こんにちは、ユウセイです。
理学療法士として病院・施設・在宅と関わりを持ち、経験も10年以上になりました。
今はその経験を活かして理学療法士としての治療と考え方を日々発信しています!
今回は筆者の治療中に腰痛を生じさせてしまった経験を解説していきます。
良かれと思って治療したことが患者さんにマッチせず、疼痛を起こしてしまうことがあります。
そんな時は慌てず治療をし直して、改善できれば患者さんとの信頼関係を崩させずに済みます。
筆者が疼痛を出してしまった時にどんな対応したのかを詳しく解説していきます。
自身の治療で疼痛を引き起こてしまった場合以下の通りになります。
患者さんの疾患・背景を理解する
患者さんはご高齢の方で、腰部脊柱菅狭窄症の方でした。
この方は脊椎の変形があり両下肢に痺れが生じていました。
また座位でも立位でも無理に背筋を伸ばそうとすると腰痛が生じます。
脊柱菅狭窄症とは
この疾患は脊柱管や椎間孔が狭小化し、脊髄、馬尾、神経根が圧迫されることで腰痛、臀部から下肢に痺れや疼痛、脱力、神経性間欠性跛行が生じる疾患です。
特徴として悪化肢位は脊椎の伸展。
症状が改善する肢位として脊椎を屈曲させることで、神経組織の圧迫を軽減させることが出来ます。
日常の姿勢を確認する
典型的な円背の姿勢ですが、この姿勢にすると腰が楽と言われてました。
ずっとこの姿勢だと腰部の重だるさは感じるとのことですが、脊柱菅狭窄症の痛みの方が辛いため、この姿勢をとりやすくなっていました。
長時間円背位では腰部に重だるさが生じていたため、血流が悪くなっているポイントを探すため触診を行い圧痛がある部分を確認しました。
右腰方形筋の部分に圧痛があったため今後循環の悪化によって疼痛が出ないように血流の改善を図るためストレッチによって改善しようと考えました。
円背位の姿勢をとることが多く、腰方形筋・脊柱起立筋に圧痛を訴えることが多い
右腰方形筋に圧痛あり
自分が治療した内容を振り返る
両股関節を担ぐようにしてストレッチを選択しました。
腰方形筋の走行を考えて左に回旋させて伸びるように心がけました。
ストレッチ中は筋肉が伸びていく感覚を感じてもらいつつ、疼痛は軽度ありましたが、不快感ではないとのことであったため終了とし起き上がってもらいました。
しかし起き上がると、普段は安楽な姿勢である円背位であるにも関わらず右腰方形筋の部位に疼痛が生じていました。
円背ではなく、そこから姿勢を努力的に胸椎・腰椎を伸展方向に誘導すれば、腰用方形筋の疼痛はあるものの軽減しました。
しかし伸展すると腰部脊柱管狭窄症の影響により腰部に疼痛、重だるさが生じたため、苦痛により継続することはできませんでした。
ベッドで臥床すれば疼痛が軽減しますが、疼痛で座位がとれなくなってしまいました。
その人は一人暮らしだったし、週一回の訪問だったから焦ったで。
右腰方形筋のストレッチ後胸腰椎を後弯する姿勢をとると疼痛が出現
胸腰椎の前弯を増やすと腰方形筋の疼痛は改善するが、腰部脊柱管狭窄症の症状が出現する
疼痛が出た原因を特定して治療を行う
疼痛の原因を特定する
疼痛が出ている部位は右腰方形筋であり、腰椎を伸展方向に誘導すると疼痛はあるも円背位よりも軽くなりました。
今回のストレッチの際には右腸骨に下制する動きが生じています。
更に不快感ではないとのことでありましたが、疼痛が出現していました。
赤羽根らは関節の周辺組織が何らかの侵害刺激を受けると侵害受容器が反応し、脊髄反射によりa運動線維に作用し筋が攣縮すると述べています。¹)
更に攣縮中は伸張痛・圧痛所見・筋緊張・収縮時痛が生じやすいとも述べています。¹)
このことからオーバーストレッチによって右腸骨が過度に下制されたことで、伸張刺激(筋肉が損傷しないように守ろうとする反射)が加わり腰方形筋の攣縮(筋肉が何らかの影響で収縮した後痙攣してしまう)が生じてしまったと考えられます。
胸椎・腰椎を伸展すると腰方形筋は起始と停止が近づく運動であるため腰方形筋への張力が軽減し、負担が軽減すると考えられます。
しかし攣縮している筋肉は緊張が高く伸張しづらくなると考えられます。
円背位では骨盤が後傾し胸椎・腰椎が後弯するため、腰方形筋は攣縮した状態で伸張しなければなりません。
その為体幹を伸展した際の方が疼痛が軽度であったと考えられます。
腰方形筋の遠心性収縮が困難になっていると判断できる。
その為再度疼痛のない円背位を獲得するためには腰方形筋の攣縮を改善し、骨盤を後傾した際に腰方形筋がスムーズに伸張されていくことが必要と考えられました。
ストレッチ中に疼痛が軽度であるが生じていたことが侵害刺激になった可能性がある
腰方形筋の攣縮で骨盤後傾・胸腰椎の後弯時に伸張が困難となり疼痛が生じていると仮定
腰方形筋の機能を回復させる
腰方形筋の攣縮を改善し第12肋骨と腸骨が離れていく際に、円滑に伸張していくことが出来ることを目標とした治療を行いました。
腸骨を両手で把持し前傾から後傾方向に他動で誘導していきます。
そこからブリッジを行っていくことによって骨盤を後傾させる腹部の筋肉を働かせます。
お尻はベッドに触れるか触れないかの範囲で行い、負担に配慮しました。
ここでのポイントはお尻を上げることが目的ではなく、骨盤を後傾させる筋肉の活動を生み出すことです。
疼痛がないことを確認しつつ、両腸骨を前傾へ他動から自動介助で骨盤を後傾してお尻上げをしてもらいます。
痙攣した腰方形筋を遠心性収縮で活動させていきつつ、相反抑制を期待して緊張の緩和を期待しました。
その後座位になってもらうと円背位での疼痛消失。立ち上がり、足踏みをしてもらっても大丈夫であっため終了としました。
①両腸骨を他動で後傾させながらお尻を少し持ち上げてもらうことで腹部に収縮を入れる
②①ができたら自動介助で骨盤を後傾していきながらお尻を持ち上げる
上記の2点によって腹部の筋肉が収縮することで腰方形筋の相反抑制による攣縮の緩和を図る
ストレッチをする時は目的の位置まで自動介助運動で先んじて確認しておく。
するとオーバーストレッチにならずに済む可能性がグンと上がるで。
まとめ
今回良かれと思い腰方形筋のストレッチを実施しましたが、その刺激によって新たな疼痛が生じてしまった経験を解説しました。
筆者が自身の治療で疼痛を引き起こしてしまった場合は以下の手順で対応します。
ストレッチは筋肉の緊張、循環を改善させるために有効な手段であると考えられます。
しかし他動的なストレッチを行う前に、ある程度自動介助運動でストレッチしようとする動きがどこまで動かせることができるのか確認するとリスクを軽減できると考えます。
最後に
この記事を参考にされる際は、目の前の患者さんに紹介した評価・治療が適応できるか判断していただいた上で使用して頂ければ幸いです。
患者さん一人一人、疾患、既往歴、身体的特徴等異なります。
そのため、今回ご紹介した治療は万人に対して、再現性を担保できるものではありません。
それらを踏まえた上で参考にして頂ければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
以上、ユウセイでした。
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