膝が伸ばせないのはなぜ?寝ながら起こるトラブルを理学療法士が解説【CASE23】

医療者向け
タケシ
タケシ

寝てる時に、膝を伸ばすと腰が痛いんだ

なんでだろう?

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

今回は腰痛、しかも寝ているときに出てますね

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

そうだね!

なぜ腰痛が出ているのか確認していこう!

「寝ているときに膝を伸ばすと、腰が痛くて目が覚める…」


そんな悩みを抱える方は少なくありません。


睡眠中の姿勢や筋の緊張が影響して、腰部にストレスがかかっているケースがあります


本記事では、寝ながら膝を伸ばす動作で腰痛が生じる原因と、理学療法士としての評価・改善の視点を解説します。

治療の手順

腰痛が出る部位と範囲をチェックする

おへその位置と骨盤のバランスを確認する

腹横筋・腹斜筋を活性化するためのトレーニングを行う

腰痛が出る部位と範囲をチェックする

タケシさんの既往歴

脳出血の既往あり右麻痺

ブルンストロームステージ 上肢Ⅴ 下肢Ⅳ 手指V

腰痛は右側腰部に生じています。

膝を伸ばす際に両下肢が左側に偏ります。

おへその位置と骨盤のバランスを確認する

おへそを確認すると、左側に偏っています。

赤ちゃんが母親の中にいる時は、赤ちゃんの白線の臍部に空いた穴から、へその緒が飛び出す形で母親とつながっています。

赤ちゃんの白線の臍部に空いた穴のことは臍輪と呼ばれており、産まれた後にへその緒を切ることで、臍輪は塞がっていき、見慣れたおへそになっていきます。

おへその位置は白線上にあるため、腹横筋・腹斜筋の筋緊張に左右差が生じると、白線を引き付ける力に差が生じます。

つまり筋緊張の高い腹横筋・腹斜筋側に白線が引きつけられ、白線上に位置しているおへその位置が、片側に偏位してしまうことがあります。

内腹斜筋

起始:胸腰筋膜(深層),腸骨稜(中間線),上前腸骨棘

停止:第10-12肋骨(下縁),白線(前・後層)

作用:片側:体幹を同側に曲げる,体幹を回旋させる 両側:体幹の屈曲,腹圧を高める,骨盤の固定

腹横筋

起始:第7-12肋軟骨(内側面),胸腰筋膜(深層),腸骨稜,上前腸骨棘(内唇),腸腰筋膜

停止:白線,恥骨稜

片側:体幹を同側に曲げる両側:腹圧を高める

1)Anne M.Gilroy・Brian R.MacPherson・Jamie C.Wikenheiser.プロメテウス解剖学,坂井建雄(監訳),医歯薬出版,2012,148-149

偏っている側の腹横筋・腹斜筋の筋緊張は高く、反対側に位置する腹横筋・腹斜筋の緊張が低いと考えます。

おへそを確認する際には、見られるのが嫌という方もおられます。

その場合は服の上から患者さんに触ってもらいましょう。

おへそが左側に偏っている

腹横筋・腹斜筋の緊張が高い方に偏位しやすい

腹横筋・腹斜筋を活性化するためのトレーニングを行う

左腹横筋・腹斜筋の筋緊張が高く、仰臥位で膝を伸ばした際に両下肢が左側に偏位しました。

両下肢が左側に偏位する為、右腰部が過度に伸張され疼痛が生じたと考えられます。

その為右腹横筋の活動を高めて、両下肢を伸展する際の左側への偏位を改善していきます。

右側臥位で右側腹部を持ち上げるようにして、右側の腹横筋・腹斜筋を活動させます。

今回の場合麻痺側を下にしますので、疼痛が生じないか・肩が下敷きになっていないか、注意しながら行いました。

この訓練により、反対側の左腹斜筋・腹横筋を伸張して緊張を緩和しつつ、おへその位置を正中位に修正しました。

その後膝を伸ばすと、疼痛の訴えなく動作が行えました。

低緊張側の腹横筋・腹斜筋を鍛える

おへそが正中位になったか確認する

まとめ

今回はおへそから腹部の筋緊張を判断し、整える事で膝の疼痛を軽減したケースを解説しました。

治療の手順としては以下の通りになります。

治療の手順

腰痛が出る部位と範囲をチェックする

おへその位置と骨盤のバランスを確認する

腹横筋・腹斜筋を活性化するためのトレーニングを行う

評価・治療はシンプルですが、筆者の経験上役立つ知識の為ご紹介しました。

体幹部の筋緊張は崩れやすく、服で隠れている為見逃しやすい部分だと感じます。

そのため1つでも指標を持っておくと臨床で役立ちますよ。

おすすめ書籍


今回の訓練を用いるあたり必要になるのが、筋肉の起始・停止の知識と収縮作用の理解になります。

今回は腹横筋・腹斜筋が白線に付着していることが、解剖学で学べていたので治療に応用することが出来ました。

解剖学を知っておくことによって、評価と治療を結びつけやすくなると筆者は考えています。

そこでおすすめしたい著書がありますのでご紹介致します。

非常にイラストが綺麗で内容も細かいため、解剖学を勉強したい方におすすめです。

勉強していれば何気なく相手の体に触っていても、ふとした気づきで治療の糸口を見つけられるかもしれません。

是非まだ見たことがない方は、手にとって頂けたらなと考えます。

寝た状態で膝が伸ばせない原因は、筋緊張や関節拘縮だけでなく、姿勢や他部位の影響も関係しています。以下の記事もあわせて参考にしてみてください。

寝てるとき足が重いのはなぜ?理学療法士が原因と動きやすくする方法を紹介【CASE11】

朝起きると足がつるのはなぜ?理学療法士が原因と改善方法を解説【CASE28】

正座ができないのはなぜ?理学療法士が膝の原因と改善方法を解説【CASE3】

最後に

この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに、紹介した評価・治療が適応できるか、判断して頂いたうえで、使用して頂ければ幸いです。

患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。

そのため、今回ご紹介した治療は、万人に対して、再現性を担保できるものではありません。

それらを踏まえた上で、参考にして頂ければ幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

以上、ユウセイでした。

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