こんにちは、ユウセイです。
理学療法士として病院・施設・在宅と関わりを持ち、経験も10年以上になりました。
今はその経験を活かして理学療法士としての治療と考え方を日々発信しています!
脳出血でリハビリを終え自宅に帰れました。
でも座って麻痺した側の肘を伸ばそうとすると肩が痛いです。
どうなってるんでしょう?
脳卒中の方で肩の痛みがある患者さんは多いですよね。
可動域の訓練や肩周りの筋肉の緊張を和らげるために、筋肉をほぐしても痛みが変わらないんですよね。
そんな時は日常の動きを確認してみると良いかもしれんで。
脳卒中の患者さんで、肩の疼痛は問題になりやすいです。
しかし肩そのものの問題というよりも、別の要素によって疼痛を引き起こしている場合があります。
今回はその一例を詳しく解説していきます。
痛みの部位を観察し評価しよう
タケシさんの疼痛の評価
特に右肘を伸ばす時に疼痛が強い
右肘を屈曲する時も肘を伸展する時程ではないが疼痛が出現
本人の姿勢、日常生活で行う動作を確認しよう
タケシさんは座っている時に肘を伸ばすと肩の疼痛があると発言していましたが、必ず座位以外の姿勢も確認しましょう。
タケシさんは日常生活ではトイレや整容、入浴のために杖で移動をします。
その際の歩行のリアクションについて確認をしていきます。
疼痛の部位は肩関節の外側に生じています。
この患者さんは杖を用いて自宅を移動していますが、歩行中には右上肢の反応として肘が曲がっていますね。
特に右下肢を振り出す際に症状が強まっています。
歩行中は常に肘が曲がってるのが気になるで。
特に振り出しを行う時は更にリアクションが大きい。
上肢が曲がってきたらダメってことですか?
一概にダメという訳ではない。
振り出しを行いやすくするから。
でもそれが原因で痛みが出ていることもある。
歩行時右下肢を振りだそうとする時に肘の屈曲が強まっている
患者さんに合わせた評価の提案
疼痛の出現部位と肘の屈伸によって、疼痛が出ている事から上腕二頭筋の関与を調べます。
この場合はヤーガソンテストを選択したいと考えます。
しかし疼痛が強いのでテストが負担になる場合や代償運動が出ることもあります。
その際には膝に手をついた状態から肘を曲げてもらう。
この際に回内から回外になりますし、重力がかかっているのでそれで疼痛が出ることもあります。
この方はテストの肢位が疼痛で困難であったため、このような方法で調べ疼痛が生じました。
正確なテストの肢位ではありませんが、上腕二頭筋腱炎の可能性は考えることが出来ます。
無論出来るならテスト肢位で忠実にするのが良いですよ。ケースバイケースです。
上腕二頭筋は肩関節を安定させるのに役立つ。
でも炎症が起きやすい筋肉だで。
なるほど。上腕二頭筋に負担がかかって起始部の関節唇に疼痛が出ているということですね。
うん。本当はテストを忠実にしたいけど、そうもいかないこともある。
臨床では相手にマッチさせたやり方で工夫しよう。
整形外科テストを行う際に開始肢位をとれない場合は要素を含めて工夫する
この患者さんでは右肩外側に上記の評価で疼痛が生じた
歩行時の上肢の緊張を抑える方法
なぜ足を振り出す際に上肢が屈曲するのか
今回の場合は疼痛場所、評価から上腕二頭筋腱炎もしくは上腕二頭筋の起始部である関節唇にストレスがかかっている可能性が挙げられます。
原因としては歩行時のバランス戦略として右上肢に過度な緊張が高まっていることが原因として考えられそうです。
過度な緊張が高まる要因としては左下肢に体重が乗りきっておらず、ぶんまわしにように下肢を振り上げて遊脚を行うことです。
基本体重が支持側に乗れば乗るほど遊脚側は自由が効きやすくなり、遊脚初期には膝が軽く曲がります。
そうすれば足を出す際に過度な股関節、膝関節の屈曲やぶんまわし、右上肢の緊張は必要なくなります。
そのため右下肢を振り出す際には左下肢にしっかりと荷重ができ、支える準備ができている必要があります。
右肩外側の疼痛は上腕二頭筋が関与している可能性がある
努力的に右下肢をぶんまわしで振り出すために右肘の屈曲が強まっている
もしこの仮説が正しければ肩周辺の筋肉をほぐしたり、肩関節、肘関節の可動域訓練を実施しても、良くならないですね。
おそらく左足に体重が乗りきる前に右足を出そうとしてる。
