こんにちは、ユウセイです。
理学療法士として病院・施設・在宅と関わりを持ち、経験も10年以上になりました。
今はその経験を活かして理学療法士としての治療と考え方を日々発信しています!
正座をしようとすると太ももの前がピリッと痛むんです。なぜでしょうか。
正座ですか、、正直むずかしいかもしれませんね。
確かに難しいでな。
大きく膝の可動域を求められる動作だし、でも知識と確認するポイントを知っていれば患者さんの助けになることができるで。
ほんとですか!
正座動作は、膝関節の可動域を大きく求められる動作になります。
そのため動作実現には難易度が高い場合が多いです。
しかし、生活の中で正座が求められる事は少なくありません。
そのため正座の治療に関して、知識、技術を身に付けると臨床で非常に役に立ちます。
今回は正座動作の治療を詳しく解説します。
正座を行う為に必要な評価を確認する
触診と可動域の確認を行う
仰臥位で膝の屈曲可動域に制限が生じていないか確認します。
制限があれば正座は難しいでしょう。
触診を行い、圧痛がないかを確認しましょう。
圧痛があれば攣縮により、適切に筋肉が収縮できていないのかもしれません。
ハナさん 評価
膝関節屈曲可動域
140°※下腿外旋傾向、最終域で抵抗感があり、大腿前面に疼痛あり
触診
大腿二頭筋、半膜様筋に圧痛あり
最後の方まで曲げると太ももの前が痛いね。
大腿直筋が短縮しているかもしれません。
踵もお尻につかないし。ストレッチが良いと思うのですが。
確かに大腿直筋の短縮テストをすれば陽性になるかもしれん。
でも筋肉の短縮で陽性なのか、関節の動きが阻害されて陽性なのかは別だで。
正座をするとなると踵が臀部につくことが必要となります。
しかしその動作が難しいと二関節筋である大腿直筋の短縮がイメージしやすいかもしれません。
しかし膝関節が曲がらないのは筋肉の短縮なのか、関節の動きが円滑ではないからなのか見極める必要があります。
膝を屈曲する際に下腿が外旋に誘導される
膝関節140付近で大腿前面に疼痛あり
大腿二頭筋・半膜様筋に圧痛あり
下腿の動きは適切なのか評価する
ここでポイント!
下腿は膝が曲がっていくと、どうなっていくことが多いとされる?
え、まっすぐ曲がっていくんじゃないんですか?
基本的には内旋していくとされている。特に屈曲角度が増すとそうなりやすいよ。
宇都宮らは脛骨大腿関節においては屈曲初期のみならず、90°を超えて角度が増すにつれ、脛骨が内旋すると述べている¹⁾
引用文献
1)宇都宮初夫.SJF関節ファシリテーション.第2版,丸善出版株式会社,2017,124.
上記の内容の通り膝関節が屈曲していく際には下腿は内旋していきます。
どの程度内旋するかに関しては個人差がありますが、知っておくと非常に有用です。
膝を屈曲していく時に、徐々に下腿の内旋を増やしたりしてみて抵抗感が軽減したり、疼痛が軽減する反応を得られることがあります。
その際は筋肉の短縮が原因ではなく、関節の運動軌跡が違っていたから疼痛が出たということになります。
しかし内旋を誘導するときは微弱な力で誘導する印象ですので、セラピストの手に力が入っていると下腿が動いているのか全く分かりません。(筆者談)
この感覚を身につけるのに一朝一夕ではありませんでしたが、感じられると大きな助けになります。
内旋角度は個人差がある。
左右差を確認して健側がどの程度内旋するか確認しよう。
膝が屈曲していく際には脛骨が内旋していく
可動域制限には筋短縮以外にも運動の軌跡にズレが生じることで起きることもある
評価をもとに必要な治療を行う
ハナさんは膝を曲げる際に下腿が外旋してた。
反対側の下腿と比較しても内旋の動きが足りなかったで。
膝を屈曲していく際に下腿を徐々に内旋方向に誘導していきます。
最初から内旋方向に強い誘導をかけず、可動していく中で内旋方向の動きをサポートしていきます。
