「正座ができないのは膝が硬いから?理学療法士が見つけた脛骨のねじれ【CASE3】」

学生・若手
ハナさん
ハナさん

正座をしようとすると、太ももの前がピリッと痛むんです

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

正座ですか、、正直むずかしいかもしれませんね

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

確かに難しい

でも知識があれば、患者さんの助けになれるかも!

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

ほんとですか!

正座は膝関節の大きな可動域を必要とする動作です。
しかし日常生活でも求められる場面が多く、できないことで困る方も少なくありません。

本記事では、正座しようとすると膝前面に疼痛が出るケースについて、一般的な評価の視点とケアの考え方をまとめています。

ハナさんの既往歴と主訴

・半年前から右太ももの前が痛み、正座ができない
・糖尿病、高血圧

🔍理学療法評価

症状と動作を確認

正座の途中で右大腿前面に疼痛が出現→Numerical Rating Scale(以下NRS) 6
動作が生じた時点で動作を中止する。

可動域を調べる

運動方向
股関節屈曲110105
伸展5※
膝関節屈曲140(P)160
伸展00
足関節背屈1010
底屈4045

(P)膝から大腿にかけて鈍痛が生じる(NRS4)
※膝関節を90度屈曲させ行うも可動域に大きな変化なし。

触診

大腿二頭筋、半腱様筋の過緊張・圧痛を確認。

脛骨の副運動(遊び)を確認する

脛骨を前後方向に動かしてみて関節の遊びを確認する。
その際に、
👉
・後方には抵抗感が少なく動かすことができる
・前方には抵抗感があり、動く範囲が狭い
・ハムストリングスの抵抗感を感じる

膝屈曲時の特徴

屈曲時に下腿(脛骨)が外旋し、疼痛が出る前に膝の外側が詰まるような感覚があるとのこと。

整形外科テスト

腹臥位が困難であったため
👉
トーマステスト変法にて大腿直筋の短縮を確認→陰性

膝屈曲時の下腿内旋を促す

膝屈曲の際に脛骨を内旋方向に軽微な力で誘導し屈曲していく。

その際に
👉
・抵抗感の軽減
・外側に詰まるような感覚が軽減
屈曲可動域に変化はないも、上記のような反応を確認。

🧩考察

右膝関節屈曲制限が生じており、この制限により大腿前面に疼痛が生じていると仮説立てる。
原因を以下に述べる。

膝関節の屈曲可動域と下腿の動き

膝屈曲時に、
👉
・下腿(脛骨)外旋が強い
・左右差が生じている

このことから適切な関節の軌跡が逸脱している可能性あり。

宇都宮らは屈曲初期のみならず、90°を超えて角度が増すにつれ、脛骨が内旋する
宇都宮初夫.SJF関節ファシリテーション.第2版,丸善出版株式会社,2017,124.

筋短縮か関節運動の問題か

トーマステスト変法肢位で大腿直筋の状態を評価、
👉
・陰性
・股関節の伸展可動域が保たれている
・膝を90°屈曲させて股関節伸展しても可動域に差がない。

強い短縮が原因とは言えない可能性あり。

脛骨の副運動(遊び)を評価する

脛骨の副運動を評価、
👉
・後方には抵抗感が少なく動かすことができる
・前方には抵抗感があり、動く範囲が狭い
・ハムストリングスの抵抗感を感じる

上記の評価から👇

脛骨のアライメントが後方に偏位している可能性を示唆する。

問題点の列挙

  • 屈曲時に下腿(脛骨)が外旋する
  • 下腿(脛骨)を内旋すると最終域までの抵抗感、違和感が軽減
  • 大腿二頭筋・半腱様筋の緊張亢進、圧痛あり
  • 大腿直筋の短縮による著しい制限なし
  • 脛骨の前方移動に制限が生じている

上記の評価から👇
膝関節のアライメント偏位に併せ、運動軌跡に問題が生じていると仮説立てる。

💡ケアアプローチ

下腿の内旋・前後移動を促すモビライゼーション

膝関節屈曲制限が生じ、下腿(脛骨)が外旋へ偏位する直前まで屈曲する。
そこから脛骨・腓骨を優しく把持し
👉
・内旋方向
・前後方向
へ軽く誘導します。

一度に大きく誘導するのではなく、無理のない範囲で反復していく。
→制限している軟部組織、筋に伸張と弛緩を加えていく。
実施した後は必ず膝を最終域まで伸展する。

⚠️脛骨裏、腓骨頭周辺には
👉
・脛骨神経
・膝窩動脈
・浅腓骨神経
があるため、必ずソフトに触れる。

ハムストリングスへのリラクゼーションで緊張を和らげる

・半腱様筋
・大腿二頭筋
の筋腹を軽く指圧し、右膝関節の屈曲、伸展を無理のない範囲で繰り返す。

ハナさんの場合は緊張が緩み、下腿(脛骨)内旋が誘導しやすくなる。

可動域訓練の注意点と自動介助・自動運動へのつなぎ方

①屈曲制限(または外旋が強まる)直前で無理に押さない
②モビライゼーション後は必ず一度膝を伸展させる
③痛み・違和感がないか必ず確認する
④可動域が改善したら 自動運動・自動介助運動へ切り替える

✔️拘縮原因の軟部組織・筋は、伸張・弛緩を繰り返す事で柔軟性を取り戻すことがある。
✔️モビライゼーション後伸展せず屈曲し続けると、膝の疼痛が生じる場合があるので注意。
✔️他動だけで終えると、
👉
・獲得した可動域に筋の収縮が適応できない
・荷重をかけた際に疼痛が生じる
このようなリスクが考えられる


①〜④に配慮しつつ上記のケアを繰り返し、1ヶ月後👇

  • 右膝屈曲可動域:140° → 165°
  • 下腿外旋の軽減
  • 大腿二頭筋・半腱様筋の圧痛の消失

正座を疼痛なく実施できる。

まとめ

①正座時に右大腿前面に痛みが生じるケースへの評価とアプローチを解説しました。

② 膝屈曲時に下腿(脛骨)が外旋し、関節の運動軌跡が逸脱していることが主な問題と考えられました。

③ 脛骨の前方移動制限とハムストリングスの緊張亢進も確認され、関節運動の軌跡に問題が生じていると仮説を立てました。

④ アプローチとして脛骨を内旋・前後方向へ軽く誘導するモビライゼーションと、ハムストリングスへのリラクゼーションを繰り返し実施しました。

⑤ モビライゼーション後は必ず膝を伸展させ、他動運動から自動介助・自動運動へ段階的に移行しました。

⑥ 1か月後には膝屈曲可動域が165°まで改善し、下腿外旋の軽減と圧痛消失とともに疼痛なく正座が行えるようになりました

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最後に(免責)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。

目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。

患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。

本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。

あらかじめご了承ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上、理学療法士 ユウセイでした。

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