だからぶん回ししないと歩行が難しいし、右上肢も努力的に出そうとする右足に合わせて緊張が高まってると感じるで。
代償を抑えつつ、非麻痺側の下肢に体重を乗せていく
この患者さんでは左下肢に体重を乗せていこうとすると上記にような体重の乗せ方になります。
これでは左下肢に体重が乗るように見えますが、体重が十分に移動しない場合や転倒の危険性、腰痛などの二次的なリスクを含んでいます。
身体傾いていてます!?全然気づかなかった。確かに体重も左に乗る感じはないですね。
そのような時は骨盤を壁に近づけるなどの具体的な指示をすると良いでしょう。
体幹を介助しながら、上記の口頭指示を行う場合もあります。
漠然と体重を乗せましょうと言われても、慣れてない場合や恐怖心がある場合はセラピストが思い描いている動きにならないことがあります。
タケシさんも乗せているようで乗せれていませんでした。
そのためこの訓練で体重のほとんどを左下肢で支えていき、その感覚を養います。
体重が乗っていく際に右肘が伸びていることを確認し、右下肢の体重が軽くなっていくことを確認します。
体重移動で体幹が傾く際には身体の部位と目標物を指定して誘導する
左下肢に体重を乗せた際に右肘が伸びていること、右下肢が軽くなることを確認する
この時の感覚は「軽くなった、足が自然と曲がった、浮いてる感じがする」など人それぞれです。
この訓練は非常にシンプルですが難易度、疲労度は高めです。
少しずつ訓練を行うことをお勧めします。
これはタケシさんの感覚。
タケシさんに理解してもらうことが必要。
なんとなく分かってきました。
勝手に踵が浮いてきましたね。
ここまで体重をかけると良いんですね。
右下肢が軽くなった感覚を大事にしてもらいつつ、本人の恐怖心が薄れていることを確認しながら、そのままステップしてもらいます。
難しければ体重移動を反復します。
右下肢が軽くなった感覚を養えたらステップに移行する
ステップ中に右肘が伸びていることを確認する
この訓練は難易度が高く、疲労度が高いので頻回に休憩、もしくは数日に分けて訓練することをお勧めします。
体重をフルで支える経験をしてこなかった人には負担も大きいので、後日筋肉の疼痛が出たなどないように負荷量には細心の注意が必要です。
初日であれば1〜2回体重移動の訓練をしたら終えることが多いです。
相手に合わせて少しずつ行なってください。
ステップの際にも肘が伸びていることを確認したら、歩行を促します。
この時には軽くなったら足を出してくださいの一言のみです。たくさん伝えると混乱しやすいです。
体重移動の訓練は難易度・疲労度が高いため休憩・数日に分けて少しずつ訓練する
歩行時は右足が軽くなったら出す!などシンプルな指示のみで混乱させない
2週間経過し歩行中の上肢の緊張は緩みました。
肘を伸ばした際の疼痛の改善も確認することができました。
まとめ
今回は脳卒中の患者さんが歩行をする際の左右への体重移動が不足することによって肩関節の疼痛につながるケースを詳しく解説しました。
治療の手順に関しては以下の通りになります。
肩関節の疼痛でも、原因は別の部分、動作が関係していることも少なくありません。
患者さんの日常生活を踏まえたうえで総合的に確認することによって疼痛の改善を図ることが出来ます。
基本、疼痛がある部分に原因を求めるのは最後がいいと筆者は考えています。
手術などの明確な理由があれば別ですが、疼痛部位の評価、治療は患者さんには不快な刺激が入りやすいです。
最初は疼痛とは別の部分に原因があるかも!と考えても個人的には良いかなと感じます。
最後に
この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに紹介した評価・治療が適応できるか判断していただいた上で使用して頂ければ幸いです。
患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。
そのため、今回ご紹介した治療は万人に対して、再現性を担保できるものではありません。
それらを踏まえた上で参考にして頂ければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
以上、ユウセイでした。
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