寝てるとき足が重いのはなぜ?理学療法士が原因と動きやすくする方法を紹介【CASE11】

医療者向け
タケシ
タケシ

うーん、足が重い、、

どうしたら、足が軽く動くようになるんだ?

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

えーと、足全体の筋力をつければいいのかな?

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

でも問題点絞らないと、どこも大事!って思って混乱するよ

自宅で生活しているけれど、普段はベッドで横になっている時間がほとんど…そんな方はいらっしゃいませんか?


退院直後などは、座っているだけでもつらい、という方も少なくありません。


そうした方にとって、「寝ている時に体をどう動かせるか」は、生活の質を左右する大きな要素になります。


ベッド上での動きやすさは、睡眠の質や痛みの有無にも直結するため、決して軽視できません。


これは在宅だけでなく、入院中の患者さんにも共通する大切な視点です。


今回は、寝ているときに足が重くて動かしにくいと感じている方への対応ポイントを、理学療法士の視点から解説します。

治療の手順

足が重たい時の動作・姿勢を確認する

寝ている時の足の動きとメカニズムを理解する

足の重さを改善するためのリハビリアプローチ

足が重たい時の動作・姿勢を確認する

タケシさんの情報

頚椎不全損傷により四肢に麻痺あり

独居で寝たまま過ごす事が多い

ブルンストロームステージ上肢V 手指V 下肢Ⅳ

動作確認

両股関節の屈曲の際に下肢の重量感があります。

臥位の姿勢

膝を立てても腰椎前弯、骨盤前傾しており、股関節近位部に違和感があります。

腰椎前弯が生じ、骨盤が前傾している

股関節近位部に違和感がある

寝ている時の足の動きとメカニズムを理解する



股関節の屈曲のメカニズムとしては、重要な点として腹直筋が働くことが非常に重要です。

Neumann DAらは腹直筋による十分な固定なしでは、股関節屈曲筋群の効率が悪く、骨盤は前傾する。過度の骨盤前傾は腰椎前彎を増強する¹›と述べています。

腹直筋が働く事で股関節屈曲を行う土台ができる為、股関節屈曲を行えます。

皆さんも臥位で腰椎を前弯させ股関節屈曲すると、重たい感じや詰まったような感じがしませんか?

股関節屈曲が困難になっている理由として挙げられます。

吉尾らは股関節を133°屈曲した際に屈曲寛骨大腿関節平均70°、腰椎の動き・骨盤の後傾の動きが63°であった²›と述べています。

上記の知見から動作を円滑にする為に、股関節屈曲する際に腰椎後弯、骨盤後傾する事が重要と考えます。

引用文献

1)Neumann DA.筋骨格系のキネシオロジー.原著第2版,嶋田智明ほか(監訳),医歯薬出版,2012,534

2)吉尾雅春.健常成人の股関節屈曲角度の構成について.理学療法学.2005,Vol32 No2.

腹直筋が股関節屈曲を行うための土台

腰椎前弯・骨盤前傾は股関節屈曲を制限する

タケシさんの寝た姿勢・動作を評価する

タケシさんは腰椎前弯、骨盤前傾により腹直筋の収縮が得られません。

腹直筋は剣状突起から恥骨結合に付着しており、腰椎が日常的に前弯すると骨盤が常に前傾します。

その為筋肉が伸張されます。

竹井らは筋は引き伸ばされるほどアクチンフィラメントに接するミオシンフィラメントの頭部の数が少なくなり発揮できる筋力が弱くなってしまう³›と述べています。

上記の知見から骨盤後傾する機会が減るうえに、腹直筋の筋力低下も生じ股関節を屈曲する事が困難になります。

また股関節屈曲筋である大腿直筋・大腰筋は骨盤を前傾させます。

タケシさんは骨盤後傾出来ないのに併せ、屈曲しても更に骨盤前傾させる為、骨盤周囲に詰まったような違和感が生じたと考えます。

骨盤後傾出来ないと、大殿筋も伸張位をとなり筋力が低下します。

骨盤の後傾を適切に促し、腹直筋・大殿筋の収縮を促す事が重要です。

腹直筋・大殿筋を働かせて腰椎後弯と骨盤後傾を生み出す

引用文献

3)竹井仁.正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書.ナツメ社.2015,82-100.

足の重さを改善するためのリハビリアプローチ

タケシさんは膝を介助では立てられました。

しかし自力で保持するのは困難でした。

そのため介助しつつ、膝から踵へ圧を加えます。

踵に圧を感じられたため、その圧をセラピストの腕でキープします。

キープしたまま腰に手を当てがいます。

タケシさんの腰部で、セラピストの手を潰すように押してもらいます。

その動作により骨盤を後傾方向に誘導できます。

腹部に収縮を感じる事ができればより良いです。

タケシさんは腹部の収縮を感じる事ができました。

腹部の収縮を入れて、お尻を少しだけ持ち上げます。

大きく持ち上げすぎると、腰椎が前弯してくる場合があります。

必ず骨盤後傾し、腰椎後弯していくのを確認しながら少し浮かせます。

踵に圧を加えて、腰椎後弯・骨盤後傾する

腹部に収縮を感じつつ、お尻を少し浮かせる

股関節屈曲を促す際は、「膝のお皿をおへそに近づけて」と具体的な部位を伝えると、代償動作が入りにくくなります。

背臥位で股関節を屈曲する際、遠位の関節から動作が行われる事が多いです。

足関節背屈が出る方であれば、背屈運動を促しながら膝を屈曲すると上手くいきやすいです。

治療後足が軽くなったと喜んでもらえました。

特に何十年来の脊髄不全損傷による悩みであったため、喜びも大きかったのかなと推察しています。

このように足が軽くなるだけでも、非常に喜ばれますので、少しでもこの記事が皆さんのお役に立てば幸いです

動作を提案する時は部位を指定する

寝ている時の足の重さに対するリハビリまとめ

今回は寝ている時に足が重たくて、動けない方への対応を解説しました。

治療の手順は、以下の通りです。

治療の手順

足が重たい時の動作・姿勢を確認する

寝ている時の足の動きとメカニズムを理解する

足の重さを改善するためのリハビリアプローチ

ベッドサイドの治療は非常に考えることが多く、現状と先を見据えながら対応していく事が求められます。

すぐに効果が現れることばかりでもありません。

しかしベッドサイドでのリハビリで、結果を出す事は非常に重要です。

新人時代、先輩から「いいセラピストは、ベッドサイドでのリハビリを見たら分かるよ」と言われた事があります。

最近になって確かにと、思うところもあります。

筆者もこの記事を書いていて、ふと思い出しました。

改めて頑張らねばとこの記事を書いていて、身が引き締まりました。💦

寝ているときに足が重く感じる症状は、筋緊張や神経の滑走不全、股関節や体幹の不安定さが関係していることもあります。

似たような症状が気になる方は、以下の記事も参考にしてみてください!

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足を伸ばすとお尻が痛いのはなぜ?原因と改善方法を理学療法士が解説【CASE29】
ふくらはぎが痛くて歩けないのはなぜ?原因と改善方法を理学療法士が解説【CASE13】

最後に

この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに、紹介した評価・治療が適応できるか、判断して頂いたうえで、使用して頂ければ幸いです。

患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。

そのため、今回ご紹介した治療は、万人に対して、再現性を担保できるものではありません。

それらを踏まえた上で、参考にして頂ければ幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

以上、ユウセイでした。

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