
顔を洗おうとすると、右腰がピリッと痛むんだ

洗顔の際に、腰痛が出ているんですね

前に屈むと腰痛を、訴える方はかなり多いね
洗顔は、私たちが毎日行うごく当たり前の動作です。
しかしその何気ない動作の中で、前かがみになるたびに腰が痛む…そんな悩みを抱える方も少なくありません。
痛みを感じながらの生活はストレスがたまり、動作を避けるようになってさらに筋力や柔軟性が低下してしまうこともあります。
今回は、洗顔動作で腰痛が生じる原因と、その改善に向けた理学療法士としての視点と対応策を解説します。
顔を洗う動作時の姿勢と体の使い方をチェックする
腰以外に原因が隠れているかを分析する
臥位・座位での負担軽減と体幹安定を目指すリハビリ
立位動作時に腰への負担を軽減するアプローチ
顔を洗う動作時の姿勢と体の使い方をチェックする
タケシさんの主訴
洗顔時屈むと腰の右側に疼痛あり
タケシさん姿勢


姿勢を見ると、猫背になってますね

これだと腰部に負担がかかりそう
腰痛があるのは立位で体幹前傾した際です。
ですが疼痛が生じる前段階の姿勢で、原因が潜んでいる場合があります。
その為座位姿勢の確認をします。
確認すると胸椎腰椎後弯・骨盤後傾しています。
タケシさん洗顔動作

実際に動作を確認してみると、この座位の特徴が現れた動きとなっています。
この姿勢では腰椎椎間板に負担がかかりやすくなります。
更に体幹前傾を支える脊柱起立筋は、起始と停止が離れた状態で支える為負担が増加します。
猫背で生活している
体幹前傾時胸椎・腰椎後弯を強めている
腰部以外に原因が隠れているかを分析する
腰部以外の可動性・筋力が低下し、腰部が代償する事で疼痛が生じる事があります。
タケシさんは、胸椎伸展・回旋制限・胸郭に拡張制限が生じていました。
どれも筋性の制限で大胸筋上部・中部線維、小胸筋の制限で、胸椎・胸郭の制限が生じていました。

Dr.Kelly Starrettらは座っているとき、殿筋は基本的に眠っている。
前屈したC型の姿勢で座ると上背、頸部、肩に様々な影響を及ぼすが、腰部においても大きな犠牲を払っている。殿筋が機能せず、脊柱サポートシステムをシャットダウンすると腰椎は崩れて腰部の椎間板で不均衡な圧力が生じる¹⁾と述べています。
上記の知見から両側の大殿筋の活動が低下し、腰部の負担が増加していると考えます。
また別途検査で、右大殿筋が左と比較して筋力低下していました。

胸椎伸展・回旋制限、胸郭拡張制限あり
日常の座位姿勢による大殿筋の筋力低下
引用文献
1)Dr.Kelly Starrett.「ケリー・スターレット式座りすぎケア完全マニュアル.初版第1刷,溝渕知秀(訳),医道の日本社,2019,42-50.
胸椎の伸展・回旋制限、胸郭の拡張制限
洗顔の為体幹前傾します。
この時胸郭が拡張せず、胸椎伸展が出来ないと胸腰椎は後弯しやすくなります。
体幹前傾すると脊柱起立筋が遠心性収縮で支持する為、胸・腰椎位後弯すると更に負担が増加します。

座位による大殿筋の筋力低下
大殿筋の筋力低下により体幹前傾を支持できず、脊柱起立筋に負担をかけます。
青木・杉浦らは前屈運動の中心は股関節であり、股関節伸筋群である大殿筋機能が低下していると腸肋筋等の脊柱起立筋等の活動が高まる。このことは筋・筋膜性腰痛の一因になると述べています。²⁾
上記の知見から大殿筋の弱化により、腸肋筋・脊柱起立筋への負担が増加し、腰痛が生じていると考えました。
引用文献
2)青木保親・杉浦史郎.フルカラーでやさしくわかる!腰痛の理学療法.第1版,日本医事新報社,2022,84-105.
胸椎・胸郭の可動域制限により負担増加
大殿筋の弱化により負担増加
臥位・座位での負担軽減と体幹安定を目指すリハビリ
胸郭の可動性を改善する

