立ち上がりで足が滑るのはなぜ?足底感覚低下と荷重不良から考える評価とアプローチ【CASE33】

医療者向け
タケシさん
タケシさん

立つ時に足が滑ってしまうんです。

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

それは立ちにくいですよね。

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

なぜ滑るのか考えてみよう!

リハビリ中立ち上がりを行う際に足部が滑ってしまう。
そういった方のリハビリを行う機会はありませんか?

立ち上がりを行う際に足が滑ってしまうことで、
👉️
・立ち上がりが難しくなる
・余計な力が入り関節に負担がかかる

上記のような問題が生じることがあります。

特に脳卒中の方は緊張が過剰に入ってしまい、
痛みや動作が不安定になってしまうことが考えられます。

今回は立ち上がりの際に足部が滑ってしまうケースに対しての、
評価とケアを解説します。

タケシさんの既往歴と主訴

・右被殻出血(Brunnstrome stage上肢Ⅳ 手指Ⅳ 下肢Ⅳ)
・立ち上がりの際に右足が滑って立ちにくい

🔍️理学療法評価

立ち上がり動作を確認する

左手指で手すりを握り込み、自身の方に引き込むようにしながら体幹を前傾していく。
その後左下肢中心に立ち上がりを行っていく。

しかし離殿の際に右母趾球が浮いており、荷重が乗っていない。
また後方重心であり体幹下部が右回旋し、右足部が前内側に滑っていく。
同時に右肘関節の屈曲が強まり、両股・膝関節を屈曲したまま中腰の姿勢で保持する。

足底感覚を調べる

セラピストの指先で右踵・右母趾球を触っていくと、触られている感覚が分かりにくいとのこと。
そのため感覚検査を実施。 左側は問題なかったため、右側のみ記載。
5回法で実施※5回触り正答数を以下の基準で評価

5/5正常 4/5軽度鈍麻 3/5中等度鈍麻 2~0/5 重度鈍麻

触覚

右踵3/5(中等度鈍麻)
右母趾球2/5(重度鈍麻)
右小趾球5/5(正常)

圧覚

右踵3/5(中等度鈍麻)
右母趾球3/5(中等度鈍麻)
右小趾球5/5(正常)


右踵、右母趾球の触覚・圧覚共に鈍麻を確認。
右小趾球は触覚・圧覚共に(5/5)正常と判断。

筋力を調べる

筋力検査(Manual Muscle Testing)

運動方向
股関節屈曲44
伸展24
外転34
内転44

可動域を調べる

運動方向
股関節屈曲100120
伸展-50
膝関節屈曲130145
伸展-50
足関節背屈510
底屈5045
内がえし3025
外がえし1020

右足部を固定して立ち上がりを確認する

右股・膝関節に伸展制限が確認されるも、右足関節背屈可動域が5°あり、
前足部の回内も促すことが可能であった。
そこで右踵、母趾球をセラピストが床に接地させ、再度立ち上がりを行う。

結果体幹下部の右回旋も軽減し、離殿も素早く行えた。
両股・膝関節の伸展運動も固定前より増加し、姿勢を起こすことが出来ている。

🧩評価

今回立ち上がりを行うにあたり、右足部が滑るという問題が生じた。
以下に問題点を述べる。

①足底感覚の低下
右踵、右母趾球に感覚の低下が確認された。
この影響により立ち上がりを行う際に、荷重を認識できず離殿を行っていると推察。
介助をして右足部を安定させると動作にも変化が生じた。
上記のポイントから感覚の低下に対してのケアが必要であると考えられる。

②大殿筋筋力低下
離殿を行うために大殿筋の筋力が必要であるが、本症例では筋力低下している。これにより円滑な動作が妨げられ、右足部が滑る一因になっていると考えられる。

