歩くと右足が出しにくいのはなぜ?理学療法士が原因とケアの方法を解説【CASE5】

医療者向け
ハナ
ハナ

歩くと右足が出しにくい!

筋力がないのかしら?

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

この訴えもたくさん聞くね

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

右足に問題がありそうですかね?

筋力低下とか!

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

それが一概にそうともいえんで

一緒に評価してみよう

「足が思うように前に出ない…」


そんな歩行の悩みを抱えている方は少なくありません。


一歩が出にくいだけで、移動のたびにストレスや不安を感じてしまいます。


しかし、その動きが改善したときの感動は、何よりも大きなものです。


今回は、歩行中に足が振り出しにくい方に対して、理学療法士の視点から原因の考え方と対応方法を解説します。

ケアの考え方

すり足歩行にみられる問題点を評価する

体重移動の偏りを確認する

左右の足底感覚を確認する

すり足歩行にみられる問題点を評価する|動作と姿勢のチェック視点

左変形性股関節症術後(左人工股関節全置換術)

右足がすり足になってしまい、前に転びそうになる

体重移動の偏りを確認する

どちらの下肢に体重が乗っているか評価します。

簡便な方法は、左右の踵を交互に上げる事です。

踵を上げた際に、

重心が大きく移動した支持側の下肢に体重が乗りにくいです。

ハナさんの場合は右踵を持ち上げた際に、重心移動が大きくなっていました。

つまり右側に重心が偏りやすく、右の踵を持ち上げるために左下肢へ重心を移動させなければならなくなった。

そのため重心移動が大きくなっていると推察しました。

左右の足底感覚を確認する

続いてハナさんの足底を確認していきます。

すると母趾球・小趾球・踵の感覚が右と比較して、

左が弱く分かりにくいとの発言がありました。

そこで左足底の感覚も低下していると仮説を立て、

体重が乗りにくい左足底に対し感覚を促通していきます。

左足底の感覚低下の可能性がある

左下肢に体重が乗りにくい可能性がある

すり足に対するケア

問題点

左足底の感覚低下の可能性がある

左下肢に体重が乗りにくい可能性がある

上記の問題点から左下肢の支持が不十分となり、

右下肢の体重が抜けきらないため、遊脚のクリアランスを保つことが出来ず、

すり足になっているのではないかと仮説を立てました。

足底感覚に対するケア

感覚を促通する場所は、母趾球・小趾球・踵です。

この3点で体重を支える意識をもってもらいます。

タオル等でこの3点を擦って刺激しても良いです。

皮膚が弱い方には指で刺激します。

どちらにせよ疼痛がないように配慮します。

感覚が促通できたら、体幹を前傾していきましょう。

先程感覚を促通した部分に、体重が乗っていくように意識してもらいます。


母趾球、小趾球、踵で体重を支える感覚を認識する

重心移動に対してのケア


足底の感覚を促通したら、立位で訓練をします。

骨盤を壁などの目標物に近づけます。

その場合体幹の代償が入りにくくなる場合があります。

この方法で左下肢に体重が乗っていき、

右下肢の体重が抜けて、軽くなっていく感覚を身に着けてもらいます。

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

恐怖心があれば、支持物を触りながらでも良いよ

立脚中期~立脚後期の体重移動

先程はほぼ真横に体重移動を行ってもらい、左下肢に体重を感じてもらいました。

しかし歩行の立脚中期~後期にかけては、

踵から前足部へと体重が移動する場合が多いです。

つまり、体重が踵から前足部、母趾へと移行していく感覚を感じていく必要があると感じています。

足底の3点の感覚を養った事で、重心が移動するのを感じやすくなります。

ケアとしては壁に背中をつけたり離したりします。

その際に踵・前足部に体重が乗っていく感覚を養います。

背中ではなく、骨盤と言った方が分かりやすい方もいます。

その場合は骨盤前傾し、疼痛が出ていないか確認します。

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

立脚中期〜後期は体重が前方に移動する

その感覚に気づくための訓練だね

体重移動は、身体部位と目標物を設定する

踵→前足部への体重移動を意識する

ステップを出す!

踵から前足部に体重が移動する意識で、立脚をコントロールしてもらいます。

その際に右下肢の踵が浮く反応が出ました。

踵が浮いて来たらステップする。

すると右下肢の出しやすくなったとの発言がありました。

そのため支持物が近くにある状態で、このステップ訓練を自主練習としました。

歩行距離が伸びてくるとすり足になりそうになりました。

その時は一度止まり、体重移動を確認しながら歩行を行いました。

3週間後の訪問中に最近すり足があまり気にならなくなったと、本人・家族から聴取出来ました。

ハナさんは、

左足底の感覚低下の可能性がありました

左下肢に体重が乗りにくい可能性がありました

上記のケアとして、足底の感覚入力を行い、左下肢で体重を支える認識を持ってもらうことを意識しました。また体重移動によって右下肢が軽くなる感覚を養い、右下肢を振り出すタイミングを掴んでもらいました。

以上のことで右下肢が振り出しやすくなったと考えられます。

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

最初は軽くなったら振り出してもらう

慣れたら無意識に歩いてもらうよ

ハナさん
ハナさん

右足が軽くなる感じが分かったわ

てっきり右足が悪いと思ってた

まとめ

今回はすり足となり、足を振り出しにくい方への対応を解説しました。

ケアの考え方としては以下の通りです。

ケアの手順

左足底の感覚低下の可能性がある

左下肢に体重が乗りにくい可能性がある

この問題点に対して

左足底の感覚入力を母趾球・小趾球・踵に行う

骨盤を意識しながら左下肢に体重を乗せていき、右下肢が軽くなる感覚を掴む

自主練習で体重移動の感覚・ステップのタイミングを意識する機会を作る

上記のケアですり足による右下肢の振り出しにくさをケア出来たと考えます

下肢を振り出せない時に、出しにくい側の下肢が原因であると考えてしまいがちです。

しかし体重が乗りきらない場合に、振り出そうとすると非常に難しくなります。

その原因として足底の感覚低下・体重移動の不足が挙げられる場合があります。

この記事が参考になると嬉しいです!

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最後に(免責)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。

目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。

患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。

本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。

あらかじめご了承ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上、ユウセイでした。

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