
最近トイレに行く前に、出てしまうことがあるの
怖くて外出も出来ないし困ってるわ

すごくデリケートな問題ですね

衣服を取り替えたり、掃除したり、
すごくストレスになると思う
排泄は日常生活に欠かせない大切な行為です。
特に「トイレまで我慢できること」は、生活の安心感にも直結します。
もし我慢が難しくなると、不快感・羞恥心・片付けの負担など、本人も介助者もストレスが大きくなります。
今回は、トイレまでの少しの時間で“うまく締められない”と困っている方に対して、理学療法士としてどんな視点で評価し、どんなアプローチができるのかを整理します。
便失禁を防ぐために骨盤底筋群の役割を整理する
骨盤底筋群と排泄コントロールの関係を理解する

骨盤底筋群は骨盤の底を支えるように広がり、排泄をコントロールする際に重要な役割を果たします。
特に便を我慢する場面では、外肛門括約筋を含む骨盤底筋群の働きが重要です。
また、骨盤底筋全体の協調が弱くなると、必要なタイミングで力を入れづらくなる場合があります。
そのため「特定の筋だけ鍛える」よりも 骨盤底筋群全体が一体として働くこと が大切と考えられます。
尿道括約筋・肛門括約筋は連動して働く
肛門の括約筋と尿道の括約筋は連動している
竹井仁.正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書.ナツメ社.2015,76-77.
上記の知見より、尿道括約筋と肛門括約筋は連動しやすい動作特性を持つとされています。
つまり 肛門の締まりは尿道の締まりにも影響しやすい ということです。
便失禁に関連する筋機能と動作を評価する
座位で「お尻を締める感覚」があるかをチェックする
座位でお尻を締める感覚・下腹部に力が入る感覚を確認しましたが、
ハナさんは
「締まっている感じが分からない」
とのことでした。
これは 骨盤底筋群の収縮感覚が弱くなっている可能性 を示唆します。


普段お尻締めないから分からないわ
側臥位で坐骨結節周囲の反応を確認する
側臥位で坐骨結節の内側に軽く触れ、押された方向に「素早く押し返せるか」を確認。
しかし反応が鈍く、「どう押し返せばよいのか分からない」と話されていました。
特に右側の反応が弱く、左右差 も確認されました。
(※この時お尻に手を当ててよいか必ず確認します)

骨盤底筋群の瞬発的な収縮のしやすさを整理する
便は形状や硬さも毎回変化します。
状況に合わせ瞬時にお尻を締め、失禁を予防しなければなりません。
そのため、「素早く力を入れる能力」も大切です。
ハナさんの場合、この瞬発性が低下しており、必要なタイミングで力を入れづらい状況でした。
便失禁を予防するためのリハビリアプローチ
問題点
骨盤底筋群の筋力低下・瞬発性の低下により失禁になっている可能性がある
側臥位で骨盤底筋群の収縮を引き出すエクササイズ
側臥位で坐骨結節近くに手を当て、「押されたら素早く押し返す」動きを練習。
少しずつ反応が出て、
- 下腹部に力が入る
- お尻が締まる感覚が出てくる
などの変化が見られました。
便失禁を予防するためのリハビリアプローチ
側臥位で骨盤底筋群の収縮を引き出すエクササイズ
側臥位で坐骨結節やや内側に手を当て、「押されたら素早く押し返す」動きを練習。
(※この時お尻に手を当ててよいか必ず確認します)
回数を行う事に少しずつ反応が出て、
- 下腹部に力が入る
- お尻が締まる感覚が出てくる
などの変化が見られました。

訓練を継続し左右差が無くなってきた為、再度側臥位でお尻を締めてもらいました。
その際にお尻が締まるのを感じる事が出来ました。


これがお尻を締める感覚なのね
座位でお尻を締める感覚をつかむ練習
側臥位の後は座位でも、お尻の穴を締めてもらいます。
しかし座位は側臥位よりも感覚が分かりづらいとのこと。
そこでご本人の手を坐骨結節に当ててもらい、
「締めたときに骨盤底が働いている感じ」
を確かめながら動作を繰り返しました。

動作を繰り返すことで下腹部に力が入り、
お尻が締まる感覚を感じてもらうことが出来ました。
慣れてきたらお尻を締めた時に、
便を止めるようなイメージを持ち訓練を行ってもらいました。
収縮した後は必ず弛緩を数秒間行い、
訓練中は息をこらえないようにしてもらいました。

一生懸命しようとすると息とめちゃうわ
気をつけないと、、
立位で瞬時に締める練習(外出時を想定)
最後に、トイレへ移動する実際の場面を想定し、
- 立位でお尻を締める
- 「今!」と声をかけ、瞬時に締める瞬発性の練習
も取り入れました。
立位になるとお尻を締める感覚が、分かりにくいとの事でした。
座位と同様で坐骨結節を、立位の状態で触ってもらいます。
坐骨結節と坐骨結節が近づくようにお尻を締めてもらうと、
締まる感覚が徐々に分かるようになりました。

自主訓練
リハビリでの感覚を思い出し、
立位で便を止めるイメージで、お尻を締める事を自主訓練としました。

本症例では継続することで、立位でもお尻を締められるようになり、
1週間後には「外出できた」と嬉しい報告をいただけました。
まとめ:今回のケースのポイント
ケアの手順は以下の通りでした。
- 骨盤底筋群の基本的な役割を整理する
- 筋力・感覚・瞬発性など骨盤底筋の働きを評価する
- 側臥位 → 座位 → 立位の順で、段階的に骨盤底筋群の収縮を促す
今回のケースでは、
骨盤底筋の筋力低下・感覚低下・瞬発性低下
が影響していたと考えられます。
「排泄に関連する問題」は非常に個別性が高く、背景も人によって大きく異なります。
そのため紹介した内容はあくまで一例であり、状況に応じた判断が不可欠です。
失禁は生活の満足度を下げる
いつ失禁するか分からない状況では、外出は非常にハードルが高いです。
一方で訓練を行えば、問題を改善できる事もあります。
リハビリテーションと言葉では一括りになっていますが、
患者さんのニーズは多岐にわたります。
セラピストは準備が欠かせないなと、改めて感じたケースでした。
おすすめ書籍
■『正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書』(竹井仁 先生)
骨盤底筋と姿勢の関係について、実際の臨床での気づきとつながるような視点が多くあり、記事内でも一部引用させていただいています。
特に骨盤底筋群のどの筋肉がどこに連動しているのか、図を交えて具体的に記載されており、治療の幅を広げたい方には多くの学びがあると感じました。
姿勢や筋連動に興味のある方には、一度目を通してみても良いかもしれません。
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※本記事で紹介した書籍は、筆者の個人的な感想・経験に基づくものであり、すべての方に同様の理解や効果を保証するものではありません。
■『女性の尿もれ・頻尿は骨盤底筋を鍛えて防ぐ!』(関口由紀 先生)
女性の身体的構造に基づいた骨盤底筋群のトレーニングや考え方が、イラスト付きでわかりやすくまとめられています。
フォントも大きめで視覚的にも読みやすく、女性患者さんのケアに携わる方には参考になる点が多い内容です。
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尿失禁の予防には、骨盤底筋だけでなく、姿勢や動作のバランス管理も大切です。
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最後に(免責)
本記事は一般的な情報提供を目的としています。
目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。
患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。
本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。
あらかじめご了承ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
以上、ユウセイでした。

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