立ち上がり動作に対しての解釈

立ち上がりの際に右踵、右母趾球の感覚が低下していることで、荷重が十分に右足部に乗っていない状態で離殿を行っている。

そのため後方重心であり、右下肢が前内側に滑ってしまうと考えられる。
右下肢が前内側に滑ることによって、足部に重心を落とし込めず、体幹下部が右回旋している。
その際に右肘関節を屈曲することで、体幹上部に左回旋のトルクを発生させてバランスを保っていると考えられる。

本症例に対してのケアアプローチ

①足底感覚に働きかける

足底感覚の低下に対してのアプローチとして
👉️まず触覚刺激を認知してもらうことを意識。

皮膚の状態に問題がなかったため、タオルで皮膚を擦っていく。
※皮膚の弱い方にはタオルは刺激が強い場合があります。
また擦る力加減も適宜相手の皮膚状態に合わせて行ってください。

その際に初めは見てもらいながら、次いで目線を外してもらい難易度を上げていく。
👉
次第になんとなくだが、擦られている感覚を感じることが出来る。

次いでセラピストの指で踵、母趾球を圧しながら、感覚の入力を行う。
こちらも初めは少し分かる程度であったが、徐々に認知できるようになる。
そこから床を踵で押し込むようにしてもらう。

母趾球には体幹を前傾してもらい、体重がかかる感覚を意識してもらう。
母趾球に体重がかかったら踵を浮かさないようにしながら、床を踏み込んでもらう。
上記の動作により踵、母趾球の感覚を認知してもらう。

②右大殿筋の活動を高める

体幹を前傾しても、踵、母趾球が浮かないことを確認したうえで、
👉
背部に手を回して体幹前傾方向にセラピストが倒そうとする。
その外力に抗してもらい止まってもらう。

口頭指示「僕が背中を押そうとしますので、止まっていてください!」
ここで脊柱起立筋を働かせ、大殿筋へと働きを繋げていく。
この時に両下肢に力が入っている感覚と若干お尻が浮きそうになっていることを本人が理解できる。
その感覚を覚えてもらうために数回行い、
・手すりを把持しながらも先ほどの訓練中に感じた両下肢に荷重が乗る感覚
・殿部が持ち上がる感覚
この2つの感覚を感じてもらったうえで立ち上がる。

本症例では、右下肢の滑りの軽減が見られ、立ち上がりを行うことが出来た。

右下肢の感覚に注視してもらい、荷重を右下肢に十分に乗せることが出来たことにより症状の軽減に至ったと考えられる。
筋力低下が生じていた大殿筋に働きかけたことも重要であったと考える。

まとめ

今回は、脳卒中後の患者さんが立ち上がり動作で右足が滑ってしまうケースを解説しました。

評価の結果、主な問題点として以下の2点が挙げられました。

① 足底感覚の低下 右踵・右母趾球の触覚・圧覚が低下しており、荷重を十分に認識できないまま離殿していたことが、足部の滑りの主因と考えられました。

② 大殿筋の筋力低下 円滑な離殿に必要な大殿筋の出力が不十分であり、動作の不安定さに拍車をかけていました。

アプローチとしては、タオルや徒手による触覚・圧覚刺激の入力から始め、踵・母趾球への荷重認知を段階的に高めていきました。さらに脊柱起立筋から大殿筋への筋活動の連鎖を促すことで、右下肢への十分な荷重と安定した離殿が可能となりました。

足部が滑るという現象の背景には、感覚障害・筋力低下・運動戦略の代償が複合的に絡み合っています。動作観察だけにとどまらず、「なぜ滑るのか」を丁寧に評価することが、適切なアプローチへの第一歩となります。

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最後に(免責)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。

目の前の患者さんへの適応可否は、各自の評価と専門職としての判断に基づいて実施してください。

患者さん一人ひとりで疾患・既往・身体特性が異なるため、記載内容がすべての方に同様の効果をもたらすとは限りません。

本記事を参考にして生じた損害等について、筆者は一切の責任を負いかねます。

あらかじめご了承ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以上、理学療法士 ユウセイでした。

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