
寝返ると横腹がじわじわと痛い
なんでなんだろう?

腰じゃなくて、横腹が痛いんですね

腰が痛い事が多いけど、横腹が痛む事もあるね
一緒に評価してみようか
「寝返りをしようとすると横腹が痛い…」
そんな訴えを聞いたことはありませんか?
痛みのある側を避けるように動作が偏ると、アライメントの左右差や褥瘡といった二次的な問題を招くリスクがあります。
本記事では、寝返り時に側腹部に疼痛が出るケースについて、評価と改善のための視点を理学療法士の立場から解説します。
※本記事の症例は、個人が特定されないよう一部を改変しています
横腹のどこに痛みがあるかをチェックする
脊髄不全損傷(頸椎)
四肢にしびれあり
ブルンストロームステージ(両側ともに上肢Ⅳ 下肢V 手指Ⅴ)
日中はベッド臥床傾向
トイレはなんとか、歩行器で移動できる
疼痛が出ているのは右側腹部になります。
本人からじわじわと痛むとのことでした。
側臥位になり時間が経てば、症状が改善してきます。
しかし疼痛があるため、右側に寝返りたくないとのこと。

右側に寝返えると右側腹部に疼痛が生じる
寝返りしばらくすると疼痛が緩和する
寝返り動作中の痛みが出る動きを詳しく見る
左足でベッドを蹴りつつ左上肢をベッド柵に伸ばし、引きつけるようにしながら寝返りを行います。

柵を持たずに寝返りを行うと、かなり努力性となります。
また途中で動きが止まってしまいます。
肩甲骨を支えて誘導すると、若干右側腹部の疼痛が改善しました。

体幹の回旋可動域は左回旋25度・右回旋15度と、右回旋制限がありました。
また右回旋の評価時に右側腹部に疼痛が生じました。
更に右回旋最終域で、右外腹斜筋の緊張が高いことが確認されました。

右外腹斜筋の筋腹を右回旋方向に誘導すると、可動域が若干増加しました。
寝返りは柵を把持し、左足でベッドを蹴る
肩甲骨から介助すると、疼痛が緩和する
体幹右回旋に制限があり、右外腹斜筋が高緊張
寝返りで痛みを引き起こす原因を整理する
疼痛が生じた要因として、体幹右回旋制限が挙がりました。
石井らは体軸内回旋は主として胸椎で起こり,主動作筋は上側の(左に寝返るときには右側の)外腹斜筋と下側の(左に寝返るときには左側の)内腹斜筋である¹⁾と述べています。
上記の知見から右側に寝返る際、左側の外腹斜筋と右側の内腹斜筋が主動作筋になると考えられます。
タケシさんは日頃から左外腹斜筋の活動が、胸椎の右回旋制限で抑制されています。
その為寝返り際に左外腹斜筋が、適切に働くことが出来ません。
そうなると右内腹斜筋に、過度な収縮を強いる事となり疼痛が生じたと考えられます。

また体幹右回旋の可動性低下の為、動作中に柵を持ち引きつける必要があったと考えられます。
左足底でベッドを蹴る動きも、体幹右回旋を補う動作と推察します。
肩甲骨を支えて寝返りを誘導した際に、症状が改善しました。
これも体幹右回旋を誘導し、出力を介助できたためと考えます。
上記の評価から胸椎の右回旋可動域を改善し、左外腹斜筋の活動を高めることが必要と判断しました。
体幹右回旋制限により、右内腹斜筋の負担が増加する
体幹右回旋の介助で、疼痛が緩和
可動域を改善し、左外腹斜筋の活動を高める
引用文献
1)石井慎一郎.動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践.メジカルビュー社.2013,43.
原因に応じたアプローチとリハビリ方法を考える
胸椎の右回旋を改善していくにあたり、疼痛の少ない端座位を選択しました。
しかし漠然と端座位で胸椎を回旋させないよう、歩行器を把持し体幹を左右に回旋してもらいました。

これにより上肢に支点を形成し、胸椎の回旋を促しました。
しかし体幹を回旋する際に、右側腹部に疼痛が生じました。
そこで立位での体幹回旋運動に切り替えました。

立位は股関節の回旋要素が大きく加わってしまいますが、直接胸椎を動かしていくよりも間接的にアプローチを行えます。
実際立位の方が右側腹部の疼痛が少なく、負担が少ない事を確認しました。
立位の状態で左右に回旋していき、体幹右回旋制限になっていた右外腹斜筋の収縮・弛緩を繰り返し、緊張を改善させます。
更に右回旋では、左外腹斜筋の活動を高める目的で行いました。
その後再び端座位で体幹を回旋する訓練へと移行し、先程よりも疼痛が緩和している事を確認しました。
訓練後は体幹右回旋可動域も、15度から25度へと改善しました。
そこで寝返りを確認すると、柵を用いずベッドを蹴らなくても寝返りが行えるようになりました。
疼痛もないとのことであった為、ケアを終えました。
まとめ

今回は側腹部に疼痛が生じるケースに対しての、対応を解説しました。
1.寝返り時の側腹部痛の背景には胸椎回旋制限による腹斜筋の出力バランスの崩れが潜んでいることがあり、動作分析と体幹可動域の評価が改善への鍵となります。
2.右側に寝返りをすると右側腹部にじわじわとした痛みが生じるケースへの評価とアプローチを解説しました。
3.体幹右回旋制限により左外腹斜筋が適切に働けず、右内腹斜筋への過剰な収縮が強いられることで疼痛が生じていると考えられました。
4.肩甲骨から体幹右回旋を介助すると疼痛が緩和したことから、回旋可動域の改善と左外腹斜筋の活動向上が必要と判断しました。
5.端座位での体幹回旋は疼痛が生じたため、股関節の回旋要素を活用した立位での体幹回旋運動に切り替えてアプローチしました。
6.立位訓練後に端座位へ移行すると疼痛が緩和し、体幹右回旋可動域が15°から25°へ改善しました。
最後に(免責)
本記事は一般的な情報提供を目的としています。
目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。
患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。
本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。
あらかじめご了承ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
以上、理学療法士 ユウセイでした。


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