
歩いていると、左足のふくらはぎが痛むわ

歩く時に痛みがあるのは辛いですね。

何気ない動きが、痛みの原因となるよ
一緒に評価してみよう
歩行中にふくらはぎの痛みを感じる方は、臨床の場でもよく見られます。
下肢に痛みがあると、無意識のうちに反対側へかばうような歩き方になり、結果的に負担が偏ってしまうことがあります。こうした影響を広げないためにも、どの場面で痛みが出るのかを丁寧に把握することが大切です。
今回は、歩行中にふくらはぎに痛みが出る方を例に、理学療法士としてどのように評価し、どのような視点で対応を検討するか を紹介します。
※個々の症状の原因はさまざまです。記事内容は一例であり、すべての方に当てはまるとは限りません。
ふくらはぎの痛みが出る場所とタイミングを整理する
痛みが出る部位とその特徴を確認する
ハナさんの既往歴

- 黄色靭帯骨化症による左下肢のしびれ
- 腰椎圧迫骨折の経験あり
今回の痛みは 左ふくらはぎ内側(下腿三頭筋 内側頭付近) に生じていました。

- 立ち上がり時に痛みが出る
- 歩行の 左立脚中期〜後期 にかけて痛む
- 圧痛・伸張時痛がある
- いつもの「しびれ」とは違う感覚とのこと
動作(立ち上がり・歩行)で痛みが出る場面を把握する
ふくらはぎは「伸ばされる時」に負担がかかりやすい部位です。
歩行動作では、
- 立脚後期にかけて足が外反方向に動く
- その際に 下腿三頭筋内側頭が急に伸張される
こうした負担が痛みにつながっている可能性があります。
姿勢・歩き方の癖がふくらはぎに与える影響を見る
座位姿勢と足部の状態を評価する
座位姿勢は猫背傾向で、長時間座っていることが多い生活環境でした。
また、左足は以下の特徴がありました。
- 母趾球が浮いている
- 足関節が「内反位」
- 下腿三頭筋の外側頭は伸張され、内側頭は短縮しやすい状態

立ち上がり動作で生じる伸張ストレスの可能性を検討する
日常的に足関節は内反しており、下腿三頭筋内側頭が短縮しています。
この時に距骨下関節も回外しています。
立ち上がり動作を行うと、
母趾球が床に接地していく為、
急激に距骨下関節が回内し足関節は外反します。
この際に下腿三頭筋内側頭に急な伸張刺激が加わり、
痛みが生じたと考えられます。

また痛みのある部位には圧痛・伸張痛も生じていました。
筋攣縮とは筋が痙攣した状態であり,血管の攣縮を伴っていることが多い。関節の周辺組織が何らかの侵害刺激を受けると侵害受容器が反応し,その信号が脊髄内に伝えられる。脊髄反射によって前角細胞のa運動線維に作用し,筋は攣縮を引き起こす。
筋攣縮の評価は伸張痛・圧痛所見・筋緊張・収縮時痛・伸張痛を見ることが重要となると述べています。
赤羽根良和.痛みの理学療法シリーズ 足部・足関節痛のリハビリテーション.羊土社.2020,111-113.
上記の知見から立ち上がりの伸張刺激が攣縮を生じさせ、
歩行中も疼痛が継続した可能性が高いと考えられました。
ふくらはぎの痛みを和らげるために行ったアプローチ
問題点
日常の座位姿勢において、足関節が内反位をとりやすい
→立ち上がりの際に距骨下関節が急激に回内し、下腿三頭筋の攣縮が生じた可能性がある
等尺性収縮を利用したやさしいケア
攣縮が疑われる場合、無理に引き伸ばすより、
等尺性収縮(動かさずに力を入れる運動) が有効なことがあります。
等尺性収縮による腱の軽い牽引刺激は,ゴルジ腱器官を興奮させ,その信号は脊髄反射の抑制性介在ニューロンを介して,筋をリラクセーションさせる。
また反復的な筋収縮は,筋ポンプ作用により筋内の血液循環の改善や発痛物質の排泄を促し,筋内圧が減少して圧痛所見や収縮・伸張に伴う疼痛を軽減・消失させると述べています。
1)赤羽根良和.痛みの理学療法シリーズ 足部・足関節痛のリハビリテーション.羊土社.2020,111-113.
行った内容の一例
前足部を支持し、足を外反方向へ動かそうとする力を、軽く止めてもらいます。
※ここで内反し方向の収縮を促す


その後力を抜いてもらいリラックスしてもらいます。
止めてもらった後に必ず力を緩める時間を設けて、
他動で少しずつ外反角度を増加させます。

外反角度を他動で増加させ、再度軽い力で内反への等尺性収縮を促します。
段階的に外反へと誘導しながら、圧痛・伸張痛がないかを確認します。
痛みが出ない範囲で段階的に繰り返します。
こうしたエクササイズは、筋の緊張を落ち着かせ、循環改善にもつながるため、
徐々に圧痛や伸張時痛がやわらぐこともあります。
痛みが強く出ない範囲で段階的に動きを広げていく
本症例では等尺性収縮にて徐々に痛みが改善してきましたので、
足関節外反方向に一緒に可動してもらいます。
- 自動介助運動
- 自動運動
へと痛みが無ければステップアップしていきます。

本症例では自動運動で疼痛が無い事を確認し、
伸張時痛・圧痛を確認し改善を認めました。
その後立ち上がり・歩行を行っても痛みがないとのことでした。
今回のケースから得られる臨床的な気づき
「普段の症状との違い」を聞く大切さ
黄色靭帯骨化症によるしびれが既往にありましたが、
今回の痛みは「いつものしびれとは違う」という本人の訴えが重要なヒントになりました。
問診で「普段の症状との違い」を丁寧に聞けたことが、評価の方向性を誤らない助けとなりました。
既往歴だけにとらわれず、痛みの背景を幅広く確認する
既往歴があると、つい“その疾患のせい”と決めつけたくなりますが、
実際には姿勢・生活背景・歩き方などさまざまな要素が関係することがあります。
今回も、
- 座位姿勢
- 足部のポジション
- 立ち上がりの伸張刺激
が重なり、下腿三頭筋の攣縮を引き起こしていた可能性がありました。
まとめ|今回の評価〜対応の流れ

最後に、今回の流れを簡潔にまとめます。
- 痛む場所とタイミングを整理し、動作との関連を確認
- 座位姿勢や足部の位置から、痛みの背景を推測
- 立ち上がり動作の伸張ストレスを評価
- 等尺性収縮を用いたアプローチで攣縮を緩和
- 歩行時の痛みの改善を確認
おすすめ書籍
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攣縮のメカニズムや等尺性収縮を用いたアプローチについて、わかりやすく解説されており、臨床の考え方の幅が広がる一冊だと感じました。
筆者個人としては、本書の内容を通じて、これまでの臨床経験と結びつく気づきが多く得られました。
同著者による肩関節の治療に関する書籍も読みごたえがあり、併せて参考になるかと思います。
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※本記事で紹介した書籍は、筆者の個人的な感想・経験に基づくものであり、すべての方に同様の理解や効果を保証するものではありません。
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ふくらはぎの痛みは、筋肉そのものの問題だけでなく、姿勢や下肢全体の使い方が関係していることもあります。
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最後に(免責)
本記事は一般的な情報提供を目的としています。
目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。
患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。
本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。
あらかじめご了承ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
以上、ユウセイでした。

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