途中で抵抗感や外旋方向への動作が入ってきてしまう場合は必要な後方移動、内旋の可動域が足りない可能性があります。
最初から脛骨が後方に移動しすぎている場合もありますので、前方移動も確認、治療する場合があります。
制限が出たところで軽くモビライゼーションをして一度膝を伸展し、また元の角度まで戻すを繰り返しましょう。
ここで伸展せず屈曲し続けてしまうと膝の疼痛を生じさせる場合があります。
拘縮の原因となる軟部組織、筋肉は伸張と弛緩を繰り返すことで柔軟性を取り戻しましょう。
脛骨を内旋させながら膝を屈曲する際に抵抗感や下腿が外旋しないか確認する
脛骨の内旋・後方移動が困難になっている場合はモビライゼーションが必要なこともある
モビライゼーションは伸張と弛緩を繰り返す事が重要
膝の屈曲をして膝を伸展した際に膝の周囲に疼痛が出る場合は、運動軌跡に沿って運動できておらず、そのまま屈曲させすぎてしまった可能性があります。
患者さんに負担のない範囲で可動訓練を行いましょう。
疼痛に配慮して他動での可動域訓練を行い可動域を拡大していきます。
拡大した後は必ず自動介助・自動運動に切り替えて可動域を再獲得していきましょう。
この患者さんは内旋方向に誘導しながら膝を屈曲していくことで徐々に可動域の改善を図ることができました。
他動で可動域を改善した後は獲得した可動域の範囲まで可能な限り自動介助運動・自動運動をすることで不安定感・疼痛を予防することが期待できる
正座に必要な動作を共有する
仰臥位での可動域を確保する
ハナさん評価 (1ヶ月後)
膝関節屈曲可動域
140°※下腿外旋傾向、最終域で抵抗感があり、大腿前面に疼痛あり
→165°※下腿の外旋傾向軽減、最終域の抵抗感軽減、疼痛改善
触診
大腿二頭筋、半膜様筋に圧痛あり
→大腿二頭筋、半膜様筋の圧痛消失
仰臥位では膝を深屈曲しても疼痛が出現しないが、正座をしようとすると膝前面に疼痛が生じる
仰向けで寝ている時に膝を曲げられても痛くないね。
でも正座をしようとするとやっぱり痛いわね。
1ヶ月後では仰臥位での膝関節の可動域は165°まで改善し、下腿の外旋傾向軽減、最終域の抵抗感軽減、疼痛改善しました。
触診による圧痛も改善しています。
関節の運動軌跡が適切でないと関節がスムーズに動くことが出来ません。
噛み合っていない関節に無理やり外力を加えて屈曲させても痛める可能性があります。
運動軌跡を修正してからストレッチを選択しても遅くはありません。
まず仰臥位で疼痛の生じない屈曲可動域の獲得を目指します。
この患者さんでは仰臥位での可動域・疼痛は改善しましたが、正座動作になると膝の前面疼痛が生じていました。
そのため膝関節ではなく正座動作に着目していきます。
仰臥位での膝関節可動域訓練にて疼痛が改善する
正座動作になると疼痛が出現するため、動作に問題がある可能性があると推察
次は体重が乗っていく動作だから仰臥位と状況が違うでな。
動作を確認して原因を突き詰めていこうで。
骨盤を後傾していないか動作確認する
ハナさんの正座動作
動作を確認すると骨盤が後傾したまま正座をしています。
大腿直筋の大腿直筋の起始停止は下前腸骨棘から膝蓋腱です。
この動作では大腿直筋の起始と停止が離れるように伸張される動作となっています。
更に体重がかかってくるためその負担もコントロールしなければなりません。
収縮の形態としては遠心性収縮になりますが、一番負担のかかる筋肉の形態となります。
そのため大腿の前面に疼痛が出ていると考えられます。
骨盤が後傾していることが日常的になっているとハムストリングスは短縮位へと促されてしまうため、収縮と弛緩を行うタイミングが減少してしまい、圧痛が生じていた可能性があると推察できました。
正座動作の際に骨盤が後傾している
大腿直筋の過収縮・伸張によって大腿前面に疼痛が生じていると考えられる
日常的に骨盤が後傾するとハムストリングスは短縮し、循環の低下が生じる為圧痛が生じる
大腿直筋が原因の場合、膝の皿の下が痛いって言われることも多いで。
