
段差を登る時に膝がピリッと痛むの
なんでかしら?

膝が悪いんでしょうか?

そうかもしれんね
でも、膝だけが原因じゃないかも!
段差を昇る際に膝が痛む…
そんな悩みを抱えている方は少なくありません。
膝の疼痛によって段差の昇段が不安になると、外出の頻度が減り、これまで楽しんでいた交流や趣味の場が失われてしまうこともあります。
今回は、段差を昇る動作で膝関節に疼痛が出るケースに対して、理学療法士の視点から原因と改善のアプローチを解説します。
膝のどこが痛い?段差昇段時の疼痛部位を確認する
扁平足が膝関節に与える影響とは?
改善に向けたリハビリアプローチ
膝のどこが痛い?段差昇段時の疼痛部位を確認する

段差昇る時どこが痛いですか

段差を昇る時に、右膝裏から横にかけて、ピリッとするのよね

段差昇段時に膝裏〜外側面に疼痛が生じる
右下肢で段差を昇段し、左足底が地面から離れた時生じる
扁平足が膝関節に与える影響とは?
ハナさん 姿勢評価
座位

座位・立位姿勢は、右膝は外反位であり扁平足です。
立位

右下肢は大腿内旋・下腿外旋しており、膝関節外反位です。
too-many-toe-sign(下の図)

扁平足かどうか判断するために簡便な方法はtoo-many-toe-signがあります。
ハナさんは立位で確認すると、右足趾が左足趾よりも多く見られる現象が確認されます。
また母趾球にタコが出来ており、荷重が母趾球側に優位になっています。

アライメントの崩れがあるね

そうですね!
母趾球のところにもタコができてます
右足部が扁平足
右下肢は大腿内旋・下腿外旋で膝外反位
ハナさん 段差昇段動作評価

座位・立位では大腿内旋・下腿外旋し、膝関節は外反位です。
階段を登る際に、更に膝関節の外反が強まっています。
この力が膝関節の疼痛の原因と考えられます。
下腿外旋・大腿内旋し、膝関節が外反した際に負担がかかるのが膝窩筋です。
下腿を内旋方向へ動かす作用を持ち、大腿骨外側上顆から脛骨の内側に付着します。
その為膝関節の外反位に強制されると、伸張され緊張が亢進します。
その結果膝関節の後面、外側面に疼痛が生じると考えます。
仮説が立ちましたので、大腿外旋・下腿内旋へ少しずつ誘導し修正します。

強い力で誘導すると、組織が緊張し、手くいきません。
修正したアライメントを保持し、段差を昇段してもらいました。
その際は疼痛がありませんでした。

触ってもらっていると痛くないね。
最初は痛みが出そうで怖かったけど

恐怖感があるなら、左の踵を上げるだけなど段階を踏んでも良い
座位・立位から右大腿内旋・下腿外旋し、膝が外反位
昇段する時に自重が加わり、更に膝が外反位に強制される
→膝窩筋が伸張されている疼痛の可能性がある
昇段する際に、大腿外旋・下腿内旋して昇段すると疼痛がない
改善に向けたリハビリアプローチ
常時大腿内旋しており、大殿筋の収縮は得られていません。
その為大殿筋の収縮を促します。
大殿筋の出力が足りないと、膝の外反位が強まります。

次いで立位で母趾球を床に接地したまま、大腿を外旋へ動かしてもらいます。
最も簡便な方法は、母趾球を床に接地したままお尻を締める事です。
お尻を締めるのは骨盤底筋群の活動が重要です。
お尻を締めると大腿外旋を促す事が出来ます。

ハナさんは意識的にお尻を締める事が、最初は出来ませんでした。
しかし繰り返すと、徐々に出来るようになりました。
難しい場合は座位から、最終的には立位で出来るようにしていきます。

案外、おしりを締めるのって難しいわ
大殿筋の収縮により、大腿を外旋方向へ誘導
最終的に立位で大殿筋を働かせる
お尻を締める運動は患者さんに分かりやすい
自主訓練で症状を緩和する
立位でお尻を締める訓練を行ってもらいました。
支持物がなくてもお尻を締めるように、心がけてもらいます。
苦痛がないように、回数は朝昼晩5回ずつとしました。

1週間後、疼痛の改善を確認しました。
まとめ

今回は段差昇段時の、膝関節疼痛に悩む方への、対応を詳しく解説しました。
治療の考え方としては、以下の通りになります。
膝のどこが痛い?段差昇段時の疼痛部位を確認する
扁平足が膝関節に与える影響とは?
改善に向けたリハビリアプローチ
姿勢を確認した際に左右差がある場合は、疼痛に関連している可能性があります。
その場合は姿勢を修正する事で、疼痛が改善する場合があります。
扁平足や外反膝の兆候がある場合は、注意してください。
膝関節が外反位に強制されると、膝窩筋へのストレスが過多になり、膝の後面・外側に疼痛が生じる場合があります。
膝の痛みは、動作のクセや足部・姿勢の影響など、さまざまな要因が関係しています。
他の膝関連の症例も参考に、評価とリハビリの視点を深めましょう。
✅ 立つと太ももが痛いのはなぜ?理学療法士が原因とリハビリ法を紹介【CASE1】
✅ 歩くと膝が痛い原因は?不良姿勢がもたらす負担と対策を理学療法士が解説【CASE17】
✅ 膝が伸ばせないのはなぜ?寝ながら起こるトラブルを理学療法士が解説【CASE23】
最後に
この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに、紹介した評価・治療が適応できるか、判断して頂いたうえで、使用して頂ければ幸いです。
患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。
そのため、今回ご紹介した治療は、万人に対して、再現性を担保できるものではありません。
それらを踏まえた上で、参考にして頂ければ幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
以上、ユウセイでした。

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