
座って麻痺側の肘を、伸ばそうとすると、肩が痛いです。
どうなってるんでしょう?

肘を伸ばそうとすると、肘じゃなくて肩が痛いんですか?
どういうことなんでしょう?

そんな時は日常の動きを、確認してみると良いかも!
脳卒中の患者さんでは、肩の疼痛が問題となる場面は少なくありません。
しかしその疼痛、肩そのものではなく、肘や体幹など“別の部位”に原因があるケースもあるのです。
特に「肘を伸ばそうとしたときに肩が痛む」という症状は、見逃されやすく、誤った対応につながる可能性もあります。
今回は、肘を伸ばす動作で肩に疼痛が生じるケースについて、理学療法士の視点から原因の考え方と対応方法を解説します。
肩のどこが痛い?まずは疼痛部位を確認する
姿勢や日常生活動作のクセに注目する
関節の連動を整えるリハビリアプローチ
肩のどこが痛い?まずは疼痛部位を確認する
タケシさんの既往歴
左視床出血による右半身麻痺 感覚低下・しびれあり
ブルンストロームステージ上肢Ⅴ 手指Ⅴ 下肢Ⅴ

座位で右肘を伸展すると、右肩外側部に疼痛が出現する
右肘を屈曲すると、伸展程ではないが、疼痛が生じる
姿勢や日常生活動作のクセに注目する
タケシさんは排泄・整容・入浴の際に杖で移動します。
その際に右肘が屈曲しています。

またぶん回し歩行になっています。
その為右下肢振り出しの際に、右肘の緊張が亢進します。

歩行中常に、肘が曲がってるのが気になるで

肘が曲がってきたら、ダメってことですか?

一概にダメという訳ではない
でも痛みが出る時は評価した方がいい
右下肢を振り出す時に肘の屈曲が強まる
患者さんに合わせた評価
上腕二頭筋を評価する為、ヤーガソンテストを行います。
しかし疼痛が強く、テストの肢位・抵抗が負担になる場合があります。
その場合はまず膝に手をつきます。
この時に回外するようにしながら肘を屈曲します。
この時重力が生じる為、抵抗の代わりになります。

タケシさんは疼痛により、テスト肢位保持・抵抗をかける事が困難でした。
その為この方法で評価し、疼痛が生じました。
正確なテストの肢位ではありません。
ですが要素が含まれる為、上腕二頭筋腱炎の可能性を考えられます。
無論出来るなら、テスト肢位で、忠実にするのが良いです。

上腕二頭筋は、炎症が起きやすいよ

上腕二頭筋に負担がかかって、起始部の関節唇に疼痛が出たと!

本当はテストを忠実にしたいけど、できない事もある
臨床では相手にマッチさせたやり方で工夫しよう
テスト時、肢位がとれない時は工夫する
上腕二頭筋の過緊張・炎症が推察される
関節の連動を整えるリハビリアプローチ
なぜ右肘が屈曲するのか
疼痛部位・評価から上腕二頭筋腱炎、もしくは起始部である関節唇に負担が増加しての疼痛と考えます。
タケシさんは左下肢に体重が乗りきらず、右下肢をぶんまわしています。
その為右下肢を努力的に振り出しており、併せて右肘の緊張も亢進すると考えます。
基本体重が支持側に乗れば、遊脚初期には体重が抜け膝が軽く屈曲します。
この状態であれば、遊脚側を振り出しやすくなります。
つまりぶんまわし、右上肢の緊張は必要なくなります。
その為右下肢を振り出す際に、左下肢への体重移動を円滑にする事が重要と考えました。
疼痛は上腕二頭筋が関与している
努力的に振り出す為、右肘の緊張亢進

これは肩周辺の筋肉をほぐしても、良くならないですね

そうだね
肩に疼痛が出ているけど、原因じゃないかも
代償を抑えつつ、非麻痺側下肢に体重を乗せる

タケシさんは左下肢に体重を乗せると、体幹が左側屈します。
これでは体重が十分に移動出来ません。

身体傾いていてます!?全然気づかなかった
この場合骨盤を壁に近づけて!と口頭指示を行います。
動作を分かりやすくする為、体幹を介助し口頭指示を行う場合もあります。

漠然と体重を乗せようとするよりも効果が高いです。
特に恐怖心がある場合は介助しながら行います。
左下肢で全荷重を支持するように、感覚を養います。
体重が乗る際に、右肘が伸展している事を確認します。
伸展している場合、右下肢が軽くなる事を認識してもらいます。
体重移動で体幹側屈する時は、目標物を指定
体重を乗せた際、右肘が伸展・右下肢が軽くなる事を確認
遊脚相の感覚は「軽くなった、足が自然と曲がった、浮いてる感じがする」など、人それぞれです。

タケシさんに、理解してもらう事が大事!

勝手に踵が浮いてきましたね
ここまで体重をかけると良いんですね
右下肢が軽くなる感覚を持ちつつ、本人の恐怖心が薄れているか確認します。
出来そうであれば、ステップしてもらいます。
難しければ体重移動を反復します。

感覚を養えたらステップへ移行
ステップ時、右肘が伸展しているか確認
この訓練はシンプルですが、難易度が高く疲労度が高いです。
頻繁に休憩、もしくは数日に分けて訓練します。
後日疼痛が出ないように、負荷量には細心の注意が必要です。
初日であれば1〜2回体重移動したら、終える事が多いです。
相手に合わせて少しずつ行なってください。
ステップでも肘が伸展していれば、歩行に移行します。
この時には軽くなったら、右足を出してください!の一言のみです。
たくさん伝えると混乱します。
体重移動の訓練は難易度・疲労度が高い
歩行時はシンプルな指示のみで混乱させない
2週間経過し、歩行中の上肢の緊張は緩みました。
肘を伸展した際の疼痛も改善しました。
まとめ

今回は肘を伸ばそうとすると、肩に疼痛が生じる方への対応を解説しました。
治療の手順は以下の通りになります。
肩のどこが痛い?まずは疼痛部位を確認する
姿勢や日常生活動作のクセに注目する
関節の連動を整えるリハビリアプローチ
肩関節の疼痛でも、原因は別の部分・動作の場合があります。
日常生活を踏まえ総合的に確認する事が重要です。
基本的に疼痛がある部分に原因を求めるのは、最後がいいと筆者は考えています。
手術などの明確な理由があれば別ですが、疼痛部位の評価・治療は患者さんには不快な刺激が入りやすいです。
最初は疼痛部位とは別の部分に原因があるかも!と考えても良いかなと感じます。
肩の痛みは、姿勢や関節の連動、肩甲帯の機能低下などが関係していることがあります。
以下の記事も参考に、評価とアプローチの視点を深めてみましょう。
✅ 肩から指にかけての痛みはなぜ起こる?見逃してはいけない原因を理学療法士が解説【CASE15】
✅ 上肢にしびれが出るのはなぜ?理学療法士が姿勢から見る原因と評価のポイントを解説【CASE9】
✅ 歩行時に肘が曲がるのはなぜ?動作の癖とその意味を理学療法士が解説(豆知識)
最後に
この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに、紹介した評価・治療が適応できるか、判断して頂いたうえで、使用して頂ければ幸いです。
患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。
そのため、今回ご紹介した治療は、万人に対して、再現性を担保できるものではありません。
それらを踏まえた上で、参考にして頂ければ幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
以上、ユウセイでした。

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