CASE13 ふくらはぎが痛くて歩けない セラピストが見るべきポイント

リハビリ記録

こんにちは、ユウセイです。

理学療法士として病院・施設・在宅と関わりを持ち、経験も10年以上になりました。

今はその経験を活かして理学療法士としての治療と考え方を日々発信しています!

ハナ(仮名)
ハナ(仮名)

歩いていると、左足のふくらはぎが痛むわ。

1年目ユウセイ
1年目ユウセイ

歩いている時にふくらはぎに痛みがあると動くのが億劫になりますね。

10年目ユウセイ
10年目ユウセイ

そうだね。何気ない動き所作でも痛みの原因となっていることがある。

そこを見落とさないようにしようで。

臨床でしばしば問題になるのが下腿後面の疼痛です。

動作中に疼痛が生じることで円滑な動作が困難になることがあります。

片側の下肢に問題が出てしまうと、反対側の下肢に負担がかかるため、本来疼痛がなかった側まで疼痛が生じるといった問題も起きやすくなります。

下肢の疼痛は、早い段階で改善できるに越したことありません。

今回は歩行中の左下腿後面に疼痛に対しての対応したケースについて詳しく解説します。

この記事でわかること

疼痛が生じるタイミング・部位を把握する

歩行する前の姿勢を確認する

等尺性収縮で治療する

疼痛が生じるタイミング・部位を把握する

ハナさんの既往歴

黄色靭帯骨化症により左下肢にしびれがある

腰椎圧迫骨折

疼痛の部位は硬い三頭筋の内側頭の部分になります。

疼痛の出現するタイミングとしては、立ち上がり、左立脚中期〜後期にかけて出現していました。

疼痛の範囲は手掌で表現する種類のものであり、圧痛・伸張時痛があります。

黄色靭帯骨化症によるしびれとは別物の感覚とのことでした。

立ち上がりの際にも疼痛が生じる

体重が全荷重に近い立脚中期〜後期に疼痛が生じている

疼痛は圧痛・伸長時痛がある

歩く前の姿勢を確認する

座位の状態を確認した際に、猫背の姿勢になっており、更に黄色靭帯骨化症の影響で足底の感覚がしびれによって分かりにくくなっていました。

足部のアライメントとしては母趾球は常に浮いていました。

また足関節が内反し方向に誘導され、下腿三頭筋の外側頭は伸張され、内側頭は基礎と停止が近づいているような状態が続いていました。

更にこの方は1日座位で過ごすことが多く、尿意・便意があるときのみ、近くのポータブルトイレに移動する生活でした。

そのため体動が少なく長時間下腿三頭筋の内側頭が短縮位になりやすくなっていました。

日中座位姿勢をとることが多く、常時足部の内反し傾向にある

下腿三頭筋内側頭が短縮位になりやすい姿勢をとっている

下腿三頭筋内側頭が短縮した状態で立ち上がり動作を行うと、急激に距骨下関節が回内し足関節は外返し方向に強制されます。

この際に下腿三頭筋内側頭が伸張され、疼痛が生じ、攣縮が生じてしまったと考えられます。

赤羽根らは筋攣縮とは筋が痙攣した状態であり、関節の周辺組織が何らかの侵害刺激を受けると侵害受容器が反応し、脊髄反射によって前角細胞のa運動線維に作用し筋は攣縮を引き起こすと述べています。¹)

更に筋攣縮の評価として伸張痛・圧痛所見・筋緊張・収縮時痛を見ることが重要とも述べています。¹)

この事から立ち上がりの際の伸張刺激が攣縮を生じさせ、歩行中も疼痛が継続してしまったと仮説を立てました。

立ち上がりの際に外返し方向の力が働き、下腿三頭筋内側頭に伸長刺激が加わる

下腿三頭筋内側頭に伸長時痛・圧痛が生じており攣縮が疑われる

等尺性収縮で治療する

今回は下腿三頭筋内側頭に攣縮が生じたため、立ち上がりや歩行など体重をかけると伸張ストレスにより疼痛が生じていると仮説を立てました。

そのため攣縮に対しての効果的な治療として等尺性収縮が挙げられます。

赤羽根らは等尺性収縮の軽い牽引刺激はゴルジ腱器官を興奮させ、その信号は脊髄反射の抑制性介在ニューロンを介して筋をリラクセーションさせると述べています。¹⁾

また反復的な筋収縮は、筋ポンプ作用により筋内の血液循環の改善や発痛物質の排泄を促し、筋内圧が減少して圧痛所見や収縮・伸張に伴う疼痛を軽減・消失させるとも述べています。¹⁾

今回は歩行時の立脚中期〜後期に疼痛が生じていたことから等尺性収縮を用いて攣縮を改善し、下腿三頭筋内側頭がスムーズに収縮・弛緩出来るようにしていくことが重要と考えました。

治療としてはセラピストが外返し方向に動かそうとするのを止めてもらいます。

この動作により足部の内反し方向に収縮を促します。

止めてもらった後に必ず緩める時間を設けて、他動で少しずつ外返しの角度を増加させていきます。

外返しの角度を他動で増加させた後、再度軽い力で内反し方向への等尺性収縮を促します。

段階的に外返し方向へと誘導しながら圧痛・伸張痛がないかを確認していきます。

徐々に疼痛が改善していきましたので、最終的に動かした外返しの可動域まで自動介助運動→自動運動へと切り替えてもらいながら動作を促します。

自動運動で疼痛がなくなったため、歩行を行うと疼痛が改善しました。

引用文献

1)赤羽根良和.痛みの理学療法シリーズ 足部・足関節痛のリハビリテーション.羊土社.2020,111-113.

まとめ

今回は下腿後面に出現した疼痛に対して対応したケースをご紹介しました。

治療の流れとしては以下の手順となります。

治療の流れ

疼痛が生じるタイミング・部位を把握する

歩行する前の姿勢を確認する

等尺性収縮で治療する

今回は座位のアライメントの崩れから、動作に影響が生じてしまい攣縮が生じていたケースとなります。

そのため等尺性収縮を用いて治療を行うことで疼痛を改善することが出来ました。

しかし迷うところとしては黄色靭帯骨化症の所見があるところです。

もし筆者が先入観で黄色靭帯骨化症の影響による疼痛と決めつけてしまっては、今回治療することが出来ませんでした。

今回治療を行うことが出来たのは、攣縮によって生じた疼痛が普段感じている不快感と違うと話を聞けたことです。

改めて問診は重要であると感じたケースとなりました。

オススメ書籍

今回攣縮の治療として等尺性収縮の考え方を提案して頂いた良書です。

非常に分かりやすい解説と的確なアドバイスを得ることが出来、非常に臨床で役立つ一冊です。

筆者としては著者が述べる攣縮のメカニズム・治療の考え方を知ることができるだけでもこの著書を手にとる価値があると考えます。

是非一読頂き明日の臨床に役立てて頂ければ幸いです。

赤羽根先生の著書としては肩関節の治療に関しての著書も非常に見応えがあります。

リンクを掲載しておきますので是非合わせてご覧ください。

最後に

この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに紹介した評価・治療が適応できるか判断していただいた上で使用して頂ければ幸いです。

患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。

そのため、今回ご紹介した治療は万人に対して、再現性を担保できるものではありません。

それらを踏まえた上で参考にして頂ければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

以上、ユウセイでした。

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