こんにちは、ユウセイです。
理学療法士として病院・施設・在宅と関わりを持ち、経験も10年以上になりました。
今はその経験を活かして理学療法士としての治療と考え方を日々発信しています!
立ち上がる時に太ももの前が痛くて立てないの。
太ももの前に痛みがある方って結構いますよね?
そうだね!立つとき太ももの前、膝の皿あたりが痛いっていう悩みは多いと思う。
立ち上がりの際に大体前面、膝蓋骨の上下の部分に疼痛が出る患者さんは多いと思います。
疼痛が改善されるだけで、患者さんのADLは大きく改善することがあります。
今回は大腿の前面に出現する疼痛に対して詳しく解説をしていきます。
立ち上がりを行う前の姿勢に問題があるか確認する
自分がどんな座り方しているのか見たことないわね。
問題のある動作の前後を確認すると、原因が分かることがあります。
今回は立ち上がりの際に問題が生じていますので、座位の姿勢を確認していきます。
胸椎、腰椎が後弯し足趾が伸展し地面から浮いています。
このことから普段から後方重心で、足部に体重を乗せにくく、乗せても後足部に体重が集中しているのでは?と仮説が立ちます。
ハナさんの姿勢
猫背姿勢になっており足趾が浮いている
重心が後方に偏っており足部に体重が乗せにくい傾向にある
問題のある立ち上がりの動作とは
やっぱり立ち上がりの時に太ももの前が痛いね。
だから何回か勢いつけて立たないといけないのよ。
ハナさんやっぱり太ももの前が痛いみたいですね。動作ではどこを見たらいいですか?
猫背のまま立とうとしているのが気になるね。
胸椎、腰椎が後弯していると骨盤が後傾し重心が後ろに残りやすくなります。
そこから立ち上がりを行おうとすると重心が支持基底面に入っていない状況から立ち上がりをおこなう必要があるので、股関節屈曲筋、膝関節伸展筋である大腿直筋に負担がかかりやすくなります。
これが疼痛の原因となります。
二関節筋※であることもこの場合マイナスに働いています。
二関節筋は出力を発揮しやすい傾向にありますが、起始、停止が離れているため、動作の中で関節を安定させるには不向きです。
※関節を二つ以上跨いでいる筋肉のこと。この場合大腿直筋であれば股関節、膝を跨いでいる。
胸椎・腰椎が後弯していると重心が後ろに残るため足部に体重が乗せにくい
足部に十分に体重が乗っていないまま立ち上がりを行うと大腿直筋の負担が増加する
評価を踏まえて必要な治療をする
胸椎後弯を修正する治療を行う
胸腰椎が後弯し、後方重心になっているうことが立ち上がりを困難にし、大腿直筋に過剰な働きが必要になったことで疼痛が出ているのではと仮説が立ちました。
そのため胸腰椎後弯の姿勢を改善していくために胸椎を伸展方向に誘導していきます。以下に2つの治療法を紹介します。
1つ目は患者さんに胸骨柄を触ってもらい、顎を引きながら天井に近づけていきます。
この方法は運動をイメージしやすく、想定していない運動が入りにくいのがメリットです。
2つ目は胸郭を把持して、重量をとりつつ深呼吸を使って伸展方向に誘導していく方法です。
この方法としては息を吸う際に自然に胸椎が伸展してくるため、細かい動作指示が必要ないのが利点です。
その際に胸郭を把持することで胸椎が伸展していく感覚を得やすくなります。無理のない範囲で行いましょう。
胸郭ってたしかに大きいですもんね。ここも固くなると制限になりそうですね。
胸椎を伸展方向に誘導することによって腰椎を生理的前弯に近づけていきます。
胸郭は体幹の部分でも大きな割合を占めています。
その部分を誘導することで身体への負担を軽減しながら伸展方向へと促していきます。
もちろん腰部が誘導する方が良い場合もあります。相手に合わせましょう。
姿勢の修正を終えた後は自身で修正した姿勢を理解できていることを確認しましょう。
こちらが介助をしなくても痛みなく姿勢を修正できればOKです。
ハナさんの場合は胸骨柄を天井に近づける運動が分かりやすいとのことでした。
