起きると腰が痛いのはなぜ?理学療法士が原因と改善方法を解説【CASE2】

医療者向け
ハナ
ハナ

起き上がる時、腰が痛いです

どうしたらいいでしょうか

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

腰をほぐしたらいいですかね、、

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

それも一つの方法だけど、何で腰痛が起きてるのか評価してみよう!

  1. 起き上がりがつらくなる理由とは?まず痛みの範囲と状況を確認する
    1. 痛みが出ている部位・方向を把握する
    2. 使用環境を確認する|電動ベッド・介助バーの有無
    3. ハナさんの動作を確認する
    4. 寝返り〜起き上がりの動作を観察する(寝返り・on elbow・on hand)
      1. ■右寝返り〜on elbow
      2. ■on elbow〜on hand
  2. 寝返り動作にヒントあり|腰痛の原因を見極める
    1. 寝返りの段階で腰部に負担が集中している場合がある
    2. 足底で蹴って寝返ることで負担が増える可能性
    3. 頭頸部が伸展位のままだと腹圧が入りにくい理由
    4. 腹圧低下が腰部筋の過活動につながる仕組み
  3. 電動ベッドを活用した負担軽減の工夫と注意点
    1. 背上げ機能を使うメリット(難易度を下げられる)
    2. 背上げ時に身体が捻れやすい点への注意とクッションの活用
    3. 身体が下にずれていると腰痛が悪化しやすい理由
    4. ベッドの関節位置を確認する重要性
  4. 起き上がるときの腰痛を和らげるポイント
    1. 背上げした状態で頭頸部屈曲を促す方法
    2. 左手でベッドを押すことで腹圧を高める工夫
    3. 角度を段階的に下げながら練習する流れ
    4. 寝返り方法を修正して腰部負担を軽減する
  5. まとめ|頭頸部の動きと腹圧が起き上がりのカギ
    1. 今回のケアの手順まとめ(原因 → 調整 → 練習)
    2. 電動ベッドを使う際の注意点と実践ポイント
    3. 寝返りから見直すことで起き上がりが変わる場合がある
    4. 不安があれば医療機関へ相談を
    5. 🔗 関連記事はこちらもおすすめです
    6. 最後に(免責)

起き上がりがつらくなる理由とは?まず痛みの範囲と状況を確認する

起き上がりは生活を始めるうえで欠かせない基本的な動作です。
この動作が困難になると、生活の場がベッドに限られてしまい、
活動量や自立度が大きく低下してしまうことがあります。

一方で、起き上がりがスムーズにできるようになると、
日常生活の質(QOL)が向上する場合もあります。

今回は「起き上がるのがつらい…」と感じている方に向けて、
原因の見極めとケアのポイントを理学療法士の視点から解説します。

痛みが出ている部位・方向を把握する

まずは「どこがどのように痛いか」を確認します。

ハナさんの場合(ケース)

  • 腰椎圧迫骨折の既往あり
  • 右側から起き上がると右腰部に疼痛(VAS4〜7)
  • 寝返りの段階から痛みが出ている

使用環境を確認する|電動ベッド・介助バーの有無

ハナさんの生活環境

  • 電動ベッド使用
  • 介助バーあり
  • 自宅の構造上、右側からの起き上がりのみ可能

環境によって動作が制限されていることも、
痛みの要因につながることがあります。

ハナさんの動作を確認する

・電動ベッドを使用

・ベッドの介助バー取り付け済み

・起き上がりは自宅の環境上、右側からしか起き上がることが出来ない

寝返り〜起き上がりの動作を観察する(寝返り・on elbow・on hand)

■右寝返り〜on elbow

  • 両上肢で柵を強く引きつける
  • 頭頸部は伸展位のまま
  • 左足底でベッドを蹴りながら右側へ寝返る
    → この段階で右腰部にVAS4の疼痛

■on elbow〜on hand

  • 両手で柵を引きつける
  • 頭頸部は十分に屈曲できていない
  • on handになり身体を起こしていくと
    → VAS7の強い疼痛が出現

座位に移行しても痛みが継続していました。

寝返り動作にヒントあり|腰痛の原因を見極める

起き上がりは「寝返り → 立ち上がり」の連続動作です。
そのため、寝返りの段階で負担が大きいかどうかを確認することが重要です。

寝返りの段階で腰部に負担が集中している場合がある

ハナさんは寝返り時点で腰痛が生じていました。

寝返りに負担がある場合、この段階で筋活動を補おうとして腰部の筋肉が過剰に働き、
起き上がりで痛みが増強しやすくなります。

足底で蹴って寝返ることで負担が増える可能性

寝返りの際、左足底でベッドを強く蹴っていました。
腹圧が十分に入らない状態でこの動作を行うと、
腰部に過度な負担が集中する場合があります。

頭頸部が伸展位のままだと腹圧が入りにくい理由

頭頸部が伸展位のままだと、腹部に力が入りにくくなり、
体幹で動作をコントロールしづらくなることがあります。

腹圧が低下すると、腰部の筋肉が代償して過剰に働きやすくなり、
結果として腰痛につながることがあります。

腹圧低下が腰部筋の過活動につながる仕組み

  • 頭頸部伸展 → 腹圧低下
  • 足底で強い蹴り → 体幹の安定性低下
  • 腰部筋が過剰に働く → 痛みが生じる

この流れは多くの腰痛パターンでも共通してみられます。

電動ベッドを活用した負担軽減の工夫と注意点

起き上がりに痛みが出る方にとって、
フラットな状態から起きるのは難易度が高い場合があります。

電動ベッドを活用すると、負担を軽減できる場合があります。

背上げ機能を使うメリット(難易度を下げられる)

