥位になったところ、疼痛なく膝を伸ばす事が出来ました。
自主訓練
タケシさんは車椅子で日中過ごす事が多い為、ハムストリングスのストレッチを行ってもらうようにお願いしました。

また寝ている際に大腿部にクッションを挟み、ハムストリングスの緊張が亢進しにくいように配慮しました。

まとめ

今回は寝た後に膝を伸ばすと、殿部痛が生じる方への対応を解説しました。
治療の手順は以下の通りとなります。
お尻のどこに痛みが出ているかをチェックする
足を伸ばしたときに痛みが出る原因を探る
股関節の動きと筋肉の状態を評価する
痛みの改善を目指したリハビリアプローチを行う
寝たら疼痛が生じると思うと寝るのが億劫になります。
また疼痛は筋緊張の亢進を招きます。
結果別の部位に疼痛が生じる原因を作りかねません。
疼痛を改善・予防できるように注意していきたいですね。
おすすめ書籍
今回の疼痛を改善するにあたり、非常に参考になった書籍をご紹介します。
股関節の角度によってどの筋肉が働く、働かなくなると明確に説明があり、日々の臨床に活かしやすい内容が多いと感じます。
自分がなぜこの治療を選択するのか、言葉で説明できるようになる為に、是非一読して頂ければ幸いです。
足を伸ばすとお尻に痛みを感じる場合、股関節や体幹の柔軟性、姿勢の影響が関係していることがあります。
似たような悩みを抱えている方は、以下の記事も参考にしてみてください!
✅ 寝てるとき足が重いのはなぜ?理学療法士が原因と動きやすくする方法を紹介【CASE11】
✅ 歩くと股関節が痛いのはなぜ?チェックすべきポイントを解説【CASE24】
✅ 前かがみ姿勢で腰痛が出る?お皿洗い時に注目すべきポイント【CASE19】
最後に
この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに、紹介した評価・治療が適応できるか、判断して頂いたうえで、使用して頂ければ幸いです。
患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。
そのため、今回ご紹介した治療は、万人に対して、再現性を担保できるものではありません。
それらを踏まえた上で、参考にして頂ければ幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
以上、ユウセイでした。

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