肩から指まで広がる痛みが、肩甲帯アライメントの評価で変わった話【CASE15】

学生・若手
ハナさん
ハナさん

原因は分からないけど、肩から指にかけて痛みがあるのよね
エアコンの風でも、皮膚がピリピリする

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

それは気分が良くないですね

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

原因の分からない痛み程、気分が悪いものはないね
一緒に考えていこう!

肩から指にかけての違和感や痛みは、日常生活の多くの場面でストレスにつながります。
さらに、原因がはっきりしないと不安も大きくなりますよね。

上肢の症状には、医学的な評価や治療が必要なケースもあり、理学療法だけでは対応が難しい場合も存在します。
その一方で、姿勢・筋の緊張・肩甲帯の使い方などを見直すことで、症状の緩和につながるケースもあります。

この記事では、「理学療法士としてどのような視点で評価し、どんな考え方で対応を組み立てるか」
という観点からまとめています。

ハナさんの既往歴と主訴

・右大腿骨転子部骨折(骨接合術施行)
・高血圧
・30分ほど座っていると右肩〜手指にかけて痛

🔍理学療法評価

症状と動作を確認

疼痛部位として、右肩〜手指にかけて広範囲に疼痛が生じている。

疼痛は痛みの評価としてはVisual Analogue Scale (以下VAS)70mm。
👉
・局所ではなく手のひら全体で示すいわゆる Palma sign(広範囲痛の表現)
・「風でも当たるとピリピリする」など感覚過敏の訴えもあり

姿勢バランスを見直す|肩や腕に負担がかかりやすい姿勢とは

姿勢を評価する

姿勢を確認すると👇

  • 頭部伸展
  • 頸部屈曲
  • 胸椎・腰椎の後弯
  • 骨盤後傾
  • 重心は右後方へ偏位

同一姿勢で座り直しをすることも少ないとのこと。

肩甲帯アライメントを確認する

右鎖骨は屈曲・下制し、右肩甲骨は 外転・下方回旋 へ偏っていました。

整形外科テスト

エデンテスト(胸郭出口付近の変化を観察するもの) を実施。
👉
①下顎をできるだけ引き姿勢を整える
②患側上肢を後下方へ誘導
③橈骨動脈の拍動が弱まるor症状が強まるか

ハナさんは、橈骨動脈の拍動が弱まり、症状が強まる変化が確認されました。

症状が緩和する肢位

他動で右上肢を「外旋・挙上」する方向に誘導すると、症状がその場で軽くなるとのこと。

🧩考察

疼痛の出方と部位から鎖骨下動脈・腕神経叢の関与した可能性が挙げられた。

アライメントと症状を紐づける

👉
・右鎖骨は屈曲・下制
・右肩甲骨は 外転・下方回旋
・エデンテスト陽性
これにより、
✔️鎖骨下動脈、腕神経叢が肋骨、鎖骨に挟まれ絞扼された可能性がある。

上肢を挙上したことによる変化

他動で右上肢を「外旋・挙上」する方向に誘導すると、症状がその場で軽くなる反応がありました。

これは、
鎖骨👇️
・挙上
・後方回旋


肩甲骨👇️
・上方回旋
・内転
・後傾

といった方向に動き、鎖骨下動脈、腕神経叢の絞扼が緩和した為と考えました。

💡ケアアプローチ

僧帽筋中部・下部線維を働かせる

症状緩和のため肩甲骨上方回旋・内転・後傾に誘導していく。
そこで僧帽筋中部線維、下部線維を働かせていく。

①負担がない範囲で肩を他動で挙上していく
②もう片方の手で肩甲骨上方回旋・内転・後傾に誘導する
③肩甲骨は支えつつ、肩を支えていた手を少しずつ離していく。
④離した時に上肢が落下しないようにその位置を保持してもらう

👉
・挙上角度90°では僧帽筋中部線維
・挙上角度120°で僧帽筋下部線維
挙上角度によって働きかける筋が変化する。

アライメントによる筋の弱化

ハナさんは、猫背姿勢をとることが多い
👉
・肩甲骨前傾・外転
・肩内旋
・肩甲骨下方回旋
上記のアライメントになりやすく、僧帽筋中部・下部線維が相反抑制により弱化しやすい可能性が挙げられる。

本症例ではこの調整を行うことで、上肢を下垂した際の痛みは VAS70mm → 10mm〜20mm にまで緩和。

セルフケアの提案

手すりを使った姿勢調整スクワット

自宅にあった支柱型手すりを利用し、胸を張って上半身を安定させたままのスクワットを提案。
この方法なら、
👉
・無理に腕を挙上する必要がない
・下肢筋も鍛えられる
・肩甲骨の上方回旋・内転・後傾促す

代償動作を減らしながら肩甲骨を動かすコツ

  • 手すりをもつ高さは痛みが出ない高さで
  • 胸を張り猫背になりすぎない
  • ゆっくり動き、痛みの変化を観察する

ハナさんに継続してもらったところ、
「普段の生活でも気にならない程度まで痛みが改善した」との発言あり

まとめ

①座位30分ほどで右肩〜手指にかけて広範囲に痛みが生じるケースへの評価とアプローチを解説しました。

②右鎖骨の屈曲・下制と右肩甲骨の外転・下方回旋、エデンテスト陽性から、鎖骨下動脈・腕神経叢が絞扼されている可能性が考えられました。

③他動で右上肢を外旋・挙上方向に誘導すると症状が軽減したことから、肩周囲のスペース確保が絞扼緩和につながると推察しました。

④アプローチとして肩甲骨を上方回旋・内転・後傾方向に誘導しながら、挙上角度に応じて僧帽筋中部・下部線維を段階的に促通しました。

⑤ケア後は上肢下垂時の痛みがVAS70mmから10mm〜20mmまで改善し、手すりを使った姿勢調整スクワットをセルフケアとして提案しました。

上肢の広範囲な痛みの背景には姿勢アライメントの崩れによる神経・血管の絞扼が関与していることがあり、肩甲帯のアライメントを丁寧に評価することが重要です。

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最後に(免責)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。

目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。

患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。

本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。

あらかじめご了承ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上、理学療法士 ユウセイでした。

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