大胸筋上部・中部線維、小胸筋と順に軽く指圧します。
その際肩甲骨内側縁を押し込み、後傾方向に誘導します。
伸張と弛緩を繰り返し、自動介助運動に移行します。
この訓練により胸椎伸展・回旋、胸郭拡張制限を改善します。
この過程で胸・腰部の緊張が、緩和しました。
胸郭には腸肋筋・広背筋が付着しており、胸郭の拡張が促せた事で緊張が緩和したと考えます。

伸張位で呼吸を用いれば、可動域改善を図れることも!
次いで側臥位で大殿筋の収縮を促し、腰部の負担を軽減します。
訓練中大きく開排する事は出来ませんでしたが、繰り返すと大殿筋が収縮するのを感じてもらえました。

肩甲骨を用いて、胸椎・胸郭の可動性を改善する
大殿筋の活動を高めて、腰部の負担を軽減
次いで座位で多裂筋・最長筋を収縮させながら体幹前傾します。
体幹前傾により重力に抗する為、筋活動を促せます。
多裂筋・最長筋が活動し、胸腰椎を後弯から前弯へと修正して、腰背部の負担を軽減します。

体幹前傾位から、無理のない範囲で抵抗を肩甲骨後面からかけます。(過前弯に注意)
抵抗に抗する事で更に筋活動を促します。

胸・腰椎前弯に誘導し、多裂筋・最長筋を促す
姿勢を修正し、腸肋筋への負担を減らす
立位動作時に腰への負担を軽減するアプローチ
最終的に立位での治療を実施します。
立位は支持基底面が足部のみとなります。
体幹を前傾する際に前足部に重心移動せず、踵に移動してしまうと腰部の負担が増加してしまいます。
その為前足部に力が入る感覚を、認識してもらう事が重要です。
壁に立位でもたれてもらい、お尻・背中を壁につけたり、離したりします。

漠然と前足部、踵に重心移動を提案するよりも、目標物に身体を近づける方が余計な動作が含まれにくくなります。
前足部に力が入る感覚を養えたため、前足部に重心を乗せながら体幹前傾し、洗顔を行なうと疼痛が生じませんでした。
前足部に重心を乗せながら、洗顔動作をする事を提案し、生活してもらいます。
1週間後訪問し、疼痛が改善した事を確認しました。

つま先で踏ん張る感じが分かってもらえると、良い結果につながることが多い。
でも人によってバランスのとりかたは、個人差があるから確認してみてな。
まとめ

今回は洗顔中に生じる腰痛に悩む方への対応を解説しました。
治療の手順は、以下の通りとなります。
顔を洗う動作時の姿勢と体の使い方をチェックする
腰以外に原因が隠れているかを分析する
臥位・座位での負担軽減と体幹安定を目指すリハビリ
立位動作時に腰への負担を軽減するアプローチ
今回は胸腰椎の後弯と、胸郭拡張制限を改善し、大殿筋・最長筋・多裂筋の働きを促通しました。
更に前足部に体重移動し、体幹前傾できるようになると腰痛が改善しました。
腰痛の原因は千差万別ではありますが、日常の姿勢・動作の方法から疼痛が生じていることもあります。
筆者もリハビリテーションに携わる者として、腰痛には十分に注意していきたいと感じています。
おすすめ書籍
今回腰痛を治療するうえで、非常に参考になる著書でしたのでご紹介します。
カラーで見やすく、腰痛の症状によって細かく評価・治療法を解説して頂いています。
沢山の臨床へのヒントが詰まった良書です。
もし読んだことがない方がおられれば、手にとって頂く事をおすすめ致します。
外来リハビリ・訪問リハビリなど、限られた時間でしか治療する機会が得られないセラピストの皆様にもおすすめです!
前かがみ姿勢による腰痛は、腰部以外の部位に原因が潜んでいることがあります。以下の記事もあわせてご確認ください。
✅ 肩から指にかけての痛みはなぜ起こる?見逃してはいけない原因を理学療法士が解説【CASE15】
✅ 腰が痛いのは歳のせい?理学療法士が姿勢から読み解く原因と改善策を解説【CASE7】
✅ 足を伸ばすとお尻が痛いのはなぜ?原因と改善方法を理学療法士が解説【CASE29】
最後に
この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに、紹介した評価・治療が適応できるか、判断して頂いたうえで、使用して頂ければ幸いです。
患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。
そのため、今回ご紹介した治療は、万人に対して、再現性を担保できるものではありません。
それらを踏まえた上で、参考にして頂ければ幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
以上、ユウセイでした。

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