車に乗ると腰痛が悪化する?長時間座位による負担と対策を理学療法士が解説【CASE12】

医療者向け
ハナ
ハナ

車に乗っていると、左腰が痛いわ

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

車に乗ってて腰が痛いと、移動が辛いですね

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

外出する機会が減っちゃうね

車での移動は機会が多いと思うし、、

今や車での移動は、多くの人にとって日常の一部となっています。


病院や施設への通院・通所などで、長時間座った姿勢を保たなければならない機会も増えています。


そんな中で「車に乗っていると腰が痛くなる」という訴えを耳にすることは少なくありません。


特に座ったまま腰痛を我慢する時間が長くなると、身体的にも精神的にも大きな負担となり、外出自体が減ってしまうこともあります。


今回は、15分ほど車の座席に座っていると腰痛が生じてしまう方への評価と対応策を、理学療法士の視点から解説します。

治療の手順

腰痛が出る部位と座位姿勢をチェックする

腰への負担を軽減するためのアプローチを行う

腰痛を予防するための負担の少ない座位姿勢を提案する

腰痛が出る部位と座位姿勢をチェックする

ハナさん 姿勢評価


左側の殿部、腰部に疼痛が生じます。

座位は左大腿内旋・左下腿外旋しており、左膝外反位で重心が右側に偏ります。

本人としては真っ直ぐ座っている意識との事。


自宅では背もたれのある椅子に座り、右腰部が背もたれに接しています。


車の座席に座っていて左腰部の疼痛が強くなれば、車中の手すり(以下アシストグリップ)を左上肢で引き付けると楽になるとの事。

左殿部・腰部に疼痛があり、重心が右殿部に偏る

正中位のイメージが乖離している

左殿部に重心を乗せると疼痛が緩和

疼痛の原因を精査する

左膝外反と右重心に偏る事で、体幹が左側屈しています。

更に胸・腰椎後弯、骨盤後傾しています。

この事から後方への、重心移動も生じています。


上記の事から右後方に重心が偏位していく中で、バランスを保つために左殿部・腰部の静止性収縮が必要になっています。

本来であれば姿勢を正中位に戻したいところですが、本人の感覚にずれが生じています。

その為左殿部、腰部の筋肉は緊張し続けます。

その影響で疼痛が生じていると考えます。

右殿部に重心が偏り続け、左殿部・腰部の負担が増加する

猫背で後方重心となり腰部の負担になる

アシストグリップの仮説

左上肢で車中のアシストグリップを引き付ける事で、一時的に重心が左殿部に乗ります。

更に左殿部前方に重心移動し、後方重心も緩和したと考えます。

その為左殿部、腰部はバランスを保つ為の静止性の収縮が必要なくなります。

上記の理由で一時的に疼痛が、緩和したと考えられます。

後方重心を改善し、左殿部に重心移動

上記の動きで疼痛が緩和する

腰への負担を軽減するためのアプローチを行う

下肢のアライメントを修正する

右殿部に体重が偏り、猫背による後方重心により体幹の左側屈位となります。

この姿勢が長時間に及ぶことで、左殿部、腰部の負担になっています。

姿勢の崩れの原因が左膝の外反位なのか、それとも姿勢の崩れが認知できない事が原因なのか精査が必要でした。

最初に左膝外反位を改善し、左殿部、腰部の疼痛が改善するか確認します。

左大腿を外旋方向・下腿は内旋方向に誘導する為、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯の緊張を緩めます。

腸脛靭帯に圧痛がありましたが、大腿筋膜張筋を触知し股関節を外内旋すると改善しました。


大腿直筋の位置も内側偏位していた為、外側に誘導し股関節外旋に誘導しました。

大腿外旋に誘導されると、腰痛が少し楽になったと発言がありました。

その為左膝関節外反位が、腰痛の原因と考えました。

左膝外反位or固有感覚低下のどちらで腰痛が出るのか精査

大腿外旋に誘導すると、腰痛が改善

腰痛を予防するための負担の少ない座位姿勢を提案する

左膝外反位を修正し腰痛が緩和しました。

しかし右殿部に重心が偏位しても、真っ直ぐと認識する固有感覚に対しても治療を行う必要がありました。

下肢のアライメントを修正し、座位で両手を両殿部に当てがい、左右均等に体重が乗るように提案しました。

この方法であれば正中位をとることができ、疼痛もありませんでした。

そこで自主練習として提案しました。

また下肢のアライメントにも気を配ってもらいました。

その月末に、1時間ほど車で家族と外出しましたが、疼痛がなかったと喜んでもらえました。

まとめ


今回は15分ほど車の座席に座ると、腰痛が生じ外出が減少した方への対応を解説しました。

治療の手順としては、以下の通りになります。

治療の手順

腰痛が出る部位と座位姿勢をチェックする

腰への負担を軽減するためのアプローチを行う

腰痛を予防するための負担の少ない座位姿勢を提案する

腰痛の原因は、今回は下肢のアライメントにありました。

しかし固有感覚の情報が適切に認知できず、姿勢が崩れている場合も散見されます。

腰痛といっても一括りではないなと、改めて実感しました。

おすすめ書籍

今回は姿勢の解釈によって、腰痛を改善することが出来ました。

姿勢は無意識に毎日継続しています。

疼痛があれば原因が姿勢にある事も少なくありません。

そんな姿勢に対しての評価・治療の幅を、広げて頂ける書籍に出会いましたのでご紹介します。

経験年数を重ねても読み返す度に、学びを与えて頂ける良書です。

学生の方にももちろんおすすめですが、就職した後もしくは経験年数を重ねてから、読む事をおすすめしたいです。

筆者は経験を重ねて知識・技術がある程度伴った時に、この著書に出会いましたのでとても刺激になりました。

是非一読頂けると嬉しいです。

車の運転や長時間の座位で腰痛が悪化する背景には、骨盤や体幹のバランス、下肢との連動の乱れが関係している場合があります。

似たような症状を感じる方は、以下の記事も参考にしてみてください!

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最後に

この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに、紹介した評価・治療が適応できるか、判断して頂いたうえで、使用して頂ければ幸いです。

患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。

そのため、今回ご紹介した治療は、万人に対して、再現性を担保できるものではありません。

それらを踏まえた上で、参考にして頂ければ幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

以上、ユウセイでした。

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