骨盤の可動訓練を行う
正座を行う際に骨盤が後傾していることが疼痛の原因であると仮説が立ちました。
そのため骨盤の前後傾訓練を立膝で行います。
座位、四つ這いで行うのも良いですが、最終的には動作に近いところで動かせないと疼痛に繋がります。
支持物を使いながら出来るだけ、問題の動作に近い姿勢で訓練をします。
だけど後傾がうまく入らない場合はおへそを引き上げてと伝えるてみて。もしくは最初は介助してもいいかも。
おへそをテーブルに近づけながら正座をすることで骨盤を前傾方向に誘導することが出来ます。
後傾する場合はおへそを引き上げてと伝えることで理解してもらいます。
この治療のポイントは骨盤を前傾し、大腿直筋にゆとりをもたせることです。
最初は十分な座布団やクッションなどを用いて行うと良いでしょう。
疼痛がなければ徐々に膝に挟むものを減らします。
患者さんにもおへそをテーブルに近づけながら正座をするように伝えます。
目的としている動作に近い姿勢で訓練を行い、難易度を調整する
おへそを意識してもらい骨盤を前傾させ大腿直筋の過収縮・過伸張を緩和する
テーブル・座布団などを用いて膝関節の負担を考慮する
ピリッとしなくなったし、お正月に正座で年を越せたわ。ありがとう。
まとめ
今回は正座の際に太ももの前面に疼痛がでる患者さんの対応を解説しました。
治療の運びとしては以下の流れになります。
仰臥位で膝を屈曲してもらう際に下腿が外旋してしまっていないか確認しましょう。
外旋してしまうとセラピストとしては詰まったような感覚の制限を感じたり、疼痛が生じやすくなります。
膝を屈曲する際には少しずつ優しく内旋方向に誘導しながら可動域を増やしましょう。
この患者さんでは内旋誘導中、疼痛がなかったため組織の拘縮が軽度の方でした。
内旋方向に誘導しながら屈曲する際に疼痛が生じる場合、拘縮が強くモビライゼーションが必要な患者さんもいますので注意してください。
正座動作をする際には必ず座布団やクッションを挟みつつ、評価を行いましょう。
その際に可動域は十分にあるはずなのに、疼痛が出る場合は骨盤が後傾している事が原因として挙げられるので確認してみてください。
以上、ユウセイでした!
オススメ書籍
今回は関節には適切な運動の軌跡があることをお伝えしましたが、この運動軌跡から外れることによって可動域の制限、疼痛につながることが多々あります。
そのため各関節の運動軌跡を知っておくことによって、治療の幅を増やし、可動域を拡大させる際のリスクを軽減させて施術することが出来ます。
以下に紹介する著書は、各関節の運動軌跡が角度によって、どのように動いていくのか詳しく解説して頂けています。
今回は引用文献として脛骨大腿関節の運動軌跡を紹介させていただきましたが、著書にはもっと細かく解説されております。
またその他の関節に関しても詳しく解説されたうえで評価・治療内容も記載して頂いています。
関節可動域の改善を図るうえで、非常に重要な知識を伝えて頂ける良書となっています。
関節の疼痛、拘縮の症例で悩んでいる先生方・学生の方はもちろん、今一度関節の動きを詳しく理解したい方にも是非オススメする一冊です。
最後に
この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに紹介した評価・治療が適応できるか判断していただいた上で使用して頂ければ幸いです。
患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。
そのため、今回ご紹介した治療は万人に対して、再現性を担保できるものではありません。
それらを踏まえた上で参考にして頂ければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
以上、ユウセイでした。
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