臥床動作で右大腿外側に鋭利痛|大内転筋と大腿筋膜張筋へのアプローチ実例【CASE35】

医療者向け
タケシさん
タケシさん

痛っ!

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

どうしました?

タケシさん
タケシさん

寝る時に右の太ももが痛いんです。

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

それは困りましたね。

リハビリをしていて、右の大腿に疼痛を訴える!そういった経験をされたことはありませんか?

疼痛は動作を行う上で妨げになることが多いです。
今回は実際の症例で臥床する際に、大腿外側に疼痛が生じた患者さんへの評価とケアをお伝えします。

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タケシさんの既往歴と主訴

・頸髄不全損傷(Brunnstrome stage 両側 上肢Ⅵ 手指Ⅵ 下肢Ⅵ)
・ベッドに横になろうとすると右の太ももが痛い

🔍理学療法評価

症状と動作を確認

端座位からベッドに臥床する際に右大腿外側にピリピリと鋭利痛あり。

右手掌をベッドにつき、右肘、肩と右体幹をベッドにつけ、仰臥位になりながら両下肢をベッドへ引き上げる際に疼痛が生じる。

股関節の可動域を調べる

運動方向
股関節屈曲11070(P)
伸展-55
外転200
内転2520
外旋2530
内旋3020
膝関節屈曲130135
伸展00
足関節背屈510
底屈4540

筋緊張を調べる

触診検査

・右大腿筋膜張筋に圧痛
・左内転筋群緊張亢進
・大内転筋に圧痛あり

・右骨盤前傾
・左骨盤後傾
左右差あり

筋緊張検査(Modified Ashworth Scale)

方向
股関節屈伸11
股関節内外転12
膝関節屈伸11
足関節底背屈00

整形テスト

Ober’s test陽性

姿勢を確認する

体幹
・頭頸部右側屈、右回旋
・右肩甲骨帯下制、左肩甲帯挙上
・右骨盤前傾・下制
・左骨盤後傾・挙上
・骨盤左回旋
・左臀部に体重が偏位

下肢
・右股関節屈曲、内転、内旋
・左股関節屈曲、外転、外旋
・右膝軽度外反位
・左膝軽度内反位
・両足関節底屈位

動作への提案

ベッドで臥床する際に仰臥位ではなく、右側臥位に一度なってもらい、疼痛を確認。
右側臥位でも変わらず右大腿外側に疼痛が生じる。

🧩考察

今回端座位からベッドに臥床する際に右大腿外側に鋭利痛が生じる問題が生じた。
以下に問題点を述べる。
👉
・左股関節を屈曲する際に制限と近位部に疼痛が生じる
・左大内転筋に圧痛・筋緊張の亢進が生じている
・左内転筋群の緊張が亢進し、股関節に外転制限が生じている
・Ober’s testより大腿筋膜張筋の短縮の可能性あり

筋筋膜トリガーポイントとは、通常、骨格筋の緊張帯内に存在する過敏な部位であり、圧迫すると痛みを伴い、特徴的な関連痛、運動機能障害、自律神経症状を引き起こす可能性があります。
Lavelle ED, Lavelle W, Smith HS. Myofascial trigger points. Anesthesiol Clin. 2007 Dec;25(4):841-51.

股関節屈曲・伸展0°位から屈曲方向に動かす時,股関節には屈曲に加えて外転・外旋運動が生じる。さらに屈曲角度が増すほど外転・外旋角度も大きくなる。
建内宏重.股関節〜強調と分散から捉える.ヒューマン・プレス.2020,2-15.

上記の知見から左内転筋群の緊張が高まっていることで、股関節屈曲に伴い生じる外転・外旋の運動(本症例では特に外転)が制限される。

また大内転筋の緊張が高まることで、股関節伸展作用により屈曲が制限されやすい状態になっていると考えられる。

内転筋モーメントアームの対応する数値は、75度まで増加し、その後減少することを示した。
Németh G, Ohlsén H. In vivo moment arm lengths for hip extensor muscles at different angles of hip flexion.
J Biomech. 1985;18(2):129–140.