変形があって伸展が難しい人は痛みがないところまでにしよう。ほんの少し伸展できただけでも効果がある人もいるよ。
胸椎を伸展し前弯させていくことで腰椎の前弯も誘導できることがある
胸骨柄を天井に近づけるもしくは胸郭を把持し呼吸を用いて前弯を誘導する
足底の感覚を養う治療をする
患者さんが姿勢を修正できるようになったら、その姿勢のまま体幹を前傾してもらいます。
この時に改善する前の姿勢に戻る方もいるので注意してください。
前傾できたら、両足に体重が乗っているか確認しましょう。
母趾球、小指球、踵の3点に体重が乗っている感じがしないと言われた場合、立ち上がりで疼痛が出ることがあります。
母趾球、小趾球、踵の感覚を感じてもらうために指やタオルで擦るのも有効です。
相手の皮膚の状態や疼痛等に配慮しておこなってください。
体幹を前傾しながら、その3点で床を押し込んでもらい、押せる感じがすると返事が返ってきたら準備完了です。
3点で押し込んだ時に足趾が浮き上がってないかは確認しておきましょう。
胸椎・腰椎の後弯を緩和できたらその姿勢でお辞儀する
お辞儀した際に母趾球・小趾球・踵に体重が乗ることを感じてもらう
立ち上がり動作を行う上で知っておきたい難易度の調整
姿勢も修正でき、体幹前傾の際に母趾球、小指球、踵に体重がかかる感覚があることを確認できたらいよいよ立ちます。
この時に大事なのは疼痛を出さないことです。
そこで重要なのは両手が使える人はその状態で座面を押して立つことです。
このことにより支持基底面に重心を乗せやすくなります。
初めから膝に手を置いて立ち上がりを行ったりしてしまうと難易度が上がります。
最初はお尻を浮かす程度でもいいです。
お尻を浮かしても大丈夫と思ってもらえるようにしていきましょう。
近くに支持物を置いて膝を伸ばしていくとより優しいですね。
そのうち疼痛がないと分かると、勢いがつき手で押さなくとも立てるようになる方もいます。
ハナさんの場合は母趾球・小趾球・踵に体重が乗る感覚と踏み込む感覚を感じとれたため、その状態で少しお尻を浮かす程度から訓練を行いました。
その際に両上肢を用いて足部に重心を乗せて立つ感覚を促していきました。
胸腰椎の後弯は緩和していたので大腿直筋の疼痛も生じず、自信がついていきました。
自主訓練として胸骨柄を天井に近づけるようにする体操を行ってもらい、1週間後疼痛の改善を確認しました。
椅子を押して立つといいで〜
椅子を押していいの?それなら怖くないね。
まとめ
今回は立ち上がりの際に太ももに疼痛が生じてしまう患者さんの治療に関して詳しく説明しました。
治療の手順は以下の通りになります。
胸腰椎が後弯している患者さんは重心を前方に移動することが困難となる患者さんが多いです。
そのため胸椎を伸展方向に少しでも誘導し前弯を出せると結果が出る場合があります。
座位の時点で足趾が浮いている場合は、普段から前足部に重心が乗っていない可能性があります。
姿勢を修正できた後は両手で立ち上がりをサポートしたり、支持物を使ってみると難易度が調整できます。
最初は臀部を浮かせるのみに留めて、疼痛が出ないかを確認することも患者さんへの配慮になりますよ。
最後に
この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに紹介した評価・治療が適応できるか判断していただいた上で使用して頂ければ幸いです。
患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。
そのため、今回ご紹介した治療は万人に対して、再現性を担保できるものではありません。
それらを踏まえた上で参考にして頂ければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
以上、ユウセイでした。
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