
あたた、、
お皿を洗うと、腰が痛いわ

前に屈む動作で腰痛が出ているんですね

毎日することだから、腰痛があると辛いね
掃除・洗濯・料理など、日常生活では前かがみになる場面が多くあります。
その中で腰痛が出てしまうと、家事そのものが大きな負担になってしまいます。
今回は、お皿を洗うために前かがみになった際に腰痛が生じたケースについて、理学療法士の視点から評価の考え方と対応の工夫を解説します。
お皿洗いで腰痛が出る原因を整理する
腰痛が出る場面と疼痛の特徴
ハナさんの訴えは、
- 立位で体幹を前傾したときに腰痛が出現
- 疼痛部位は腰椎棘突起から右側へ約2横指
- 手掌で触れるような、やや広い範囲の痛み(palma sign)
という特徴がありました。

日常姿勢からみる腰部への負担
姿勢を確認すると、
- 日常的に猫背姿勢
- 座位では胸椎・腰椎後弯、骨盤後傾
- 前かがみ動作時も同様のアライメント
が認められました。



姿勢を見ると、猫背になってますね

これだと腰に負担が掛かりそう
長期間の猫背姿勢は腰椎・椎間板・筋・靭帯に負担がかかりやすくなります。
また体幹前傾の際にも胸•腰椎後弯、骨盤後傾しています。
その為腰部を支える伸展筋は、起始と停止が離れた状態で支える事になり負担が増加します。
腰部以外に注目した評価の視点
股関節の可動域制限が動作に与える影響
腰部だけでなく、周囲の関節にも注目して評価を進めました。
右股関節には屈曲制限があり、
- 股関節を十分に曲げられない
- その分、体幹前傾時に腰椎の動きが大きくなる
という状況が考えられました。

体幹筋(腹直筋・腹横筋)の働きと姿勢制御
背臥位で両膝を立てた姿勢を確認すると、
本来腰椎が後弯しやすいのですが前弯していました。

これは、
- 腹直筋・腹横筋の活動が低下
- 腹圧を使った体幹安定が得られにくい
状態を示唆します。
背臥位で股関節屈曲させる時は、特に腹直筋が働くことが重要です。
腹直筋が働くことで股関節屈曲を行う土台が形成され、股関節の屈曲を行うことが出来ます。
Neumann DAらは腹直筋による十分な固定なしでは、股関節屈曲筋群の効率が悪く、骨盤は前傾する。過度の骨盤前傾は腰椎前彎を増強する
Neumann DA.筋骨格系のキネシオロジー.原著第2版,嶋田智明ほか(監訳),医歯薬出版,2012,534
体幹筋が十分に働かないと、前かがみ動作時の負担を腰椎周囲で受け止めやすくなります。
前かがみ動作で腰に負担がかかるメカニズム
股関節屈曲制限
ハナさんの場合、
右股関節屈曲制限により体幹前傾の際に、
下位胸椎•腰椎屈曲を過大にする必要があります。
胸腰椎の屈曲が過剰になると、
脊柱後方の結合組織が伸張され、椎間板に対する応力が強まります。
上記の理由から股関節の屈曲制限が、
腰椎・靭帯に対しての負荷を強めていると考えられました。

背臥位で膝を立てた際に腰椎が前弯する

またハナさんの場合背臥位で膝を立てても、腰椎前弯していました。
そのため腹直筋・腹横筋が活動が難しくなっていると考えられました。
腰椎骨盤リズムと剪断ストレス
通常、体幹前屈では
- 腰椎の屈曲
- 骨盤前傾(股関節屈曲)
が協調して起こります。(腰椎骨盤リズム)
三木らは立位で体幹を前屈する際には腰椎屈曲と骨盤前傾(股関節屈曲)が生じる
三木貴弘.痛みの理学療法シリーズ 非特異的腰痛のリハビリテーション.赤坂清和・竹林庸雄(監修),羊土社,2018,P29.
しかし股関節屈曲制限があると、腰椎の動きに依存せざる負えなくなり、
腰椎・椎間板・靭帯への剪断ストレスが増加します。
その際に腹直筋・腹横筋が活動し、腹圧を高めることによって、
腰椎剪断力を緩和することが求められます。
しかしハナさんは腹直筋・腹横筋の筋力低下により、
腰椎の剪断力を緩和できません。
重ねて体幹が前傾する際に、
脊柱起立筋のよるFlexion Relaxation Phenomenon※により、
腰椎・靭帯に支持が切り替わるとされています。
※Floyd,Sliver(1955)らが提唱したFlexion Relaxation Phenomenon(以下FRP)は体幹屈曲40〜70°の範囲で見られる脊柱起立筋の筋活動が急激に減少する現象のこと。両者はFRPが生じている際に後部脊柱靭帯などに大きく支持性・安定性を依存すると提唱している。
上記の理由で腰椎・椎間板・靭帯等に負荷がかかっていると仮説を立てました。
問題点に対するリハビリアプローチ
問題点
腹直筋・腹横筋の筋力低下が生じている
右股関節の屈曲制限が生じている
腹直筋・腹横筋の活動を引き出す介入
背臥位で膝を立て、セラピストの前腕で踵へと圧を加えます。
踵に感覚を入れハナさんが踵を支点にして、動作を行えるように準備をします。

