肩から指にかけての痛みはなぜ起こる?見逃してはいけない原因を理学療法士が解説【CASE15】

医療者向け
ハナさん
ハナさん

原因は分からないけど、肩から指にかけて痛みがあるのよね

エアコンの風でも、皮膚がピリピリする

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

それは気分が良くないですね。

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

原因の分からない痛み程、気分が悪いものはないでな

一緒に考えていこう!

上肢に疼痛があると、何をするにもストレスや不快感を感じてしまいます。


特に、原因がはっきりしないと不安も大きくなりますよね。


中には、病気に由来する症状で理学療法だけでは対応が難しいケースもあります。

一方で、姿勢や筋の緊張、関節の使い方の見直しによって改善が期待できるケースも少なくありません。


今回は、肩から手指にかけての疼痛に悩む方に対して、理学療法士としてどのような評価・対応ができるのかを解説します。

治療の手順

肩から指にかけて出る痛みの部位と特徴をチェックする

姿勢バランスと肩・腕への負担を評価する

肩から腕にかかる負担を減らすためのアライメント修正

肩から指にかけて出る痛みの部位と特徴をチェックする

ハナさんの症状

右肩〜手指にかけて、掌背側に疼痛の訴えがあります。

局所では無く、掌全体で表すPalmasignが見られます。

姿勢バランスと肩・腕への負担を評価する

ハナさんの姿勢

頭部伸展・頸部屈曲・胸・腰椎後弯、骨盤後傾しています。

重心は右後方に乗っています。

右鎖骨は屈曲・下制、右肩甲骨は外転・下方回旋方向しています。

整形外科テスト

エデンテスト

患側上肢を下垂させ、橈骨動脈の拍動を確認し、肩を後下方に誘導します。

姿勢を起こして、顎を引く事もポイントです。

その姿勢で橈骨動脈の拍動を確認します。

結果、橈骨動脈の拍動が減弱し、疼痛が強まりました。

疼痛の出方と部位から鎖骨下動脈の関与が疑われました。

猫背で右肩甲骨アライメントが崩れる

エデンテスト陽性

鎖骨下動脈絞扼による疼痛の可能性

肩から腕にかかる負担を減らすためのアライメント修正

他動で右上肢を外旋・挙上すると、疼痛が緩和しました。

これは右上肢を外旋・挙上した事で、右肩甲骨上方回旋・内転・後傾が生じ、鎖骨下動脈の絞扼が緩和した為と考えました。

その為上肢を挙上し、肩甲骨上方回旋・内転・後傾に誘導します。

その位置で少しずつ手を離して、上肢が落下しないように保持してもらいます。

保持してもらうことによって僧帽筋中部・下部線維を働かせました。

徐々に挙上角度を挙げ、肩関節挙上90度では僧帽筋中部線維に働きかけます。

120度では僧帽筋下部線維に働きかけます。

猫背により僧帽筋中部・下部線維が相反抑制により弱化している為、無理のない範囲で活動させます。

右上肢を下垂すると、直後は疼痛が10→2〜3ほどに緩和しました。

この方針で効果があると判断しました。

右上肢を外旋・挙上すると疼痛が緩和する

僧帽筋中部・下部線維が機能すると緩和する

自主訓練

右肩甲骨を上方回旋・内転・後傾に誘導し、鎖骨下動脈の絞扼を緩和する事が重要でした。

そこで自宅に支柱型の手すりがある為、把持してもらい、姿勢を起こしながらスクワットをしてもらいました。

棒を把持する位置は肩に疼痛が出ない範囲とし、膝を屈曲させる事で上肢が相対的に挙上できるように配慮しました。

右上肢を随意的に挙上させるよりも代償動作が少なく、肩甲骨の上方回旋・内転・後傾を自身で生み出す事ができます。

訓練後疼痛を確認すると、気にならない状態まで改善したとの事であったため、継続してもらいました。

まとめ

今回は肩〜手指にかけての疼痛に悩む方への対応を解説しました。

治療の手順は、以下の通りです。

治療の手順

肩から指にかけて出る痛みの部位と特徴をチェックする

姿勢バランスと肩・腕への負担を評価する

肩から腕にかかる負担を減らすためのアライメント修正

今回は鎖骨下動脈が絞扼され、上肢に疼痛が生じていました。

しかし肩甲骨アライメントを整える事で症状を、改善させることができました。

原因が分からないと患者さんは不安になります。

原因が分かるだけでも楽になったと言われる方も多いです。

その中で症状が改善できれば、冥利に尽きる話です。

今後も筆者の記事が少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。

おすすめ書籍

今回は鎖骨下動脈が絞扼されたため、上肢に疼痛が生じていました。

しかし、腕神経叢の圧迫や牽引、斜角筋付近での絞扼など、原因はさまざまで、上肢症状の背景には多岐にわたる要因が関与していることがあります。

それらを評価・治療していくうえで、参考になった書籍をご紹介させていただきます。

本書では胸郭出口症候群のみならず、肩の疾患全般に対する評価や治療の考え方がまとめられており、著者が実際に関わったとされる症例へのアプローチも非常に学びが多く感じられました。

臨床での視点を広げたい方や、より深く肩の問題にアプローチしたい方にとって、きっと役立つ一冊だと思います。

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※本記事で紹介した書籍は、筆者の個人的な感想・経験に基づくものです。すべての方にとって同様の理解・効果を保証するものではありません。

腕全体に広がる痛みは、肩のアライメントや筋の過緊張が影響している可能性があります。以下の記事も参考にしてください。

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最後に

この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに、紹介した評価・治療が適応できるか、判断して頂いたうえで、使用して頂ければ幸いです。

患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。

そのため、今回ご紹介した治療は、万人に対して、再現性を担保できるものではありません。

それらを踏まえた上で、参考にして頂ければ幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

以上、ユウセイでした。

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