大内転筋は股関節屈曲75°付近まで伸展モーメントアームが増大するため、屈曲に対する拮抗作用が増強すると考えられる。

また圧痛も生じており、トリガーポイントの形成による影響も、可能性として挙げられた。
上記の問題により左股関節の屈曲制限が生じていると考えられる。

座位姿勢を確認したところ、右骨盤前傾・下制、左骨盤後傾・挙上、骨盤左回旋を確認。


このことから左股関節の屈曲可動域制限を骨盤の後傾・挙上によって補填していると考えられた。さらに相対的に右骨盤は前傾・下制方向に誘導され大腿筋膜張筋が短縮方向に促されると仮説を立てた。

上記の考察をまとめ、ケアするポイントを述べる。
👉
①左大内転筋の緊張を緩和し、左股関節の屈曲を円滑にする。
②左股関節の屈曲制限で骨盤のアライメントが崩れ、右大腿筋膜張筋が短縮傾向と推察。
→右大腿筋膜張筋の筋緊張が亢進し疼痛が生じていると仮説を立てる。

🧩評価・ケアアプローチ

ケアアプローチとして、膝を立てることで股関節を屈曲にして、大内転筋を直接指圧し伸張していく。

そこから筋腹を疼痛が無いように圧しながら外転・外旋方向に誘導。

屈曲位で外転、外旋をすると開始直後は疼痛が生じたため、疼痛のない部分まで広げ、閉じるを繰り返しながら広げる角度を広げていく。
膝がベッドから三横指まで広がったため、そこから股関節の屈曲可動域を拡大させる。
大内転筋の緊張が緩むと左股関節が100°まで可動域が改善し疼痛の訴えが軽減する。

次いでOber’s testで陽性であった右大腿筋膜張筋のストレッチを行う。

前略)筋の伸張性が拡大するまでには10〜20秒必要で、30〜60秒間保持した場合には緊張力における伸張反射の促通効果は小さくなります。

竹井仁.正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書.ナツメ社.2015,91.

ストレッチ後仰臥位で骨盤の前後傾が整う。
その後起き上がり、臥床を繰り返してもらったが痛みがないことを確認する。

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まとめ

今回は、臥床動作の際に右大腿外側にピリピリとした鋭利痛が生じるケースへの評価とアプローチを解説しました。

評価から明らかになった主な問題点は以下の2点です。

① 左大内転筋の緊張亢進・トリガーポイント形成 左内転筋群の緊張が高まることで、股関節屈曲に伴い本来生じるべき外転・外旋運動が制限されていました。また大内転筋は股関節屈曲75°付近まで伸展モーメントアームが増大するため、屈曲そのものも妨げられやすい状態でした。圧痛も確認されており、トリガーポイントの関与も考えられました。

② 右大腿筋膜張筋の短縮 左股関節の屈曲制限を補うために骨盤が後傾・挙上し、相対的に右骨盤が前傾・下制方向へ誘導されることで、右大腿筋膜張筋が短縮傾向となっていると推察されました。Ober’s testでも陽性が確認されました。

アプローチとしては、まず膝立て位での大内転筋への直接指圧と伸張を行い、疼痛のない範囲から股関節外転・外旋を段階的に広げていきました。
左股関節の屈曲可動域が改善した後、右大腿筋膜張筋のストレッチを実施。その結果、骨盤のアライメントが整い、臥床動作での疼痛が消失しました。

大腿外側の痛みの背景には、対側の股関節制限が骨盤アライメントを崩し、同側の筋に負担をかけるという連鎖が隠れていることがあります。
症状のある部位だけでなく、対側や骨盤全体のアライメントを丁寧に評価することが、原因特定と改善への鍵となります。

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最後に(免責)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。

目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。

患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。

本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。

あらかじめご了承ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上、理学療法士 ユウセイでした。

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