こんにちは、ユウセイです。
理学療法士として病院・施設・在宅と関わりを持ち、経験も10年以上になりました。
今はその経験を活かして理学療法士としての治療と考え方を日々発信しています!
退院したんですけど起き上がる時腰が痛いです。
どうしたらいいでしょうか。
起き上がりが辛い人多いですよね。
起き上がりが辛そう、もしくは問題があると感じた患者さんは結構経験したなー。
起き上がり動作が生活の基本となります。
起き上がりができなければベッド上での生活を余儀なくされてしまうでしょう。
起き上がりは患者さんの生活の質を大きく改善するチャンスを秘めています。
今日は起き上がりが辛い患者さんに対して、起居動作の知識と福祉用具の助力を得て治療を行った一例を詳しく解説します。
患者さんの背景と起き上がり動作を確認しよう
腰椎の圧迫骨折の既往あり
腰椎が右側弯変形
右側から起き上がりを行うと右腰部に疼痛が出現する
ハナさんの起き上がり
電動ベッドを使用しており、ベッドにとりつける介助バーを把持しながら起き上がりを行う。
右側寝返りからonelbowまで
柵を用いて両上肢で引き付けるようにonelbowまで移行させています。
自力で体幹を回旋、屈曲させて起き上がりが難しいため上肢の機能を使用しています。
onelbowからonhandまで
またonhandに移行する際には左上肢で柵を引き付けるようにしながら行います。
しかし腰椎の右側弯があるため、体幹が普段から伸張していないことに加え、体幹機能の筋力低下により右腰部に疼痛が強く生じます。
座位になった後でも疼痛が継続することがあります。
右側寝返りからonelbowでは両上肢で柵を把持し、引き付けるように行う
onelbowからonhandでも同様に柵を把持して実施するが右腰部に疼痛が生じる
腰痛に寝返りが関与していないか確認する
起き上がりを確認しましたが、問題のある前後の動作を確認することも重要です。
この患者さんは寝返りでも疼痛が生じています。
寝返りを評価することで腰痛の原因を絞り込むことが出来ます。
ハナさんの寝返り方法
ハナさんが寝返る際にはでベッドを蹴るタイプの寝返り方法です。
腹部の筋肉を働き腹圧を高めた状態で、寝返りを行うことが出来る場合もは問題が起きにくいです。
しかし腹圧が低下しており、腰部の筋肉が過剰に働いてしまう患者さんでは腰椎が伸展する傾向があります。
更に腰部の筋肉で体幹の回旋を起こそうとしてしまうため、腰痛が出やすくなります。
ハナさんの場合は頭頸部の屈曲が苦手であり、腹圧低下していたため疼痛が生じていたと考えられます。
この場合、臥位の姿勢や寝返りで日々負担が蓄積しています。
そのため寝返りが良くなると起き上がりが良くなる患者さんは多いです。
出来るなら腹部の力で寝返りができるように訓練を提案していきましょう。
寝返りも腰痛の原因になっているのね。
寝返りをする際にベッドを蹴って実施しており、腰痛が生じている
頭頸部の屈曲が出ていないため、腹圧が入りにくい特徴がある
電動ベッドの有用性
起き上がりを行う際に必要な身体機能が不足している場合などには、電動ベッドの機能は大きな助けとなります。
退院後起き上がりで難渋している患者さんも少なくありません。
その場合に寝返りのリハビリと並行して、電動ベッドを使用することによって腰部の負担を軽減することが出来ます。
無理したらいけないのは分かってるんだけど、家事は私の仕事!って感じがしてしまって。
起きる時に腰が痛くなってしまうのは分かってるんだけど我慢出来ないのよね。
生活していて起き上がりを行わない訳にはいかない場合もありますよね。
本当にその通りだよ。
腰痛のある患者さんは電動ベッドの背上げ機能を上手に使おう。
電動ベッドの仕組みを理解して、起き上がりに応用する
電動ベットの落とし穴
側臥位になれたら足を下ろして背上げ機能を用いてベッドを挙上します。
ハナさんには必要ありませんでしたが、後ろに体が倒れたり、捻れやすくなりますので背中にクッションや掛け布団を丸めて挟むのも効果的です。角度は本人が不安に思わない程度にしましょう。
注意したいのは起き上がりを行う際に体が下にずっていることがあります。
ベッドにも曲がる関節があります。そこを確認した上で徐々に角度を増やしていきます。
その状態で行うと股関節ではなく、腹部、肋骨部位から左側屈に誘導されることになり、左側腹部に負担をかけるので注意します。
背上げ機能を使うと身体が否応なく下にずれてくるから見越しておこう。
電動ベッドでヘッドアップ機能を使用する時はどこから曲がるか確認する
患者さんによっては下に身体がずれている場合があり、注意が必要
患者さんと介助者を守る介助シート
ベッドの上方に上がるときはスライディングシート使ってあげてな。
腰痛の患者さんに喜んでもらえるし、痛みを出さないセラピストは信頼されるで。
セラピストの腰も守ってくれますし、いい事づくしですね。
日常で介助者がいない場合は、できるだけ座位の時に枕側に寄ってから寝るといいで。
起き上がるときに腰痛を軽減するワンポイント
腰椎が右側弯している為右側臥位は右腰部の筋肉が伸張位になりやすくなります。
フラットの角度から起きるのではなくベッドに支えてもらいながら起きてもらいましょう。
背上げした後、枕から頭を離して起きる時にベッドを下に押すようにしながら起き上がりを行うと腹圧が高まって腰痛が軽減する場合もあります。
この患者さんの場合は2ヶ月かけて寝返りの際の下肢で蹴るパターンを修正し、電動ベッドを用いての起き上がりを行うことによって疼痛が改善していきました。
またonelbow~onhandの際にも左手でベッドを押しながら起き上がりを行う動作も腹圧が高まり腰痛を緩和できました。
現在では30°ヘッドアップした後に当初ほど両上肢で柵を引き付ける動作も見られず、腰痛なく起き上がりを行うことができています。
寝返り動作の改善により日々の腰部の負担が軽減し、腹圧を自力で高められるようになったことで腰痛なく起き上がりを行うことが出来るようになったと考えられます。
必要であれば反対側から起きるのも有効ですね。
電動ベッドを利用すると身体を起こす範囲が少なくなるため難易度の調整に便利
上側の上肢を用いて腹圧を高めながら起き上がりを行うと疼痛が改善することも多い
まとめ
今回は腰痛を悪化させずに福祉用具を使用してリハビリを行っていく方法を中心に解説しました。
治療の手順としては以下の通りになります。
今回の患者さんのように寝返りから腰部に負担をかけている場合があります。
動作を修正しつつ背部ではなく腹部に力を入れて寝返りが出来るようにしていきます。
また普段の生活から福祉用具で負担を軽減できれば、リハビリに入った際にスムーズに治療に移行できます。
そこをおろそかにすると、普段の蓄積した腰痛を緩和させてからの治療になってしまいます。
時間も限られてますし、負担を軽減してもらうための提案をしていきましょう。
最後に
この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに紹介した評価・治療が適応できるか判断していただいた上で使用して頂ければ幸いです。
患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。
そのため、今回ご紹介した治療は万人に対して、再現性を担保できるものではありません。
それらを踏まえた上で参考にして頂ければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
以上、ユウセイでした。
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