  • 任意の角度まで上体を起こせる
  • 腹圧を保ちやすい
  • 頭頸部の屈曲が促されやすい

背上げを利用することで、
起き上がりの難易度自体を下げられる場合があります。

背上げ時に身体が捻れやすい点への注意とクッションの活用

実際にハナさんに電動ベッドを使用して、起き上がりを行っていきます。

まず右側臥位になり足を下垂させます。

そこから背上げを行っていくわけですが、

背上げ中は後方に倒れやすく、
その反応で身体が捻じれたり、恐怖心から過緊張を起こすことがあります。

→ 背中にクッションや丸めた布団を挟むと捻れを防げることがあります。

身体が下にずれていると腰痛が悪化しやすい理由

一番注意したいのは起き上がり開始時に、

身体が下(足元側に)にずれている事です。

電動ベッドには曲がる“関節”があり、
身体が下にずれたまま背上げすると、

  • 腹部や肋骨が圧縮
  • 左側屈が強制
  • 腰痛が誘発されやすい

という問題が起こる場合があります。

ベッドの関節位置を確認する重要性

背上げ前に

・身体がずれていないか

・可動部がどこにあるか
 を確認することで、腰痛の悪化を防ぎやすくなります。

起き上がるときの腰痛を和らげるポイント

問題点として

・頭頸部の屈曲が出にくいことで腹圧が低下し、腰痛が生じている可能性がある

・普段から腰部の筋肉に負担が集中している可能性がある

上記の問題点を踏まえて、

腹圧を高めつつ、頭頸部の屈曲を促していくケアを提案していきます。

評価で見えた問題点を踏まえ、以下のケアを行いました。

背上げした状態で頭頸部屈曲を促す方法

枕から頭を離し、顎を軽く引く
→ 頭頸部の屈曲が促され、腹圧も入りやすくなります。

平らな状態よりも難易度が低く、実践しやすい方法です。

左手でベッドを押すことで腹圧を高める工夫

左手でベッドを下方向へ軽く押すと、腹圧が入りやすくなり、
腰部への負担が軽減する場合があります。

角度を段階的に下げながら練習する流れ

背上げした状態 → 頭頸部屈曲・腹圧が入る
→ 慣れてきたら角度を少しずつ浅くする
→ 最終的にフラットに近い角度でも起き上がりが可能になる

このように、段階的に難易度を調整することで成功体験を積みやすくなります。

寝返り方法を修正して腰部負担を軽減する

足底で蹴る寝返りをやめ、
体幹で動作をコントロールできるように練習しました。

蹴らない寝返りは腹圧が入りやすくなり、
腰部の負担も軽減しやすくなります。

ハナさんは、

・頭頸部の屈曲を促す

・腹圧を高めていくこと

上記の2点をケアしていくことで腰痛が落ち着いていきました。

段階的にベッドを下げ難易度を調整したこと、

寝返り・起き上がりを修正したことも要因として挙げられます。

まとめ|頭頸部の動きと腹圧が起き上がりのカギ

起き上がりで腰痛が出る方では、

  • 頭頸部の屈曲不足
  • 腹圧の低下
  • 寝返りの問題
  • 電動ベッドの使い方
    など、複数の要因が関わっている場合があります。

今回のケアの手順まとめ(原因 → 調整 → 練習)

  • 頭頸部の屈曲不足+腹圧低下
  • 腰部筋の過剰活動
  • 電動ベッドで環境調整
  • 頭頸部屈曲+腹圧を意識した起き上がり練習
  • 蹴らない寝返りへ修正

    腰痛が軽減し、動作がスムーズに

電動ベッドを使う際の注意点と実践ポイント

身体の位置がずれていないか
関節部がどこにあるか
背上げ時の捻れに注意
これらを意識することで痛みを防ぎやすくなります。

寝返りから見直すことで起き上がりが変わる場合がある

寝返りで腹圧が入らないパターンは多いため、
最初のステップとして寝返りの方法を整えることは非常に重要です。

不安があれば医療機関へ相談を

体の状態には個人差があり、
すべての方が同じように改善するわけではありません。
痛みが続く場合は医療機関の受診をおすすめします。

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最後に(免責)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。

目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。

患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。

本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。

あらかじめご了承ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上、ユウセイでした。

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