座っていると腰が痛いのはなぜ?理学療法士が原因と改善方法を解説【CASE27】

医療者向け
タケシさん
タケシさん

座っていると腰が痛くて、、

無理すれば動けるんだけど、、

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

座っているだけで、腰が痛いのは辛いですね

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

腰痛が生活に支障をきたしてるね

一緒に治療していこう

「座っているだけなのに、腰が痛くなる…」


そんな悩みを訴える方は少なくありません。


明確なケガや病気がないのに腰痛が続く場合、実は“姿勢”や“座り方の癖”が原因となっていることがあります


理学療法士としての視点から、座位での腰痛にどう向き合い、どう評価・対応するかを解説します。

治療の手順

腰痛の部位と特徴を確認する

座位姿勢を評価し、負担の要因を探る

評価から原因を仮説立てし、治療に活かす

腰痛の部位と特徴を確認する

タケシさんの既往歴

左視床出血による右半身麻痺 感覚低下・しびれあり 

ブルンストロームステージ上肢Ⅴ 手指Ⅴ 下肢Ⅴ

左の上後腸骨棘に疼痛が生じ、掌で表現します。(palma sign)

座っているだけでもジワジワ疼痛が生じており、嫌な気分になる疼痛との事。

端座位になると左上後腸骨棘周辺に疼痛生じる

仰臥位・側臥位では疼痛が生じない

座位姿勢を確認する

座位姿勢は左の肩甲帯が前方突出し、上部体幹右回旋、下部体幹・骨盤が左回旋していました。

歩行の時にもその傾向があり、左手で四点杖を前方に突き出すことによって体幹の捻じれが増強します。

座位で左肩甲帯が前方突出し上部体幹右回旋・下部体幹・骨盤が左回旋している

歩行の際に骨盤の左右への回旋は見られず、基本左回旋のまま歩行する

4点杖を前に突き出す際に上部体幹の右回旋が強まる

左大胸筋の緊張が右と比較して高い

座位姿勢を評価し、負担の要因を探る

座位姿勢の捻じれが、歩行中に増強しています。

その為アライメントを修正し、疼痛が軽減するか確認しました。

上部体幹を左回旋に、下部体幹・骨盤を右回旋に誘導します。

左手は後頭部を触り両下肢を右側に倒す事で、アライメントの修正を行う事としました。

しかしこの時に左上後腸骨棘周囲に、端座位の時と類似した疼痛が生じました。

疼痛が出現した原因として、両下肢を右側に倒していくと、バランスを保つために上部体幹は左回旋してつり合いをとります。

しかし左大胸筋の緊張が亢進している為、上部体幹左回旋が困難となります。

動きにくい方をスティフネス(stiffness)が高いと表現すれば,スティフネスが低い部分の運動が過剰になる。

山口三國・福井勉・入谷誠.結果の出せる整形理学療法 運動連鎖から全身を見る.株式会社メジカルビュー社.2009,77.

上記の知見から上部体幹よりも緊張の少ない下部体幹・両下肢の回旋が大きくなり、左大殿筋に過度な伸張が生じます。

評価から左大殿筋が過度に伸張されることによって、左上後腸骨棘に疼痛が生じると推察できました。

座位姿勢も骨盤は左回旋しており、座位の際は両膝を意識的に前に向けます。

その為相対的に、股関節は内旋位を強いられます。

この内旋位によって左大殿筋への過伸張に繋がり、疼痛が生じたと考えられます。

骨盤が左回旋する理由として、左肩甲帯が前方突出し上部体幹が右回旋している為、相対的に下部体幹・骨盤が左回旋すると判断しました。

更にアライメント修正を阻害しているのが、左大胸筋の緊張の亢進である考えられました。

結論として左肩甲帯を後退させ、左回旋に誘導する事が重要と判断しました。

アライメントを修正しようとすると、上部体幹の左回旋が制限される

左股関節の内転・内旋が過度になると疼痛が生じている

座位で骨盤が左回旋しており、左股関節が内転・内旋位を強制されている

左大胸筋の緊張の亢進が、座位の捻じれを生んでいる可能性がある

評価から原因を仮説立てし、治療に活かす

上図の姿勢とし、大胸筋に疼痛がない範囲で伸張位とします。

大胸筋の筋腹に軽く指を当てがい、優しく振動させ筋緊張を緩和させました。

大胸筋中部・下部線維に対して、特に下部線維には筋腹を把持するようにして振動させました。

腱部および筋腹部に振動刺激を負荷すると,その刺激によって骨格筋の長さは軽微な変化を繰り返す.この骨格筋の長さの変化は,間接的または直接的に筋紡錘に存在するIa求心性線維や,ゴルジ腱器官に存在するIb求心性線維を興奮させ,その結果,脊髄運動細胞が抑制される.

中林 紘二.振動刺激部位の違いが下腿三頭筋の筋緊張抑制効果に及ぼす影響.理学療法学.2012.27巻.2号

上記の知見からタケシさんに対しては、振動刺激によって左大胸筋の筋緊張緩和を図りました。

筋緊張が緩和したら肩甲帯を後退させ、上部体幹を左回旋に誘導していきます。

併せて肘を開いたり・閉じたりして、自動運動で更に左大胸筋の筋緊張の緩和を図りました。

その後疼痛が生じた仰臥位でのアライメント修正を行ったところ、疼痛が生じませんでした。

その為座位姿勢をとるとアライメントが改善しており、腰痛も改善しました。

左肩甲帯の前方突出が改善し、上部体幹が左回旋した事で、骨盤の左回旋が緩和できたと考えられます。

大胸筋の緊張を緩和し肩甲帯を後退させ、上部体幹を左回旋に誘導できた

上部体幹を左回旋できたことで、骨盤の左回旋の捻じれを解消し腰痛が改善した

まとめ

今回は座っているだけでも腰痛がある方に対しての、対応を詳しく解説していきました。

治療の手順としては以下の通りになります。

治療の手順

腰痛の部位と特徴を確認する

座位姿勢を評価し、負担の要因を探る

評価から原因を仮説立てし、治療に活かす

股関節に限らず疼痛と聞くと構えてしまいますよね。

でも疾患ではなく、筋肉や姿勢の問題で疼痛が生じているケースは非常に多いです。

理学療法士としては見逃さずに疼痛を改善していきたいですね。

おすすめ書籍

今回の疼痛を改善するにあたり、非常に参考になった書籍をご紹介します。

股関節の角度によってどの筋肉が働く、働かなくなるなど明確に説明があり、日々の臨床に活かしやすい内容が多いと感じます。

自分がなぜこの治療を選択するのか、言葉で説明できるようになるために是非一読して頂ければ幸いです。

座っているときの腰痛は、姿勢や骨盤の傾き、筋の緊張などが原因になることがあります。
以下の記事も参考に、腰痛を多角的に評価・理解してみましょう。

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最後に

この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに紹介した評価・治療が適応できるか判断していただいた上で使用して頂ければ幸いです。

患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。

そのため、今回ご紹介した治療は万人に対して、再現性を担保できるものではありません。

それらを踏まえた上で参考にして頂ければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

以上、ユウセイでした。

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