「太ももの痛みは姿勢のクセから?後方重心が引き起こす立ち上がり時の負担【CASE1】」

学生・若手
ハナさん
ハナさん

立つ時太ももの前が、痛くて立てないの

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

うーん、膝の使い過ぎでしょうか

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

この悩みは多いよね

一緒に確認してみよう!

立ち上がると太ももの前が痛い…そんな経験はありませんか?

立ち上がろうとした瞬間、太ももの前あたりに痛みを感じる—— こうした訴えは、臨床でも非常によく耳にします。

特に膝蓋骨の上下部や大腿前面の痛みは、立ち上がり動作を妨げ、日常生活動作(ADL)にも大きな影響を与えることがあります。

一方で、痛みの原因を適切に評価し、体に合ったケアを行うことで、立ち上がりの負担が軽減する方も少なくありません。

この記事では、立ち上がりの際に大腿前面に痛みを感じる方への評価の視点とケアの考え方を、理学療法士の視点から解説します。

ハナさんの既往歴と主訴

・腰椎圧迫骨折(保存療法)、右大腿骨骨折(保存療法)
・立ち上がる時に右の太ももが痛い

🔍理学療法評価

痛みが出る部位・範囲を把握する

立ち上がると太ももの前に疼痛が出ているため、
まず「どこが痛いか」「どんな姿勢で立とうとしているか」を確認していく。

座位姿勢を確認する

・頭部は前方偏位、上位頚椎伸展、下位頚椎屈曲
・胸・腰椎後弯、骨盤後傾
・両股関節、膝関節屈曲、足関節底屈位
・右足趾伸展位(地面から足趾が浮いている)

立ち上がりを確認する

立ち上がりを実施しようと体幹を前傾していくが、胸腰椎は後弯が強まっている。
右足趾は伸展位を保持したまま離殿を試みるも、右大腿前面に疼痛が生じる。

疼痛のためか動作訓練には意欲的ではないが、何度か勢いをつけることで離殿を行うことができる。


動作から以下の仮説が考えられるため、精査していく。
👉
・後方重心であり、足部に重心を移しにくい
・離殿を行う際に必要な下肢筋力が十分ではない
・体幹の前傾が十分でないことから可動域に問題がある

筋力を調べる

筋力検査(Manual Muscle Testing)

運動方向
股関節屈曲34
伸展33
外転33
内転33
膝関節屈曲33
伸展34
足関節背屈33
底屈23

可動域を調べる

運動方向
股関節屈曲110125
伸展-5-5
膝関節屈曲110100
伸展-15-10
足関節背屈1010
底屈4045
運動方向
体幹屈曲35
伸展

🧩考察

大腿前面に疼痛が出る場合、
立ち上がり動作中の特定のポイントで負担が増えている場合がある。
ハナさんの問題点として
👉
・胸腰椎が後弯したまま立ち上がりを実施している
・右下腿三頭筋の筋力低下が生じている

胸腰椎が後弯した状態での動作

胸腰椎が後弯したまま立ち上がりをしようとすると、重心が後方へ残り、足部に重心が移行しにくくなる。
その結果、身体を前に運ぶために大腿直筋が必要以上に働きやすくなる可能性がある。

また大腿直筋は股関節と膝関節を跨ぐ二関節筋※であり、力を発揮しやすい一方で、起始・停止が離れており、動作中の関節を安定させるには不向きとされている。

ハナさんは後方重心で立ち上がるため、大腿直筋が過剰に働き、疼痛が生じていると推察する。

※関節を二つ以上、跨いでいる筋肉のこと。大腿直筋であれば股関節、膝を跨いでいる。

右下腿三頭筋の筋力低下

評価の結果、右下腿三頭筋の筋力低下が生じている。

ヒラメ筋はとくに膝関節の伸展を安定させるのに適している.
Neumann DA.筋骨格系のキネシオロジー.原著第2版,嶋田智明ほか(監訳),医歯薬出版,2012,682