踵に圧を加え続けながら、腰の下に手を当て、
「手を潰すように押してください」
と伝えることで、腹部の収縮を引き出します。

徐々に踵に圧を加えずに両手を腰部にあてがい、
潰してもらう事で腹直筋・腹横筋の活動を高め腰椎後弯・骨盤後傾へと促しました。
右股関節の可動域を改善するリハビリ介入
右股関節屈曲可動域へのアプローチ
股関節屈曲時には、
- 外転・外旋方向を伴う動き
- 疼痛の出ない範囲での可動
を意識しながら可動域の改善を図りました。
股関節屈曲・伸展0°位から屈曲方向に動かす時,股関節には屈曲に加えて外転・外旋運動が生じる。さらに屈曲角度が増すほど外転・外旋角度も大きくなる。
建内宏重.股関節〜強調と分散から捉える.ヒューマン・プレス.2020,2-15.
股関節を正中位のまま屈曲させると、
大腿骨頸部と寛骨臼がインピンジメントしやすくなるため注意しました。

関節に軽い圧を加えながら動かすことで、動かしやすさが得られる場合もあります。
その後可動域制限が生じたところで、大転子から寛骨臼に向けて軽く圧迫します。
McCutchen(1962)らは荷重を受けた軟骨から、液体が軟骨表面に浸み出しこれが流体滑潤に寄与するという滲出滑潤の考え方を提唱しています。
関節面を近づけるか圧迫すると,関節の動きは通常よりも軽くなる
宇都宮初夫.SJF関節ファシリテーション.第2版,丸善出版株式会社,2017,23-28.
上記の知見から…
大転子を圧迫し、大腿骨頭と寛骨臼の関節面を接近させ、軟骨に荷重を与えていきます。
そこで内部の液体を浸出させることで、
この液体が潤滑剤となり、摩擦が軽減するため最終可動域が改善する事があります。

動作確認と生活への応用
立位でのお皿洗い動作の再確認
介入後、実際に立位で前かがみ動作を確認すると、
- 腰痛の出現は認められませんでした
無理に姿勢を正すのではなく、
「股関節を使って前に倒れる」
感覚を共有しました。
日常生活で意識したいポイント
- 腰だけに原因を求めすぎない
- 股関節・体幹の使い方にも目を向ける
- 動作と姿勢をセットで考える
ことが重要です。
まとめ|前かがみ腰痛をどう捉えるか

- 前かがみ動作で腰痛が出現していたが、座位姿勢では胸腰椎後弯・骨盤後傾が目立っていた
- 評価の結果、右股関節屈曲制限と腹直筋・腹横筋の活動低下が確認された
- 股関節が使えず、体幹前傾時に腰椎へ負担が集中していたと考えられた
- 腹部筋の促通と股関節屈曲可動域の改善を段階的に実施した
- 股関節主導の前かがみ動作が可能となり、洗い物動作での腰痛は消失した
今回のケースから得られた評価の視点
- 前かがみ腰痛は腰部以外の影響を受けることがある
- 股関節の可動域や体幹筋の働きが重要
臨床や生活指導に活かすヒント
腰痛の原因は一つとは限りません。
日常の姿勢や動作の積み重ねが影響しているケースも多く見られます。
今回の内容が、評価や対応を考える際の一つの視点として参考になれば幸いです。
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最後に(免責)
本記事は一般的な情報提供を目的としています。
目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。
患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。
本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。
あらかじめご了承ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
以上、ユウセイでした。

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