
うーん

どうかしましたか?

毎日太ももの内側が、痙攣して、夜眠れないんだ

夜眠れないのは問題だね
しっかり評価してみよう
睡眠は、私たちの健康を維持するうえで非常に重要な時間です。
しかし、夜間に足がつったり、痙攣が起きて目が覚めてしまうと、睡眠の質が下がり、倦怠感や疼痛、めまいなどさまざまな不調が生じることもあります。
状況によっては、寝不足によるふらつきや転倒のリスクにもつながりかねません。
今回は、睡眠中に大腿の内側に痙攣が起こり、眠れなくなってしまったケースについて、理学療法士の視点から原因と対応策を解説します。
太ももに起こる痙攣の部位と特徴をチェックする
寝ているときの姿勢と筋緊張の関係を確認する
太ももの筋緊張を緩和するためのアプローチ
太ももに起こる痙攣の部位と特徴をチェックする
タケシさんの既往歴
脊髄不全損傷(頸椎)
上肢下肢ともにしびれが生じている
ブルンストロームステージ(両側ともに上肢Ⅳ 下肢Ⅳ 手指Ⅴ)
痙攣は右股関節内側部に生じます。
左右の内転筋の筋緊張に明らかに差があり、触ると圧痛があります

痙攣は多い時は、夜間4~5回生じています。
こむら返りに似た症状が生じています。
寝ているときの姿勢と筋緊張の関係を確認する
背臥位
背臥位を確認すると、腰椎前弯、腰背部の筋緊張が増加しています。

腰椎前弯の為、腹直筋の収縮を得られにくくなっています。
腹直筋は剣状突起〜恥骨結合に付着しています。
日常的に腰椎前弯すると骨盤が常に前傾し、筋肉が伸張されます。
竹井らは筋は引き伸ばされるほどアクチンフィラメントに接するミオシンフィラメントの頭部の数が少なくなり発揮できる筋力が弱くなってしまうと述べています。¹)
上記の知見から腹直筋に筋力低下が生じ、筋緊張が低下すると考えます。
更に腰椎の前弯・骨盤の前傾が強まると腹直筋の筋緊張低下とともに大殿筋・中殿筋の筋緊張低下が生じてしまいます。²,³)
この姿勢パターンによって緊張が低下した大殿筋・中殿筋に対して大腿筋膜張筋・内転筋群は筋緊張が亢進すると考えられています。 ³)
腰背部の緊張が亢進し、腰椎前弯・骨盤前傾が強まる事で、内転筋群の筋緊張が亢進し痙攣したと考えられます。
常時筋緊張が亢進する為、循環の悪化に繋がり圧痛も生じたと考えます。
引用文献
1)竹井仁.正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書.ナツメ社.2015,82-100.
2)Phil page・Clare C.Frank・Robert Lardner.ヤンダアプローチ マッスルインバランスに対する評価と治療.小倉秀子(監訳) 三輪書店.2020,P45-59.
3)Philipp Richter・Eric Hebgen.手技療法とオステオパシーにおけるトリガーポイントと筋肉連鎖.森岡望(監修)産調出版株式会社.2009,P67-71.
腹直筋の筋力低下が生じ、大殿筋・中殿筋の筋緊張が低下
大殿筋・中殿筋の緊張を代償する為、内転筋群緊張亢進
内転筋群の緊張が亢進し、痙攣が出現
太ももの筋緊張を緩和するためのアプローチ
内転筋群の痙攣が、骨盤前傾・腰椎前弯から生じている仮説が立ちました。
そこで骨盤後傾、腰椎後弯を生み出す必要があります。
もし背臥位で膝を立てる事ができれば、腰部に対し効果的なストレッチになります。
タケシさんは膝を立てる際、自力で保持は困難でした。
その為介助しつつ、膝から踵へ圧を加えます。

タケシさんは踵に圧力を感じられた為、圧をセラピストの腕でキープします。
キープしたまま、もう一方の手で腰の下に手を当てがいます。
タケシさんの腰部で、セラピストの手を潰してもらいます。
その動作により腰椎後弯、骨盤後傾に誘導できます。

更に下腹部に収縮が感じられればより良いです。
タケシさんは下腹部の収縮を、感じることができました。
場合によっては踵の固定にセラピストの両手が必要で、手を腰部に当てがう事ができない事があります。
その際は患者さんの手を、腰に当てがってもらいます。
もしくはベッドを腰で潰してもらってもいいです。
疼痛が出ないやり方で修正していきます。
下腹部に収縮を入れる事に慣れてきた場合は、その収縮を保持しお尻を少し持ち上げます。
これにより大殿筋・中殿筋を働かせます。

大きく持ち上げ過ぎると、腰椎前弯する場合があります。
必ず骨盤後傾し、腰椎後弯する事を確認して少し浮かせるようにします。
それだけで充分力が入ります。
続いて左側臥位で、右股関節を開くように運動(以下クラム)し、殿筋群の促通を行います。
建内らは大腿筋膜張筋に対して殿筋群の活動を高めたい場合はクラムや股関節伸展・外旋運動などが効果的であると述べています。⁴⁾
クラムにより相反抑制による、内転筋群の緊張緩和を期待しました。

訓練中呼吸を止めないようにします。
タケシさんは両訓練共に、数回で辛いとの発言がありました。
そのため初回は5回で終了としました。
腰椎後弯、骨盤後傾に働かせる
腹圧を高めて殿筋を働かせる
側臥位で内転筋群の緊張を緩和する
1週間後再度訪問し、痙攣の数が減ったと喜んでもらえました。
しかし夜間に一回痙攣が生じる日もあったとの事で、訓練を継続していく予定です。
引用文献
4)建内宏重.股関節〜強調と分散から捉える.ヒューマン・プレス.2020,78-80.
まとめ

今回は股関節内転筋群の過緊張による痙攣で、夜眠れない方に対しての対応を解説しました。
治療の流れとしては、以下の通りになります。
腰椎前弯・骨盤前傾によって、腰部ではなく股関節症状が出現する事もあります。
おすすめ書籍
今回痙攣の原因を突き止め、仮説を立てることができたのは、この本のおかげといってもいいくらいでしたのでご紹介いたします。
以前から気にはなっていましたが、思い切って購入しました。
読み進めると今まで漠然と臨床で感じていた感覚が、すっきりと整理されていくような印象を受けました。
引用に用いましたが筋肉間の交差性の関係については、ぜひ一読していただければと感じています。
まだ読んだことが無い方に関しては、ぜひともおすすめできる1冊です。
夜間の筋痙攣や体のこわばりは、日常の姿勢や筋緊張にも影響を受けています。
もし似たような症状や違和感を感じる場合は、こちらの記事も参考にしてみてください!
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最後に
この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに、紹介した評価・治療が適応できるか、判断して頂いたうえで、使用して頂ければ幸いです。
患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。
そのため、今回ご紹介した治療は、万人に対して、再現性を担保できるものではありません。
それらを踏まえた上で、参考にして頂ければ幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
以上、ユウセイでした。

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