上記の知見から離殿から膝関節を伸展させていく際、膝関節の安定性を保つことができていないと考えられる。

💡ケアアプローチ

胸・腰椎後弯を緩和し重心を前へ運びやすくする

後方重心の原因となる胸腰椎の後弯を軽減し、重心を前へ移動しやすくするために、次のようなケアを行った。

ケア①:胸骨柄を天井に近づける動き


胸骨柄を触りながら顎を軽く引き、胸を天井へ近づけるように意識してもらう。
→ 胸腰椎を自然と伸展方向へ誘導できることを狙う。

このケアの特徴として運動をイメージしやすいのがメリット。

ケア②:胸郭を軽く上方へ誘導し深呼吸

セラピストが胸郭を軽く上方に持ち上げ、そのまま深呼吸してもらう。
→ 吸気により胸椎が自然に伸展し、細かい指示が不要。

胸郭は体幹の大きな割合を占めるため、ここが整うと全体の姿勢が変化する場合がある。

胸椎を伸展・前弯方向に誘導することで、腰椎を生理的前弯に近づける事が可能な場合がある。

どちらの方法も姿勢の修正を終えた後は、姿勢を理解できているかを確認していく。

こちらが介助をしなくても、疼痛なく姿勢を修正できることが目標。

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

変形があって伸展が難しい方もいる

でも少し伸展できただけでも、効果があるかも!

足底3点を意識し下腿三頭筋を強化する

姿勢が整ったら体幹を少し前傾させ、足部に体重が乗っているかを確認していく。

ポイントは3つの接地感

  • 母趾球
  • 小趾球

この3点へ体重が乗ることで、立ち上がりの準備が整いやすくなることがある。

もし感覚が分かりにくい場合は、
足底を指で擦るなどして刺激を入れるのも有効な場合もある。
(皮膚の状態には配慮する)

体幹前傾しつつ3点で床を押しこみ、床を押せる感覚があれば準備完了。

3点で押し込んだ時に、踵、足趾が浮かないか確認していく。

この時に自重が乗りつつ、床を踏み込んでいくことによって下腿三頭筋の活動を高めていく。

立ち上がり練習の難易度を調整して成功体験を増やす

姿勢が整い、足底で体重を感じられるようになったら、疼痛が生じないように意識しながら実際に立ち上がり練習を行う。

両手で座面を押しながら負担を調整する

両手を座面につき、身体を前に傾けながら離殿することで、大腿前面への負担軽減を図る。

まずは“お尻を少し浮かせるだけ”でもOK

最初から最後まで立ち上がろうとせず、お尻を数センチ浮かせる程度から始めることで、
疼痛が出にくいことを体験していく。

疼痛がないと分かることで、自信に繋げていく。

支持物を利用しても良い

手すりなどの支持物を使うと、重心移動を助けてくれるため立ちやすくなる場合がある。
その日のケアは離殿するまでとし、疼痛を出さないように心がける。

自主練習として、
👉
・胸骨柄を天井に近づける体操
・姿勢を整えた上で体幹前傾
を提案する。

1週間後再び訪問した際に、立ち上がりを行っても大腿前面に疼痛が出ていないことを確認。
姿勢が修正され、下腿三頭筋の活動が高まったためと考えられる。

まとめ|姿勢と重心の整え方が太ももの痛みを左右する

今回は、立ち上がり時に大腿前面に痛みが出るケースへの評価とアプローチを解説しました。

評価から明らかになった主な問題点は以下の2点です。

① 胸腰椎後弯による後方重心
胸腰椎が後弯したまま立ち上がりを行うことで重心が後方に残り、前方への推進力を補うために大腿直筋が過剰に働きやすくなっていました。大腿直筋は二関節筋であり、動作中の関節安定には不向きなため、過剰な活動が大腿前面の疼痛につながったと考えられます。

② 下腿三頭筋の筋力低下
特にヒラメ筋は膝関節伸展時の安定に寄与しますが、その筋力低下により離殿後の膝関節安定性が不十分となっていました。

アプローチとしては、胸骨柄を天井へ近づける動き胸郭の上方誘導+深呼吸によって胸腰椎の後弯を緩和し、重心を前方へ移しやすい姿勢を整えました。
次いで足底3点(母趾球・小趾球・踵)への荷重認知を高めながら下腿三頭筋の活動を促し、座面への手突きや段階的な離殿練習で痛みなく成功体験を積み重ねていきました。

立ち上がり時の大腿前面痛は、「後方重心+大腿直筋への過剰負担」というパターンが背景にあることがあります。
まずは姿勢と重心の整え方を見直すことが、症状改善への第一歩となります。

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最後に(免責)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。

目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。

患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。

本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。

あらかじめご了承ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上、理学療法士 ユウセイでした。

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